【MSC+ Tokyo基調講演】クラウドを中心にしたマイクロソフトの最新テクノロジーをアピール

さまざまなクラウドソリューションやWindows Phone 7、IE9などをデモ


 マイクロソフトが、東京・芝公園のザ・プリンス パークタワー東京で開催している「The Microsoft Conference+Expo Tokyo」の2日目となる11月26日、基調講演に立ったマイクロソフト 執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長である大場章弘氏は、クラウドを中心としたマイクロソフトの最新テクノロジーを、デモンストレーションを交えて紹介した。

 大場氏は、「マイクロソフトはこれまでにもそれぞれの変革の時期に、イノベーティブになアプローチを行ってきた。いま、クラウドの時代が到来しているが、一方でこんなところにクラウドが利用できるのか、基幹系でも大丈夫か、という声が出ている。マイクロソフトとパートナーとの連携によって、クラウドのパワーを最大限に生かし、信頼性の高いものを低価格で提供し、ITの変革に対応していきたい」と切り出した。

 講演は、利用者、開発者、IT部門という3つのフェーズから話を展開した。

 

Windows Phone 7搭載のスマートフォンをアピール

マイクロソフト 執行役デベロッパー&プラットフォーム統括本部長の大場章弘氏

 利用者の観点から、まず大場氏が触れたのがWindows Phone 7であった。

 上着の内ポケットからWindows Phone 7搭載のスマートフォンを取り出した大場氏は、直感的に操作できるWindows Phone 7をデモンストレーションしながら、スケジュール管理やメール操作の容易性、Facebookとの連動による利用、Xbox Liveと連携した利用シーンなどを説明した。

 「FacebookとWindows Azureでの協業を進め、日本でのビジネスアプリのソーシャル化の推進などに取り組む。Windows Phone 7は、ソーシャル機能についても大きな進化を遂げることになる」と位置づけた。


Windows Phone 7を手にデモンストレーションする大場氏大場氏がデモンストレーションに利用したWindows Phone 7
今日のスケジュールの用意。仕事とプライベートのスケジュールを混在して管理できるFacebookとの協業も増加していく

 

ユーザー参加およびログ分析機能付き電子書籍クラウドサービスも

日本デジタルオフィス・濵田潔代表取締役

 また、11月26日付けで、日本デジタルオフィスが、Windows Azure Platformを利用した世界初のユーザー参加およびログ分析機能付きの電子書籍クラウドサービス「J!BOOK(JOIN!the BOOK)」の提供を開始すると発表。日本デジタルオフィス・濵田潔代表取締役がゲストとして登場し、同サービスの内容を説明した。

 PDFファイルをWindows Azureに登録するだけで、PCやスマートフォンで閲覧できる電子書籍を自動で生成。読者がアンケートに答えたり、閲覧中にTwitterに書き込んだり、音声や写真、付せんの投稿を通じて読者同士でコミュニケーションを行うといったことが可能になる。

 さらに、これらの情報と読者の閲覧ログデータをマイクロソフトのクラウドデータベース「SQL Azure」に蓄積することで、分析機能を安価に利用できる。ログの分析には、Silverlightテクノロジーを活用。蓄積分析ツールとして「DO!Eye」が提供される。

 「読者と広告主をつなぐものになり、その点でも新たなマーケティング提案が行えるだろう。11月26日から分析サービスを提供し、12月には総合サービスを開始。1か月無料体験キャンペーンやご優待キャンペーンを用意する。さらに日本発のサービスとして来年4月にグローバルに展開していく。これはAzureがあるからこそ実現できるもの」とした。

 すでにモータマガジン社がiPadおよびiPhone向け電子書籍アプリ「カーナビLabo」をJ!BOOKで提供している。

 モーターマガジン社事業企画部営業開発電子書籍担当チーフプロデューサー・旭形安生氏は、「これを利用することで、どんな記事が読者に受けているのがわかる。また記事を掲載した内容の反応を企業にも伝えるといった新たな提案が可能になる」としたほか、大場氏は、「この仕組みは、クラウドモデルを活用したビジネスのイノベーションのひとつになる」という。


