VMware vSphere 4を試す【第三回】

iSCSIストレージをESXiサーバーに接続する


 ESXiサーバーは、内蔵HDDに仮想マシンを作成して利用することができる。しかし、内蔵HDDを使うと、vSphere 4が持つさまざまな機能が利用できない。今回は、iSCSIストレージをESXiで利用できるようにする方法、そして仮想マシンの作り方などを紹介する。


iSCSIストレージ用のネットワークを設定する

 iSCSIストレージを使用する上で重要なのが、ネットワークをどう構築するかだ。ギガビット対応のNICが1枚あれば、マネジメントやiSCSIなどのストレージネットワークまで試すことはできる。しかし、パフォーマンスが悪くなったり、テストを行うときにトラブルが起きる可能性も考えられる。用意できるのであれば、2枚以上のNICを用意して試してもらいたい。


今回のネットワーク構成

 iSCSIストレージとして今回用意したのが、デルの「EqualLogic PS5000XV」。EqualLogicは、iSCSIストレージとして評価の高いSANストレージだ。EqualLogic側の設定の詳細は説明しないが、EqualLogic側には、ESXiサーバーからアクセスできる状態にしている。ちなみに、iSCSIストレージによっては、ボリュームを作成すると1つのサーバーからしか接続できない場合がある。この場合は、そのiSCSIストレージの設定を変更して、複数のサーバーからボリュームにアクセスできるように設定する必要がある。

 iSCSIストレージを使用するには、ストレージ専用のネットワークを設定する必要がある。まずはこの設定を行おう。ESXiサーバーに複数のNICが接続されている場合、どのNICをストレージ専用のネットワークとして使うのかを確認する必要がある。vCenter Server上では、NICの名称が表示されるので、異なるNICを接続している場合はそれで区別しよう。同じNICを複数使用している場合は、ケーブルが接続されていれば速度などが表示されるので、ケーブルを抜き差しするなどして確認しよう。個々のNICは「vmnic」という名称で表示されるので、以降の作業はこのvmnicの番号で進めていく。


iSCSIストレージを設定する前に、どのNICをiSCSI用として使用するのかを確認しておく。「構成」タブの「ハードウェア」→「ネットワークアダプタ」を表示する。この項目では、ESXiサーバーに接続されているNICが表示される。今回は、PRO/1000 PTというNICのvmnic5を使用する「構成」タブの「ハードウェア」→「ネットワーク」を表示し、右上にある「ネットワークの追加」を選択するネットワークの追加ウィザードが起動する。接続タイプは「VMkernel」を選択する
VMkernelで使用するNICを指定する。今回は、vmnic5を使用する仮想スイッチの名称を入力する。VMotionを利用する場合、2台目以降のESXiサーバーは同じ名称にする必要がある。なお、今回はVMotionを試す予定なので、「このポートグループでVMotionで使用」をオンにしておくiSCSIで使用するネットワークのIPアドレスを入力する
確認画面が表示されるので、「終了」をクリックするVMkernelポートとして新しいネットワークが追加された。これでネットワークの設定は完了

vCenter ServerでiSCSIストレージを設定する

 ストレージ専用のネットワークを作成したら、次はiSCSIストレージをESXiサーバーに接続する。手順としては、ESXiサーバー側のiSCSIイニシエーターを設定し、iSCSIストレージを認識させるというものになる。


「構成」タブの「ハードウェア」→「ストレージアダプタ」を表示し、画面中央にある「ストレージアダプタ」から「iSCSIソフトウェアアダプタ」を選択。選択したら、「詳細」の右上にある「プロパティ」をクリックする「全般」タブにある「構成」をクリック「有効」をオンにして、「OK」をクリック
これでiSCSIイニシエーターの設定は完了次にiSCSIストレージを認識させる。「動的検出」タブを選択し「追加」をクリックするiSCSIストレージのIPアドレスを入力し、「OK」をクリックする
一覧にIPアドレスが表示されたら、「閉じる」をクリックする構成を変更すると、ESXiサーバーのストレージアダプタの再スキャンするかどうかのメッセージが表示される。再スキャンすることで、iSCSIのボリュームが認識されるので「はい」を選択詳細部分にiSCSIのディスクボリュームが表示されていればOK
認識されたら、次はESXiサーバーからアクセスできるように設定する。「構成」タブの「ハードウェア」→「ストレージ」を表示し、「ストレージの追加」をクリックするiSCSIストレージは、SCSIと同じくディスク/LUNとして認識されているため、「ディスク/LUN」を選択し、「次へ」をクリックするこのESXiサーバーで設定されているiSCSIボリュームが表示される。選択して次に進む
「次へ」をクリックする。もし、ディスクがvmfs以外でフォーマットされていたとしても、vmfsで再フォーマットされるデータストア名(ドライブ名のようなもの)を入力ブロックサイズを指定する。vmfsでは、仮想ディスクも1つのファイルとして扱うので、たとえばブロックサイズを1MBに指定すると256GB以上に仮想ディスクを大きくできなくなる。どの程度の大きさの仮想ディスクを使用するかを考えて設定しよう。今回は、ブロックサイズ2MBを選び、最大512GBの単一ファイルが作成できるようにした
「終了」をクリック。これで設定は完了データストアにiSCSIボリュームが表示されていればOK

