【Dreamforce 2010】米salesforce.com、HerokuおよびRemedyForceを発表

2日目の基調講演でベニオフCEOが言及


 米salesforce.comが、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで開催している「Dreamforce 2010」が、12月8日(米国時間)、2日目を迎え、前日に続いて基調講演に米salesforce.comのマーク・ベニオフ会長兼CEOが登場した。

 

「Heroku」と「RemedyForce」、2つの新クラウドを発表

2日目の基調講演に登壇した米salesforce.comのマーク・ベニオフ会長兼CEO
salesforce.comは、HerokuとRemedyForceを加え、8つのクラウドを提供することになる

 初日の基調講演で、新たに2つのクラウドを発表すると宣言していたベニオフCEOは、Force.com 2を構成する1要素「Heroku」、そして、BMC Softwareとの協業で提供する「RemedyForce」の2つの新クラウドを発表した。

 「私たちは、顧客の話を聞いていなかった反省がある。開発者の間では、もっとオープンにしてほしいという声が多く、Apexだけでなく、自分たちが知っている言語を使いたいという声があった。もっと多くの言語を使えるにはどうしたらいいか、どうオープンにすればいいのかを考えた。600万人のJavaの開発者だけでなく、さらに広げたいとの狙いから、Rubyを新たに追加した。RubyはCloud 2時代の最適の言語であると認識している。そこで、Rubyプラットフォームのナンバーワン企業であるHerokuを、salesforce.comは買収した。Herokuは当社にとって7つ目のクラウドとなる」と発表した。

 Herokuのバイロン・セバスチャンCEOは、「これまで開発者は、オープンで革新な最先端のものを選ぶか、信頼性があるものを選ぶかのどちらかだったが、HerokuとDatabase.comの連携によって、両方を手に入れることができる。また、Herokuには、10万5000のアプリケーションがあるが、今後は、これが加速していくことになるだろう。われわれは、PaaSの世界でリーダーになることができる」などとした。

 Force.com 2は、salesforce.comにとってクラシックなプラットフォームとする「Appforce」、Webサイトのアップデートなどを容易に行える「Siteforce」、エンタープライズJavaアプリケーション開発環境である「VMforce」、パートナーがマルチテナント向けのパッケージアプリケーションを開発するための「ISVforce」、そして「Heroku」の5つのサービスで構成されるとし、「Force.com 2は、Cloud 2のためのプラットフォームとなる。レガシーの世界から、オープンの世界へと展開するためのベースになる」とした。

 基調講演では、Force.com 2のなかから、Siteforceのデモンストレーションを行い、3分間で簡単にソーシャルメディアと連動したサイトを制作できる様子を示したほか、VMforceは、100社を対象にプライベートベータ版を提供している段階であることを示しながら、その1社であるAccentureによる導入事例を紹介した。

 一方、「7つ目のクラウドはプラットフォームにおけるクラウドであるのに対して、8つ目のクラウドは、アプリケーションの世界におけるものになる」と前置きしながら紹介したRemedyForceは、「Force.comに100%ネイティブで対応したRemedyがほしいという声が聞かれていた。これはキラーアプリケーションになると感じていた。RemedyForceは、BMCソフトウェアとの協業により投入するもので、ITマネジメントに変革をもたらすサービスになる。モビリティの機能が追加されるという点でも大きな意味がある。別世界のクラウド環境ができると考えている」とした。

 BMC Softwareのボブ・ブチャンプCEOは、「約2年前にベニオフ氏とサンフランシスコで会食した際に、キラーアプリケーションとなるITサービスマネジメントを提供したいと語っていた。それが印象的だ。当社はマーケットのリーダーであり、これをセールスフォースのプラットフォームで提供できることをうれしく思っている。クラウドの進化につながることは間違いない」などと語った。

 

Microsoftを痛烈に皮肉る

初日の基調講演では足元からiPadを取り出したベニオフ氏。今日も靴下を見せながら、「私がこうした靴下を履くこともいいとは思っていない」とMicrosoftをユニークに批判

 ベニオフ氏は、基調講演の冒頭に、「われわれの新たな動きを止めようとしている勢力がある。われわれが楽しんでいることをよくないと思っている人たちがいる」として、Microsoftを引き合いに出し、「機能強化だと思ったらバグフィックスであり、それに50ドルも支払わされている」、「訴訟で対抗してくる」などと痛烈に批判。

 さらに、Microsoftの広告である「I'DIDNT GET FORCED」に登場しているバーナード氏を、「無理やり、言わされてかわいそうだ」といいながらゲストとして登壇させ、「ぜひこちらの世界に戻ってきてほしい」と説得。会場全体が立ち上がってベニオフ氏の説得を応援し、バーナード氏の「Yes!」の答えに会場が沸くという演出まで行ってみせた。ベニオフ氏は、拳をあげながらが、「われわれは新しい世界に行くために、戦っていかなくてはならない」と来場者に呼びかけた。


Microsoftの広告に登場したバーナード氏をベニオフ氏が直接説得する演出もMicrosoftのI'DIDNT GET FORCEDの広告

 一方で、ベニオフ氏が支援しているUCSF(カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校)の取り組みについても説明したほか、salesforce.comのユーザーであるBlackboad、BELKIN、KELLY SERVICES、AVON、Deloitteの5社のCIOが登壇し、具体的な活用事例と、そのメリットを示してみせた。

 

プラットフォームカンパニーとしての本格展開を打ち出す

 今回の2日間に渡る基調講演を通じてsalesforce.comが打ち出したのは、プラットフォームカンパニーとしての本格展開だといっていいだろう。

 同社関係者の間からは、「salesforce.comは、次の10年に向けて、プラットフォームの会社として進化していくことになる。今回のDreamforce 2010は、そのためのベースとなる発表になった」というコメントが異口同音に聞かれる。

 さらに、日本発の開発言語であるRubyが、salesforce.comのクラウド戦略において中核的な役割を担う開発言語に位置づけられたことにも大きな意味があるだろう。

 オープン化を明確に打ち出したsalesforce.comは、さらに複数の言語を取り込んでいく姿勢を示しており、今回の発表を切り口に、ますますオープン化の動きが進展していくことになりそうだ。

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