J!BOOKのデモンストレーション日本デジタルオフィス・濵田潔代表取締役(中央)と、モーターマガジン社事業企画部営業開発電子書籍担当チーフプロデューサー・旭形安生氏(右)

 また、MTIがAzure上を活用したコンテンツ配信サービスを開始することを明らかにし、まずは「デコとも」からサービスを開始し、今後多くの携帯電話サービスをAzure上で展開していくことになるという。

 続いて、Windows HPC on Azureによる超大規模演算ついて説明。その事例として、東京工業大学のTSUBAME2.0について触れた。

 ゲストとして登壇した東京工業大学学術国際情報センター・松岡聡教授はTSUBAME2.0の概要を説明。「TSUBAME2.0は、世界4位の性能を持つペタコン、世界2位の省電力であるグリーンスパコンであることに加えて、クラウド型スパコンであるのが特徴である。OSを動的に変更する動的プロビジョニング機構を実装し、ジョブ管理システム、クラスタ管理システムと連携するといった進化にも取り組む」とした。


東京工業大学学術国際情報センター・松岡聡教授TSUBAME2.0の概要

 

マイクロソフトのクラウドは安全で、既存資産をそのまま生かせる

 一方、大場氏は、開発者にとっては、「クラウドへの拡張」、「ID管理」、「デスクトップ管理」という3つの観点から話を進めた。

 クラウドへの拡張では、ハードの手配の問題や故障での休日呼び出しといった課題がなくなる一方で、セキュリティの問題が指摘されていることに触れて、「マイクロソフトは、世界最大規模のパブリッククラウドを運用している会社であり、それはWindowsという統一のアーキテクチャのなかで運用されている。安全であり、既存資産をそのまま生かすことができる。また、ユーザー企業が持つプライベートクラウドやパートナー企業が持つパートナークラウドを連携させた提案も脳になり、それぞれの長所を生かした最適な組み合わせを実現することでこれを解決できる」と話す。

 また、「ID管理ではクラウドにアプリケーションを展開した際のユーザー認証や、社内に複数ある認証システムの相互運用などの問題に触れるとともに、デスクトップ管理では、モバイルを含めた複数のデバイスの管理や、Windows 7の移行にあたりデスクトップ環境をどう展開するかといった課題に対する解決策が必要である」ことなどを示し、「こうした課題解決に向けてはSystem Centerの役割が重要になる。統合管理の自動化を図ることができ、クラウドを活用したインフラの拡張も可能にする」などとした。

 

NTT ComがAzureとプライベートクラウドのハイブリッド型ソリューションを提供

 ここでAzure連携において協業しているNTTコミュニケーションズ ITマネジメントサービス事業部基盤サービス部門・蝋山伸幸課長が登場。ハイブリッドクラウドソリューションの提案において、サービス監視、ワンストップサポート、クラウドポータルで構成されるシームレス・クラウドマネジメントの概要を説明。NTTコミュニケーションズが提供するBizホスティングエンタープライズとWindows Azureを組み合わせたことによるシステム全体の最適化の方向性を示した。

 「マイクロソフトとは、Azureとの連携以外の領域でも協業を行っている。市場ニーズに対応したクラウドを提供し、さらに国内外のクラウドの発展に力を注ぎたい」とした。

NTTコミュニケーションズ ITマネジメントサービス事業部基盤サービス部門・蝋山伸幸課長NTTコミュニケーションズが提案するシームレス・クラウドマネジメント

 続いて大場氏は、「マイクロソフトは、ハイブリッドクラウドにおけるすべてのレイヤーに対して要素技術を提供している」とし、そのなかから、セキュリティにおけるAD FS(アクティブディレクトリ・フェデレーションサービス)について、大塚商会グループのOSKが提供するエナジーカルクにおける具体的な事例を示したほか、NECのクラウドサービス型ソリューション「Enterprise Gateway」について説明。SAPとSharePoint Server2010とのシームレスな連携によって、使い慣れているSharePointを使って、さまざまなクラウドサービスが利用できる事例を紹介した。

