仮想化道場
NVIDIA GRIDが作る仮想ワークステーションのエコシステム (仮想ワークステーションにはエコシステムが必要)
(2013/9/30 06:00)
仮想ワークステーションにはエコシステムが必要
仮想GPUをサポートするNVIDIA GRIDは重要なパーツだが、企業が仮想ワークステーション環境を安心して導入するためには、NVIDIA GRIDが動作することを保証したサーバーが必要になる。
NVIDIA GRIDは、PCI Expressインターフェイスを利用するGPUカードのため、ほとんどのサーバーで動作するだろう。しかし、企業がシステムを導入する場合、動くだろうではなく、サーバーベンダーやNVIDIAが相互に動作を保証していることが必要になる。きちんと動作するということが保証されていれば、新しいテクノロジーを導入する場合でも、安心して行える。
もう1つ必要なのは、仮想環境においてCADソフトウェアの動作が保証されることだ。仮想環境は、物理環境と高い互換性を持っているため、多くのCADソフトは動作する。しかし、これもソフトウェアベンダーが保証しているかどうかが、システムを導入する企業においては重要なポイントになる。
もしCADソフトの動作に問題が出た場合、ソフトウェアベンダーが仮想環境での動作を保証していることと、ユーザーがリスクをとることには大きな違いがある。
さらに、ソフトウェアベンダーによっては、仮想環境でのCADソフトのライセンスを別にしている場合もある。この場合、通常の物理環境のライセンスを仮想ワークステーションに持ち込むと、ライセンス違反となる。やはり企業としては、こういったリスクを冒すことはできない。
最近では、いくつかのCADソフトベンダーやグラフィックソフトベンダーなどが、仮想環境での動作を保証するようになっている。特に、CADソフトとして有名なPTC Creoは、積極的にNVIDIA GRIDと仮想ワークステーションにおける動作を保証している。
CitrixのXenServer環境では、AutoCAD、AdobeのPremier Proなどの動作が各メーカーによって保証されている。将来的には、多くのCADソフトやグラフィックソフトなどが動作の保証を行われることになるだろう。
最後に重要なのは、仮想ワークステーションの構築に高い知見を持つシステムインテグレータ(SIer)の存在だ。NVIDIA、サーバーベンダー、CADソフトベンダーなどが動作保証をしてもソリューションとしてきちんと検証が取れていることが、最後には必要になるだろう。また、「どのような規模のシステムなら、どれだけのCADユーザーがサポートできるか」といった、サイジングの問題もある。
したがって仮想ワークステーションを構築する上では、こうした面を支援してくれる、高いノウハウを持ったSIerの存在が重要になる。
取材したセミナーでは、CADシステムのインテグレーションに高い知見を持つ新日鉄住金ソリューションズ(NS Solutions)、伊藤忠テクノサービス(CTC)などは、自社にNVIDIA GRIDを利用したシステムを構築して、どのくらいのユーザーが満足のいくパフォーマンスでCADソフトが利用できるのかなど、各種のベンチマークを行っていることが説明されていた。
企業において、もの作りのベースとなるCADシステムを構築していく上では、高性能なGPUカードだけでなく、サーバー、CADソフト、SIerなどのエコシステムが必要となる。さまざまな企業が連携してこそ、新しい仮想ワークステーションというプラットフォームが導入できるのだろう。このようなエコシステムを日本でも、米国でも、構築しているのは、現在はNVIDIAだけだ。今後はともかく、この段階での現実的な選択肢としては、NVIDIA GRIDを検討することになるのではないか。