イベント

Broadcom、「VMware Explore 2025」でVCF 9の最新機能などを発表

プライベートクラウドプラットフォームからビジネスプラットフォームへ

 Broadcomは8月25日~28日(米国時間)の4日間にわたり、米ラスベガスで年次カンファレンス「VMware Explore 2025 Las Vegas」を開催、6月に一般提供を開始したプライベートクラウドプラットフォーム「VMware Cloud Foundation 9.0(以下、VCF 9)」の機能強化やAMD、Canonicalとの新パートナーシップを発表した。

2025年6月に一般提供が開始された「VMware Cloud Foundation 9.0」は、ここ数年のVMwareの開発リソースを集約した重要なマイルストーンプロダクト。今後、Broadcom/VMwareが提供する製品/サービスはVCFとの統合が前提となる

 26日に行われた基調講演に登壇したBroadcom プレジデント兼CEOのホック・タン(Hock Tan)氏は「BroadcomがVMwareを買収してからプライベートクラウドの価値が大きく変わった。未来はプライベートクラウドとともにある。顧客はVCF 9を活用することで、パブリッククラウドから得られるよりも多くのパワーを獲得し、ビジネスに存在するさまざまな摩擦(friction)を解消することができる」と語り、プライベートクラウドとVCF 9の優位性をあらためて強調している。

「VCFでエンタープライズにおける摩擦(friction)を削減する」はホック・タンCEOから顧客へのメッセージのひとつ
Broadcom プレジデント兼CEOのホック・タン氏

VMware Explore 2025で発表された主要アップデート

 VMware Explore 2025でBroadcomが発表した主なアップデートは以下の通り。

・オプションとして提供していたプライベートAIサービス「VMware Private AI」をVCF 9の標準コンポーネントとして統合

これまでオプション提供だったプライベートAIサービス「VMware Private AI」もVCF 9のネイティブサポートとして提供される

・Kubernetesベースのモダンアプリケーションプラットフォーム「VMware Tanzu Platform 10.3」のリリース

・Tanzu Platformとシームレスに統合するデータレイクハウスプラットフォーム「VMware Tanzu Data Intelligence」をローンチ

・Amazon S3互換のオブジェクトストレージインターフェイスを「VMware vSAN」でネイティブサポート

・VCFのセキュリティおよびコンプライアンス強化を実現する「VCF Cyber Compliance Advanced Service」のリリース(オプショナルサービス)

・AMDとのパートナーシップを強化、Private AIにおいて「AMD InstinctMI 350」GPUシリーズおよびAMDのエンタープライズAIソフトウェアをサポート

・Canonicalとパートナーシップを締結、VCF上でCanonicalのエンタープライズLinux「Ubuntu Pro」およびコンテナイメージ「Chiselled Ubuntu」をサポート

コンテナに関してCanonicalと提携したことも話題に

・Walmartと戦略的協業を締結、同社のグローバルに分散したオペレーション環境をVCFで統合へ

 いずれのアップデートもプライベートクラウドプラットフォームとしてのVCF 9を拡張/強化するもので、VCFライセンスのサブスクリプションユーザーであれば追加料金なく利用できる(VCF Cyber Compliance Advanced Serviceはオプション)。

 BroadcomでVCF部門を統括する製品担当バイスプレジデントのポール・ターナー(Paul Turner)氏は、「VCFはもはや単なる仮想化プラットフォームではなく、ビジネスをエンパワーする存在。VCF 9は仮想化の超エキスパートを含む5000人のエンジニアが100万時間をかけて開発した、8000以上のパテントが含まれる最強のプライベートクラウドプラットフォームであり、あらゆる業種/業界のあらゆるワークロードをセキュアに支えることができる」と語る。

BroadcomのVMware Cloud Foundation部門製品担当副社長、ポール・ターナー氏

価値を評価し、あらためてVCFを選択する企業も

 BroadcomによるVMwareの買収とVMware製品のライセンスコストの改定以来、VMware環境から競合のNutanixやRed Hat、あるいはパブリッククラウドへの移行を検討する企業が増える一方、前述のWalmartのようにあらためてVCFをプライベートクラウドプラットフォームとして選択したエンタープライズも少なくない。

 今回、VCFを包括的に活用することでビジネスを大きく成長させたユーザー企業に贈られる「Broadcom Customer Achievement Awards」を受賞したNTTドコモもその1社だ。NTTドコモの受賞理由は「サービス価格を抑えつつ、顧客の期待を上回るサービス提供のためにVCFを導入、プラットフォームと組織のサイロ化を解消し、導入コストを96%、デリバリー時間を54%削減した」というものだが、ドコモCS 経営企画部 金融ガバナンス室長の木谷靖氏は「長年に渡って築いてきたVMwareとの良い関係性が受賞につながった」として、今後も引き続きVCFを利用していく意向を示しており、ライセンスコストに関しても「Broadcom/VMwareから十分に説明を受け、当社の利用状況に見合った範囲の変更だと判断した。VCFはアップデートを重ねるたびに使いやすく、リソースを集約しやすくなっており、結果としてエンジニアリングコストを抑えられている」(木谷氏)とコメントしている。

VCFを活用したすぐれたユースケースを示したユーザー企業に贈られるアワード「Broadcom Customer Achievement Awards」を受賞したNTTドコモのチーム。木谷氏(後列左から2番目)は「20年越しのVMwareとの良好な関係を今後も発展させていたきたい」としてVCFのさらなる活用を図っていくとしている(後列左から3番目はヴイエムウェア 代表取締役社長 山内光氏)

 VMwareの既存顧客にとってVCFのライセンスコスト増大はインフラ移行の検討における重要なポイントだが、WalmartやNTTドコモのように、ライセンスコストの増分を上回るメリットを得られているとしてVCFを選ぶ企業も徐々に現れつつある。

 また、「VMware Private AI」や「VMware Tanzu Platform」、さらに新たにローンチされたデータレイクハウスサービス「VMware Tanzu Data Intelligence」といった機能がVCFにインクルードされ、VCF上のas-a-Serviceとして提供されるようになったことも興味深い方針だ。

 ターナー氏は「開発者とIT管理者、スピードとセキュリティ、レガシーとモダンプラットフォーム、それらの間に存在するフリクション(摩擦)を解消できる唯一の統合されたプライベートクラウドプラットフォームがVCF 9」と強調しており、今後もすべてのワークロードを集約するプラットフォームとしてVCFを進化させていくとしている。

 一方で既存顧客のなかには、プライベートAIやモダンアプリケーション開発環境などは必要とせず、プライベートクラウド基盤としての基本機能だけを求める声もあり、Broadcom/VMwareがこれらの要望に今後どう対峙(たいじ)していくかも注目される。