グーグル、「Cloud Computing World」の基調講演で企業向けクラウドビジョン「100%web」を説明


グーグル エンタープライズ部門 マネージングディレクターの阿部伸一氏

 グーグル株式会社は9月1日、東京国際フォーラムで開催された「Cloud Computing World」において、「Nothing but the web ~100%webの世界へ~」と題した基調講演を行った。講演では、Google Enterpriseの戦略である、Webだけであらゆることを提供するクラウドビジョン「100%web」の世界を、企業向けクラウドサービス「Google Apps for Business」や「Google Chromebooks」のデモを交えながら紹介した。

 「これまでクラウドサービスは、ITシステムを管理できない小規模企業や個人事業主が利用するものという認識が強かったが、最近では大手企業にも積極的に活用されるようになってきた。実際に、当社の『Google Apps』は、ソフトバンク、カシオ、ノーリツ、戸田建設、三井倉庫など大手企業への導入が進んでおり、こうした大手企業の動きが、中小企業や個人事業主にもさらに広がっていくというフィードバック効果をもたらしている」というのは、グーグル エンタープライズ部門 マネージングディレクターの阿部伸一氏。

 このように、企業規模を問わず、クラウドサービスへのニーズが高まっている背景について阿部氏は、「企業のITシステムには、今、『スピード』『モビリティ』『イノベーション』が求められている。この中でも、最近特に注目されているのが『モビリティ』だ。ビジネスのグローバル化が進み、海外などへの出張が増え、いつでもどこでも仕事をしなくてはならないシーンが増えてきた。さらに、災害などが起こってオフィスに来られなくなっても、仕事を継続できる環境作りが重要になってきている。また『イノベーション』については、社内外のコラボレーションによるホワイトカラーの生産性向上が業績を左右するようになってきた」と説明し、「オンプレミスの従来型システムでは、こうしたニーズに対応することは難しい」との考えを示す。

 オンプレミスのITシステムが抱える大きな課題として阿部氏は、「硬直化」「複雑さ」「高コスト」の3点を指摘する。そして、これらの課題をすべて解決するべく、同社が打ち出しているビジョンが「100%web」であると強調する。「このビジョンは、ユーザーがブラウザを使って、Webベースですべてのアプリケーションを使えるようにするもの。言い換えれば、アプリケーション、ソフトウェア、データすべてをクラウド上に集めようというのが狙いだ。これによって、オンプレミスの課題を解決するだけでなく、リアルタイムのコラボレーションを実現し、今までにないスケールメリットや信頼性、セキュリティを実現できると確信している」(阿部氏)。

 さらに阿部氏は、「『100%web』というビジョンは、グーグルだからこそ実現できるものだ」と力を込める。その理由として、(1)グーグル自身がWebベースのビジネスのみで成長してきた企業であること、(2)圧倒的なスケールと99.9%という高い可用性をもったクラウド基盤を用意していること、(3)世界トップレベルのセキュリティを備えたデータセンターをもつこと--を挙げ、「世界最大級のスケールを実現したクラウドインフラで、企業ユーザーが直感的に使えるクラウドサービスを提供できるのは当社だけ」と、クラウドサービスで長年のノウハウを蓄積してきたグーグルの強みをアピールした。

グーグル エンタープライズ部門 セールスエンジニアの泉篤彦氏

 この後、グーグル エンタープライズ部門 セールスエンジニアの泉篤彦氏が登壇し、同社の提供する企業向けクラウドサービス「Google Apps for Business」の主な機能や特徴などを、デモを交えながら詳しく紹介した。

 まず、メール機能の「Gmail for Business」について、「ユーザーに最も評価されているのは、強力な迷惑メールフィルタリング機能だ。今まで大量のスパムメールに悩まされていたが、Gmailによってスパムメールが来なくなり、気持ちよく仕事ができるようになったという声を多くもらっている」(泉氏)という。このほかの特徴として、スレッド機能や25GBの保存容量、高度な検索機能、ボイス&ビデオチャット機能を紹介。特に、ボイス&ビデオチャット機能については、実際にビデオチャットを使って会話を行うデモが披露された。

 カレンダー機能については、「通常のスケジューラーでは、複数の人のスケジュールを調べて、時間を合わせて会議室を予約するなど、ミーティングの設定は難しかった。Google カレンダーを使えば、複数の人のカレンダーを重ね合わせて、ひと目で空き時間をチェックして、ミーティング時間を設定できる」(泉氏)としている。

 ドキュメント機能では、ブラウザだけで利用できるWebベースの文書、スプレッドシート、図形描画、プレゼンテーションといったビジネスアプリケーションを提供。「.doc、.xls、.ppt、.pdfなど主要なファイル形式をサポートしており、クラウド上に保存したドキュメントは、いつでもアクセスできる。さらに、別の場所にいる複数のユーザーが同時に同じファイルを編集することも可能で、東日本大震災の際にはスプレッドシートを使って迅速な安否確認を実現した例もある」と、泉氏はそのメリットを説明した。

 このほか、サイト機能では、簡単なインターフェイスで、誰でも手軽にWebサイトを立ち上げることができるサービスを提供。一からコンテンツを作ることなく、共有しているさまざまなドキュメントを張り付けていくだけで自分のWebサイトを構築できるという。ビデオ機能では、社内向けの動画チャンネルを公開することができる。一般的な動画配信サービスでは利用できない長時間のトレーニングビデオなども、クラウド上に公開し、共有することが可能となっている。

 なお、Gmailやカレンダー、ドキュメントの各機能は、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル端末からも利用することができる。「これにより、PCがない環境でも、スマートフォンがあれば、どこにいても仕事を継続することができる」(泉氏)としている。

 最後に、日本では未発売のネットブック「Google Chromebooks」を使ったデモも行われ、電源オフから8秒で立ち上がる起動の速さを披露するとともに、「Google Apps for Business」のドキュメント機能も問題なく使えることをアピールしていた。

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(唐沢 正和)
2011/9/2 06:00