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ITの複雑化をOpenStackで解決するための3つの鍵とは?
OpenStack Days Tokyo 2016基調講演レポート
2016年7月7日 11:28
国内のOpenStack専門カンファンレンス「OpenStack Days Tokyo 2016」が、7月6日から7日まで都内で開かれている。テーマは「10年先のプラットフォームへ」。技術に関するセッションのほか、国内企業の導入事例なども紹介される。スポンサーは44社。
カンファレンスや展示会のほか、現場の運用担当者が議論する「Ops Workshop」や、OpenStackのコードにコントリビュートするときの作法を学ぶ「Upstream Training」も開かれる。
2015年にはOpenStack Foundationのグローバルイベント「OpenStack Summit」が日本で開催された。それに対し、OpenStack Daysは各国のイベントだ。開幕の挨拶に立った実行委員会委員長の長谷川章博氏によると、OpenStack Daysはもともと日本の「OpenStack Days Tokyo」が発祥で、世界に広がっているという。
長谷川氏は、OpenStack Days Tokyoの参加者数は2013年の約700人から、2015年の約2000に成長したと数字を見せた。さらに、来場者アンケート結果を2015年と2016年で比較すると、OpenStackの利用の「予定なし」が48%から14%に大幅に減り、「参加者数だけでなく、しっかり関心をもった人が増えていることがわかる」と長谷川氏はコメントした。
OpenStackの中の導入済みまたは導入したい機能としては、仮想サーバー管理はもちろん、仮想ネットワークの数が多い。コンテンやベアメタルのサーバー管理も比較的多いことがわかる。
OpenStack FoundationのCo-Founderが登壇
初日の基調講演には、OpenStack FoundationのCo-Founder(共同創設者)でCOOのMark Collier氏が登壇した。
Collier氏はまず、直近で開催されたOpenStack Summitとして、4月にオースティンで開かれたOpenStack Summit Austin 2016を紹介した。最初のOpenStack SummitもAustinで開催され、当時は参加者75名だったが、2016年は7500名となったという。
ここで、オースティンで発表された「Community Contributor Awards(OpenStackコミュニティ貢献者賞)」の日本人受賞者が紹介され、あらためて表彰された。
「The Duct Tape Medal(何でもやるで賞)」を受賞した酒井敦氏と加藤智之氏、「The When-do-you-sleep? Trophy(いつ寝てるので賞)」を受賞した元木顕弘氏が壇上に上がり、OpenStack FoundationのJonathan Bryce氏(Executive Director)から表彰された。ちなみに元木氏のコメントは「コミュニティは24時間動いているので、自由な時間に活動して、自由な時間に寝ています」とのことだった。
続いてCollier氏は、年2回のユーザー調査の結果から、回答者の65%がすでにOpenStackを実運用環境で使っていること、使う理由として97%がプラットフォームの標準化と答えたことを紹介した。
ユーザーがOpenStackを利用する分野としては、「エンタープライズのプライベートクラウド」「パブリッククラウド」「通信会社とNFV」「研究とビッグデータ」の4種類が紹介された。パブリッククラウドで利用されている事例を示してCollier氏は、「OpenStackはプライベートクラウドのみという過ったイメージがあるが、世界中でパブリッククラウドに使われている」とコメントした。
ITの複雑化をOpenStackで解決するための3つの鍵
ここでCollier氏は「世界経済において、ソフトウェアによるディスラプション(破壊)が進んでいる。これは恐いことでもあり、大きな機会でもある」と話を広げた。その中でIT環境は多様化し、“このシステムですべてシンプルに解決”とされるものも登場するが、結局複雑化する。それに対し、「OpenStackは、ITの多様化に対するひとつの戦略となる」とCollier氏は主張した。
そのための鍵として、氏は「標準化されたプラットフォームを選ぶ」「新しいアプリケーションと古いアプリケーションを両立させる」「カルチャーがいちばん重要」の3つを挙げた。
標準化されたプラットフォームとしては、まず標準化されたコンピュート、ストレージ、ネットワーキングのコンポーネントが必要になると説明。さらに、インフラのプリミティブのほか、アプリケーションのプリミティブの標準化があり、その上にクラウドネイティブのアプリが動くという階層を区別することが必要だとした。
そしてSAPの事例として、インフラのプリミティブとしてOpenStackを、アプリのプリミティブとしてCloud Foundryを採用したケースを紹介した。
新しいアプリと古いアプリの両立としては、ワークロードの種類を「クラウドでホストされたシステム」「クラウドに最適化されたシステム」「クラウドネイティブなシステム」に分け、「クラウドネイティブなアプリだけに対応して、既存データにアクセスできないと意味がない」と説明。テクノロジーカンパニーに変わるためにレガシーシステムと新しいシステムをつなげたフォルクスワーゲンの例を挙げた。
カルチャーとしては、“デプロイに44日かかっていたところ、OpenStackを入れて42日に”という例を挙げ、「2日しか縮まらなかったのは社内のカルチャーを変えなかったから」として、「多くの企業で同じような結果になっている」とCollier氏は語った。
この例としては、AT&Tがモバイルのトラフィック急増に対応するためにOpenStackベースに移行したケースが紹介された。それにあたって、テクノロジーだけでなく企業文化を変えるために、従業員をトレーニングしてcloud savvy(クラウドに精通している)にもっていったという。
最後にCollier氏は、将来のデータセンターで何億ものサーバーが動くところを想定し、単一のテクノロジーだけではカバーできないと問題を定期した。
氏はそれを考えるヒントとして、かつてWebサーバーの定番となったLAMP(Linux、Apache、MySQL、PHP)スタック構成について言及した。「4つはそれぞれ別のコミュニティで作られた。ユーザーが、4つを組み合わせると大きな力になると気付いた」とCollier氏。そのうえで「クラウド時代のLAMPスタックとはなにか。OpenStackがそれになりうる」と語った。
そして、各種コンテナーオーケストレーションツールが群雄割拠している様子を示し、ユーザーは複数のものを使い、組み合わせかたもいろいろあると説明。「多様性が重要。OpenStackはさまざまなものと組み合わせられる」と語った。
そのうえでCollier氏は「Collaborate or Die(コラボレートするか、死か)」という言葉を掲げた。「1つのコミュニティや、1つの国では解決できない。1つにするのではなく、スタック型にする必要がある」と、OpenStackのコンポーネント構造の利点を強調している。