 これで、ESXiサーバーからiSCSIボリュームが利用できるようになった。以後、iSCSIストレージを追加する場合は、上記の手順を繰り返せばOKだ。また、ESXiサーバーを新たに作る場合も基本的には同じ手順で認識させればいい。ちなみに、すでにデータストアが作成されている場合は、iSCSIイニシエーターを有効にしたあと再スキャンを行えば、自動的にデータストアを発見して、使用できるようにしてくれる。


仮想マシンを作成する

 これまでの作業でESXiサーバーを本格的に利用できる環境は整った。次に行うのは、仮想マシンを必要な数だけ作るだけだ。

 仮想マシンの作り方はシンプルだ。ESXiサーバーを選択し、「はじめに」に表示されている「新規仮想マシンの作成」をクリックするか、ESXiサーバーのアイコンを右クリックして「新規仮想マシン」をクリックすればいい。するとウィザードが起動するので、設定する内容を選んでいけば完了だ。


ESXiサーバーのアイコンを右クリックして、メニューから「新規仮想マシン」を選択。「はじめに」タブから、「新規仮想マシン」の作成をクリックしてもOKまず仮想マシンの構成方法の選択画面が表示される。「標準」を選択すれば、あらかじめインストールするOSに合わせて、システムが自動的に仮想マシンのリソース(CPUやメモリなど)を設定してくれる。「カスタム」を選択すれば、仮想マシンのリソースを細かく設定できる。今回は、標準を選択仮想マシンの名称を入力
仮想マシンを保存するデータストアを選択仮想マシンにインストールするOSを選択する。今回は、Windows Server 2008 R2を選択割り当てるディスク容量を設定する。構成方法で標準を選択した場合、OSに合わせて、あらかじめ推奨のディスク容量が入力されている。ディスク容量を増減するなら、ここで新しいディスク容量を入力する。今回は、デフォルトの40GBを使用。なお、vSphere 4では、シンプロビジョニング(最大容量をディスクにとるのではなく、使用分だけダイナミックにとる)、クラスタリング機能の設定などもできる
確認画面が表示される。標準構成で問題なければ「続行」を、メモリ容量や仮想CPU数を変更したい場合は、「完了前に仮想マシンの設定を編集」をオンにしてから「続行」をクリックする。今回は、仮想マシンの設定を確認したいので、「完了前に仮想マシンの設定を編集」をオンにする作成した仮想マシンは、メモリサイズが4GB、仮想CPUは1つという設定になっている。今回は、仮想マシンの設定は変更しないので、このまま「終了」ボタンを押す

仮想マシンの起動とOSのインストール

 仮想マシンが完成したら、次はOSをインストールしよう。仮想マシンにOSをインストールするには、vSphere Clientを動かしているクライアントのCD/DVD-ROMドライブ、クライアント上にあるISOファイル、ESXiサーバーのDVD/CD-ROMドライブ、ESXiサーバーが使用しているデータストア内に保存されているISOファイルが利用できる。


起動したい仮想マシンのアイコンを右クリックして「コンソールを開く」を選択。すると、画面上に仮想マシンのデスクトップ表示用のウィンドウ(コンソール画面)が表示されるツールバーにある「パワーオン」ボタンをクリックして、仮想マシンを起動する起動直後はCD-ROMドライブがマウントしていないので、ネットワークからOSをブートしようとする。気にせずに次の手順に進もう
ツールバーにある「仮想マシンのCDまたはDVDデバイスの接続または切断」ボタンをクリックして、インストールメディアを選択する。今回はISOイメージを使用した。インストールメディアを選択したら、仮想マシンの画面をクリックし、Ctlr+Alt+Insert(リセットキー)を押す。すると、仮想マシンが再起動して、マウントしたISOファイルからOSのインストールが始まるあとはOSのインストーラの指示に従って操作する。ちなみに、コンソール内での操作を終了する場合は、Ctrl+Altキーを押せばいい。コンソール内で操作をしたいときは、仮想マシンの画面をクリックすれば、仮想マシンでのマウスやキーボード操作ができる

VMware Toolsのインストール

 OSのインストールが完了したら、VMware Toolsをインストールしよう。仮想マシンにインストールしたOSは、完全仮想化上で動作しているため、画面表示やディスクアクセスのパフォーマンスは低い。VMware Toolsをインストールすることで、ESXiの仮想環境にマッチし、仮想マシンのパフォーマンスがアップする。また、Ctrl+Altキーを押すことなく、簡単に切り替えられるようにもなる。


起動している仮想マシンのコンソール画面のメニューから、「仮想マシン」→「ゲスト」→「VMware Toolsのインストール/アップグレード」を選択VMware Toolsのインストールメッセージが表示されるので、「OK」をクリックVMware Toolsのインストール画面が仮想マシン上で表示されるので、指示に従ってインストールする
インストール終了後、仮想マシンの再起動が要求されるので指示に従って再起動しようゲストOSにVMware Toolsがインストールされるとグラフィックが高速化されるだけでない。最も便利なのは、仮想マシンの画面とデスクトップをマウスで行き来する場合だ。VMware Toolsを入れれば、仮想マシンの画面からマウスポインタが外れれば、自動的にデスクトップの操作が行える。以前のようにCtrl+Altキーなどを入力しなくてもいい

 これで、ESXiサーバーを使って仮想マシンを運用できるようになった。なお、Ctrl+Alt+Delは、コンソール画面のメニューから「仮想マシン」→「ゲスト」→「Ctrl+Alt+Delの送信」を選択すれば入力できる。

 次回は、VMotionなど、vSphere 4らしい使い方を紹介する。



関連情報
(山本 雅史)
2010/2/9 00:00