「Chromebookはクラウドの物理的なビジョン」、ChromebookやEarth Builderなどの製品・ソリューションを紹介
Google Enterprise Day 2011 Tokyoレポート
グーグル株式会社は20日、「Nothing but the web(100%ウェブの世界へ)」をテーマに、企業ユーザーを対象としたイベント「Google Enterprise Day 2011 Tokyo」を開催した。
■ChromebookやApp Engine、Earth Builderなどの最新動向を紹介
Google エンタープライズマーケティング担当ディレクター クリス・ファリナッチ氏 |
Google エンタープライズマーケティング担当ディレクターのクリス・ファリナッチ氏は、「Innovation At The Pace Of 100% Web」と題して、Google Apps以外に企業で利用される技術やソリューションについて語った。それぞれ、グーグル エンタープライズ部門 セールス エンジニアの泉篤彦氏によるデモをまじえて説明された。
ファリナッチ氏は冒頭で、Googleのミッションはしばしば語られるように「世界中の情報を整理し、アクセスできるようにする」であり、同じようにGoogle Enterpriseのミッションは「企業の情報を整理し、アクセスできるようにする」だと説明した。
1番目に紹介されたのは「Chromeブラウザ」。世界で1億6千万以上のユーザーを持ち、日本では1年で90%の伸びをみせたという。ファリナッチ氏は「エンタープライズでもブラウザが中心となっている」ことを指摘した。
2番目に紹介されたのは、Chrome OSを搭載したWebアクセス専用のノートPC「Chromebook」。ファリナッチ氏は、「PCは古いアーキテクチャを引きずっていて、複雑で扱いづらい」として、Chromebookであればすぐ起動してネットにつながり、ソフトウェアのアップデートも簡単だと紹介した。
モダンなブラウザである「Chromeブラウザ」 | Webアクセス専用のノートPC「Chromebook」 |
それを受けて、泉氏が実際にChromebookをデモした。起動してログイン画面が7秒で表示されまでを数え、ログインするとWebブラウザが全画面で現れるところを見せ、そこからGoogle Docsを開いて絵を描いてみせた。
そこまでやってみせた後、壇上に現れた男にChromebookを奪われた、という設定で、マシン自体にはデータは保存されておらずキャッシュは暗号化されているので安全なこと、新しいChromebookを用意して再びログインすれば、作業中だったデータが現れることを実演した。
グーグル エンタープライズ部門 セールス エンジニアの泉篤彦氏。手に持っているのがChromebook | ログイン画面が7秒で表示される様子をデモ |
ログインするとWebブラウザが全面に表示され、Webベースのアプリケーションが並ぶ。Webブラウザに閉じるボタンがないのがChrome OSである特徴 | Google Docsで絵を描く |
Chromebookを泥棒に奪われた、という設定 | 新しいChromebookでログインすると、作業中だったデータが現れる |
■20万以上のアプリが動作する「Google App Engine」
3番目に紹介されたのがPaaSサービスの「Google App Engine」。現在、20万以上のWebアプリケーションがApp Engine上で動いているという。また、Google以外のサードパーティがWebアプリケーションをGoogle Appsユーザー向けに提供する「Google Apps Marketplace」も紹介した。また、さきごろの英国ロイヤルウェディングの公式サイトがApp Engine上で公開され、最大で秒3万リクエスト以上のトラフィックをさばいたことも説明した。
泉氏は、自分で作ったApp Engine上のWebアプリをデモしてみせ、さらにダッシュボードでトラフィックや課金状況を確認できるところをデモした。また、企業で強い「チームのメンバーを並べてカレンダーを表示したい」という要望を、Google Apps Marketplaceで提供されているアプリケーションで実現してみせた。
Google App Engineによる独自のクラウドアプリケーション開発 | Google App Engineの国内利用事例 |
英ロイヤルウェディングでの事例 |
Google App Engineのダッシュボード | Google Apps Marketplaceで提供されている、チームのメンバーを並べて表示できるカレンダー |
■地球儀だけを貸すサービス?
4番目は、企業の持っている地理空間データをGoogle EarthやGoogle Mapsに表示できる「Earth Builder」。泉氏は、「これは地球儀だけをお貸しします、そのうえに独自の地図を作ってください、というサービス」と説明し、Google Earthをスクリプトで自動運転するデモや、Earth Builderで情報が追加された地図、災害の被災地の写真表示などを見せた。
地理空間データをGoogle EarthやGoogle Mapsに表示できる「Earth Builder」 | Google Earthでズームアップしていき、ストリートビューに切りかえてGoogle Enterprise Day会場に着くまでをスクリプトでデモ |
Earth Builderで地理空間データを表示 | 災害前後の写真を並べて表示 |
最後に、6月末にトライアルが開始されたSNS「Google+」を紹介。ビデオ会議の機能などを見せながら、「Google+がビジネスでどういう使い方をできるか考えてほしい」と聴衆に問いかけた。
■テーマごとにセッションを開催
午後には、テーマごとのブレークアウトセッションが開催された。
Jeff Keltner氏 |
Chromebookのセッションで講演したJeff Keltner氏は、「Chromebookはクラウドの物理的なビジョン」だとして、その独自性を解説した。
Keltner氏は、現在のPCではアップデートの手間や企業での管理の手間などでユーザーがフラストレーションを感じていること、PCの管理コストはハードの価格の3~4倍にもなることを語った。
それに対してChromebookは、ブラウザに最適化してOSの複雑さを排除していると説明。ログインすればクラウドカラ自分の環境がそこに降りてくること、高速起動して長時間動作すること、壊れずに“it just works”(ただ動き続ける)こと、長期間使っているとだんだんシステムが重くなってくることがないことなどが特徴だとした。
管理の容易さについても強調。差分ダウンロードによる自動アップデートと再起動の速さによりアップデートに時間をとられないこと、企業の管理者が通常のGoogle Appsの管理画面からユーザーのセキュリティポリシー等を設定すると各マシンに反映されることなどを解説した。
なお、質疑応答で日本での発売予定を尋ねられたKeltner氏は、「近く発売する。日本にこういうデバイスは重要」と答えた。
Chromebookの特徴 | Chromebookが複雑さを排除しているという説明 |
管理の容易さの説明 | Google Appsの管理画面に組み込まれたChrome OS設定 |
Peter Magnusson氏 |
Google App Engineのセッションで講演したPeter Magnusson氏は、App Engineが日本人のユーザーの人気が高いことを紹介。その理由のひとつとして、パッケージよりも新規開発を好む日本のユーザー気質にあるのかもしれないと語った。
2011年の動向として、さまざまなコンプライアンス標準の取得とともに、1月にリリースされたHigh-replication Database(HRD)を紹介した。HRDでは従来のデータベースのマスター・スレーブ構成より高い可用性を実現するため、複数のデータセンターにまたがってレプリケーションするという。
また、5月に発表された「App Engine for Business」についても紹介した。SLAやSQLデータベース、カスタムドメインSSLの機能を持ち、今年後半にリリース予定だという。そのほか、App Engineがプレビューを脱する予定や、料金体系の変更、データストアの全文検索機能、Python 2.7サポート、Cloud Storageの統合などの計画も語られた。
日本でのApp Engineの成長 | App Engineの利用状況 |
2011年の動向 | High-replication Database(HRD)の説明 |
App Engine for Businessの状況 | App Engineがプレビューを脱する予定 |
新しい価格体系 | この先6カ月のロードマップ |