VMware vSphere 4を試す【第四回】
複数のESXiサーバーを使いこなす
今回は、2台のESXiサーバーとvCenter Serverで実現する、VMotion、High Availability(HA)、Fault Tolerance(FT)の3つの機能を紹介する。
■2台目のESXiサーバーを用意する
今回紹介する機能を試すには、2台以上のサーバーが必要だ。このため、前回まで使用していたデルのPowerEdge R805(32GBメモリ)をもう1台用意した。テストする場合は、同じメーカーのCPUを搭載したサーバーを2台用意して試していただきたい。
新たに用意したPowerEdge R805には、USBメモリでESXiがブートする環境を構築する。手順としては、ESXiがブートするUSBメモリを作成し(第一回を参照)、vCenter Serverに登録(第二回を参照)。さらに、iSCSIストレージを利用できるようにする(第三回を参照)。なお、ストレージが使用するネットワークのIPアドレスは、1台目のESXiサーバーと同じIPアドレスには設定しないようにする(VMkernelなど)。
1台目のESXiサーバーと異なるのは、ストレージアダプタでiSCSIを再スキャンすれば、すでにVMFSでフォーマットされたディスクがストレージとして登録される点。すでに作成されているディスクを利用するため、VMFSでディスクをフォーマットすることなく登録できる。
■VMotionを試す
仮想マシンを別のサーバーに移行するVMotion |
VMotionは、動作中の仮想マシンを別のESX/ESXiサーバーに移行できる機能だ。
VMotionを利用する上で注意が必要なのは、移行元と移行先のサーバーでCPUの互換性が必要という点。つまり、Intel CPUのESX/ESXi上の仮想マシンを、AMD CPUのESX/ESXiに移動することはできない。また、同じAMD・IntelのCPUでも、移行できるCPUが制限されている。このあたりは、事前に把握しておかないと、VMotionが行えないことになる。
■HAを試す
HAは、物理サーバーの障害時に、別の物理サーバーに仮想マシンをフェイルオーバーしてダウンタイムを最小にする |
HAは、ESX/ESXiサーバーで障害が発生したときに、そのESX/ESXiサーバーで動作している仮想マシンを別のESX/ESXiサーバー上で自動的に再起動する機能。あとで紹介するFTと異なるのは、いったん仮想マシンへの接続が切れる点だ。
このHAを利用するには、2台以上のESX/ESXiサーバーが必要。また、iSCSIストレージなど外部ストレージも必要だ。そのほか、ESX/ESXiサーバーの名前解決ができていないと動作しない。DNSを用意し、名前解決しておこう。
HAは、クラスタという機能を利用して実現するもの。このクラスタは、複数のESX/ESXi サーバーのハードウェアリソース(CPUやメモリなど)をまとめて管理する機能で、FTやDRS(Distributed Resource Scheduler)でも使われている。
以上で、HAの設定は終了だ。HAの構成が済むまで少し時間がかかる。HAの構成が終了したかどうかは、vCenter Server画面の下に表示されている「最近のタスク」で確認しよう。
HAが正しく動作しているかを試すには、仮想マシンが動作しているESX/ESXiサーバーになんらかの障害を起こせばいい。今回は、HAを設定した仮想マシンが動作しているサーバーから、マネジメント用ネットワークのLANケーブルを抜くことで、障害を発生させてみた。
仮想マシンのコンソールウィンドウのタイトルバーをみると、どのESX/ESXiサーバー上で動作しているかを確認できる |
仮想マシンが動作しているESX/ESXiサーバーで障害が起こった場合、障害を検知して、自動的に正常に動作しているESX/ESXiサーバーで仮想マシンを再起動する。コンソール画面を表示している場合、障害が起きた仮想マシンはフリーズしているが、新しく起動した仮想マシンは再起動されるため、ログイン画面が表示されている。仮想マシンのウィンドウの枠にサーバー名が表示されている。2つの画面では、サーバー名が異なっているのがわかる。
■FTを試す
FTは、物理サーバーの障害時に、稼働している仮想マシンを止めずに、フェイルオーバーする |
FTは、仮想マシンを2台のESX/ESXiサーバーで動かすことで、プライマリの仮想マシンに障害が起こっても、すぐさまセカンダリに切り替える機能。そのため、ユーザーは切り替わったことさえわからない。HAは仮想マシンを再起動するため、サービスの停止時間が発生するが、FTを使えばサービスを停止することなく仮想マシンを動作し続けることができる。
また、可用性を高めるため、プライマリに障害が起き、セカンダリに切り替わった後、別のESX/ESXiサーバーに新しく同じ仮想マシンを起動する機能も用意されている。常に仮想マシンを二重化するため、耐障害性を高めることができる。
ただし、FTは仮想マシンのバックアップを作成するため、システム全体のリソースは二重に消費されることになる。絶対にシステムダウンできない重要なサーバーが、FTの対象となるだろう。
FTを設定した仮想マシンを起動すると、2つのESX/ESXiサーバーで同じ仮想マシンが起動される。なお、プライマリの仮想マシンは操作可能だが、セカンダリは「読み取り専用です」と表示され、操作はできない。
FTが正しく動作しているかどうかは、FTを設定している仮想マシンを右クリックし、「フォールトトレランス」→「フェイルオーバーのテスト」をクリックすれば確認できる。
次回は、vSphere 4のエディションによる機能差や、購入方法などを紹介する。