「実際に利用できるハイブリッドクラウドを提供したい」~NTT Comとマイクロソフトの取り組み

プライベートクラウドサービスとWindows Azureの連携により実現


 「パブリッククラウドは有力な選択肢だが、そこに全部持って行くことはできず、プライベートクラウドなどとの併用になる。こうした考え方はよく聞くようになってるものの、きちんと提供できるようにしているのは当社だけだろう」――。

 NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は10月13日、マイクロソフトと提携し、プライベートクラウドサービス「Bizホスティング エンタープライズ」とWindows Azure(以下、Azure)との連携機能を追加することを発表している。ホスティングやSIビジネスで大きな実績を持つ同社が、なぜ、パブリッククラウドとの連携を積極的に行うに至ったのか。その理由などを、NTT Comとマイクロソフトに取材した。

 

プライベート/パブリッククラウドのシームレスな利用環境を提供する

NTT Com ITマネジメントサービス事業部 サーバマネジメントサービス部 部長の田中基夫氏

 NTT Comでは、クラウドサービスには早くから着目しており、プライベートクラウドサービスとして、「Bizホスティング エンタープライズ」を用意している。このサービスでは、豊富なメニューの中から要望に応じたカスタマイズを行えるほか、仮想化技術を利用したリソースプールを形成し、柔軟なリソースの出し入れができるなど、多くのメリットを提供。同社が得意としている大手企業を中心に、すでに数百社のユーザーが利用しているという。

 一方で、より柔軟性が高く、より低コストなパブリッククラウドのニーズも強く存在しているが、すべてをパブリッククラウドに持って行くことは、セキュリティやデータの所在の問題などを考えると、現実的とはいえず、パブリッククラウドとプライベートクラウドの併用による「ハイブリッドクラウド」を考えていくのが現実的、という見解が、業界のあちこちで聞かれるようになっている。

 そこでNTT Comでは、プライベートクラウドとパブリッククラウド(Azure)を、顧客企業がワンストップで利用できる体勢を整えた。「お客さまを戸惑わせない部分ために、当社の方でツールを作り込んだり、きちんとしたサポートを提供したり、といったことによって、導入のハードルを引き下げるのが役割だと思っている」(NTT Com ITマネジメントサービス事業部 サーバマネジメントサービス部 基盤サービス部門 担当課長の蝋山伸幸氏)との発想のもとで、NTT Comが前面に立ち、両クラウドサービスを提供。課金やサポートについても1つの窓口で対応するのはもちろん、運用面でも、両者の運用・監視を一元化できるので、ユーザーの利便性を損なわず、柔軟なクラウドの利用を可能にしている。

管理用ポータルの画面イメージ。Bizホスティング エンタープライズとAzureを一元的に管理できる(画面はデモ用のもの)
チケット管理についても、両者をまとめて行えるという(画面はデモ用のもの)

 具体的には、NTT Comが提供する監視基盤を利用し、Azure側を含めた機器やプロセスの死活監視、ログ監視、性能監視などを提供。また、プライベート/パブリッククラウドを、1つのクラウドポータルから同一のインターフェイスで管理でき、構成管理、問い合わせ状況などを管理するチケット管理、変更管理などの機能を、プライベート/パブリックの区別なく利用できる「シームレスクラウドマネジメント」を実現する。

 また、「管理ツールからサーバー負荷を監視し、あらかじめ設定した内容に伴ってAzure側の自動拡張・収縮を実行できる」(蝋山担当課長)とのことで、例えば、「Eコマースサイトに適用し、通信のピーク時や夜間バッチ時にはリソースを増強したり負荷が増大するクリスマスシーズンには、Azureを用いて一時的にリソースを増強したりする」といった利用法にも、柔軟に対応可能できるようにする。計画としては、すでにプライベートクラウド側では提供できている、スケジュールによる自動拡張・収縮にも対応させる予定で、より柔軟な使い方を可能にするとした。

 NTT Comの試算によれば、このようなピークが変動するeコマースシステムを、すべてオンプレミスで構築した場合と比べると、パブリッククラウドへの移行では約3割、Azureを併用したハイブリッドクラウドへの移行では約5割のコスト削減効果が見込めるとのこと。

 「『ハイブリッドクラウド』は盛んに聞かれるようになった概念だが、では、具体的にどう展開するのか、という点に関しては、手段や方法をきちんと提示しているところは、まだほとんどないのではないか。当社では、エンドユーザーには、どちらのクラウドを利用しているかどうかを意識させず、一方で運用側には、柔軟なシステム運用をできる仕組みを構築していく」。

 「確かに、データセンターを見せろというお客さまもいらっしゃるように、日本にデータを置いておきたい、というのは本音なのかもしれない。しかし、全部のデータがそうでなく、外に出せるものもあるだろう。であれば、出せる部分は最適なソリューションを利用していただきたい、というメッセージだ」(以上、NTT Com ITマネジメントサービス事業部 サーバマネジメントサービス部 部長の田中基夫氏)。

 なお現在は、「プロトタイプをお客さまと一緒に作って、年内中に、実業務に即したプリサービスを提供する」(田中部長)といった段階で、サービスインは2010年度中には、きちんとしたサービス提供を行いたいとしている。

 

ワールドワイドで見ても先進的な取り組み

 では、アウトソーシングで実績のあるNTT Comが、なぜマイクロソフトを提携先に選んだのだろうか。この疑問に対し、NTT Comの田中部長は「当社が行っているエンタープライズ向けビジネスでは、マイクロソフトのパッケージの上にシステムが構築されていることも多い。従って、その移行先としては、Azureが有力ではないかと考えた」と回答する。また、Azure自体が既存のマイクロソフト製品との親和性が高い上、サービス連携に関するAPIをきちんと公開している点も、Azureを選択したポイントだという。

 両社の連携については、米国のMicrosoft本社を含めて緊密な体勢が取られており、「マイクロソフトが公に提供しているPaaSの機能については、数年前から当社とマイクロソフトの間で技術共有と検証を行っているほか、VMロール、VPN機能のSydney(コード名)といった新機能についても、(製品・サービスの早期評価、導入を行うための)TAP(Technology Adoption Program)に参加し、いち早く検証を行っている」(蝋山担当課長)とのこと。きちんとしたサービスとサポートをユーザーに提供するために、リソースをかけているとした。

 一方、マイクロソフト側では、NTT Comの取り組みをどう見ているのか。マイクロソフト コミュニケーションズ・セクター NTT営業本部 NTTグループ・アライアンス統括部 統括部長の竹内宏之氏は、「Azure活用の第1弾では、ISVやSIerなどでの開発系の提供が多く、サービスプロバイダとの連携モデルは、どちらかといえばその次の段階に位置付けられている。従って、積極的にAzureを活用し、プライベートクラウドの拡張の選択してとして用いる例は、本社側を含めてあまりないことだ」と、現状を説明。

 その上で、マイクロソフト コミュニケーションズ・セクター NTT営業本部 業務執行役員 本部長の小滝亮太郎氏が、「テレコムのコミュニケーションセクターでも、みんなが悩んでいたことを本当に実行に移したということ。世界に先駆けてという表現がふさわしい」と述べ、先進的な取り組みだと評価した。また小滝本部長はあわせて、「パブリッククラウドは、1つ1つカスタマイズをしてしまっては、スケールメリットがなくなってしまう。そうならないために当社が用意したAPIを、ビジネスとテクニカルの両面から自家薬籠(やくろう)中のものとしていただいている」とコメントしている。

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