 NEC ITソフトウェアサポート本部統括マネージャー・島野繁弘氏は、「さまざまな企業に対して、また業界横断的に利用できるように、業界横断産業基盤ビジネスインフラを展開していきたい。NECでは、IDノーマライゼーションの世界を目指しており、Azureの機能を使って、こうしたものを実現していこうと考えている」とした。

 さらに、大場氏は、デスクトップやスマートフォンなどのデバイスの管理については、VDI(バーチャル・デスクトップ・インフラストラチクャ)の機能拡張に加えて、Windows Server 2008 R2 SP1で搭載されるリモートFXの機能を紹介した。


NEC ITソフトウェアサポート本部統括マネージャー・島野繁弘氏Enterprise Gatewayの概要

 

IE9のデモを公開、Winodws Azureの進化も説明

Internet Explorer 9
PDC 10で発表されたWindows Azureのアップデートの内容

 一方、10月29日から米国で開催されたPDC 10において発表された内容から、Internet Explorer 9(IE9)につてデモンストレーションを交えて説明し、9月16日から開始したベータ版のダウンロード数が1300万を超え、過去最高となっていること、Javaスクリプトでのベンチマークで最速となっていること、さらにPDC 10で公開されたPlatform Preview 6が、わずか3週間でPlatform Preview 7となり、開発者やユーザーの声をもとに改善や新機能が搭載されたことなどを示した。

 Silverlightについては、「字幕や音声、広告の表示を自由にできるといった著作権を保護したプレミアムなメディア体験と、.NETフレームワークによる高いパフォーマンス、生産性の高い開発環境を実現するビジネスアプリケーションという2つの側面から威力を発揮する」と語った。

 また、Windows Azureの大幅に進化について説明。Silverlightを採用した新たな管理ポータル「リモートデスクトップ」をデモンストレーション。「これまではある程度の知識が必要だったが、より多くの人が管理できるようになった」と説明。そのほか、クラウド環境では、XSインスタンスの仕組みを日本向けに特別に用意したことなど、多岐にわたるアップデートが行われたとした。

 さらに、Windows Azureは、.NETだけでなく、JavaやPHPなどからも利用できる環境を作っているとし、富士通が提供するWindows Azureに対応したJava実行環境について説明した。

富士通 ミドルウェア事業本部アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部・矢作毅彦事業部長

 富士通ミドルウェア事業本部アプリケーションマネジメント・ミドルウェア事業部・矢作毅彦事業部長は、「Interstage Application ServerをAzureに展開。慣れ親しんだJavaで、Eclipseによる開発・デバッグが可能であり、Azureを利用したシステム構築支援が行える。富士通とマイクロソフトとの協業によって、Azure環境を活用した効率的なシステム構築をグローバルで展開していく」などと語った。

 最後に、大場氏は、マイクロソフトは開発者を支援していく姿勢はクラウドでも変わらない。日本語技術情報の充実や、設立3年未満の企業への支援などにも取り組んでいる。無料ハンズオンセミナーは年間5000~6000人を目標とし、米国本社スタッフによるパターン&プラクティスシンポジウムも今日から募集する」などとしたほか、「開発者に対しては、今後もさまざまなツール、製品、テクノロジーを提供し続ける。利用者はよりソーシャルといった分野で利用し、IT部門はクラウドを活用して、次世代のIT基盤を、低コストで構築できる。パートナーとともに力強い大きなパワーを、クラウドパワーとして提供していく。ぜひ期待してほしい」と締めくくった。

マイクロソフトの開発者支援の数々進化するクラウドテクノロジーの数々
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