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パナソニック デジタルが事業戦略を発表、レガシー刷新とAI推進で2030年度に外販500億円へ

 パナソニックグループのIT専門子会社であるパナソニック デジタル株式会社が、2026年4月1日からスタートしたのに合わせて、同社の事業戦略について説明した。

 パナソニック デジタルの阿部裕社長は、「国内外のパナソニックグループの情報インフラを担うとともに、パナソニックグループのソリューション事業の拡大にも貢献する。また、パナソニックグループ以外への外販も強化することになる」との方針を述べた。2030年度には、外販ビジネスで売上高500億円、利益率で10%以上を目指す。

パナソニック デジタルが目指す姿
パナソニック デジタル 社長執行役員の阿部裕氏

 パナソニック デジタルは、パナソニック インフォメーションシステムズ、パナソニック ソリューションテクノロジー、パナソニック ネットソリューションズの3社が統合するとともに、パナソニックグループの事業会社のIT部門において共通領域となる、インフラやセキュリティなどの担当者が加わり、2026年4月1日付で発足した。また、APAC、欧州、中国など世界5極にミラー組織を置き、これらと連携したITシステムの構築、運用も行う。

グループ内IT事業会社(3社)を統合

 パナソニックグループの国内IT部門は、全体で約2600人であり、そのうち、パナソニック デジタルが約2200人となり、約85%を占める。

 技術力、共通基盤、グローバル対応力による「基盤力」、QCD、プロセス知見、業務知識による「実行力」、価値提案型の営業力、顧客理解、市場適応の「市場価値」を、パナソニック デジタルの強みに挙げ、「パナソニックグループは、大規模基幹システムを構築するとともに、コングロマリット企業として、幅広い領域の事業を展開しており、さまざまな業務知見を持っている。また、複雑で、重たいメインフレームを、軽くて、速い、新たなITシステムに移行する知見を持ち、これを外部に向けた価値提案へとつなげることができる。ITの専門知識だけでなく、業務知見を持つのが特徴である。このノウハウを外販にも生かしたい」とした。

パナソニック デジタルの強み・事業基盤

 パナソニックグループでは、2026年5月にグループ成長戦略を発表。デバイス領域およびソリューション領域を成長の柱とし、2028年度には調整後営業利益で7500億円以上を目指す計画を打ち出している。

 デバイス領域、ソリューション領域、スマートライフ領域といった各事業ポートフォリオと、パナソニック デジタルのITポートフォリオを同期、整合させることで、成長戦略を遂行。同社のEnterprise Architectureを、今後の事業ポートフォリオに合致した形に刷新するほか、社内データを一元化した運用を可能とするIT Portfolio Managementの強化も進める。

 また、ITモダナイゼーション、リアルタイム経営、データドリブン経営を推進。社内にある約1500のレガシーシステムの刷新や、クラウドリフト、デジタルおよびAIへの投資、IT人材マネジメントにも取り組む。

グループIT経営の指針

 パナソニック ホールディングス グループデジタル統括部長でもある、パナソニック デジタルの豊田彰朗取締役は、「グループ内に存在している多くのレガシーシステムを、事業ポートフォリオマネジメントに対応できるように刷新し、モダナイゼーションをやりきる。さらに、過去のデータに頼った古新聞経営や、バックミラー経営ではなく、先行指標を見定めながら、最新のデータを活用して経営をドライブする姿を作っていく。そのために、データが起点となり、仕事のプロセスを形成する仕組みに変化させていく」と述べ、「ITコストの最適化による販管費の削減とともに、DXやAIへの投資を積極化。IT投資の成果の刈り取りにより、グループ全体の調整後営業利益の向上への貢献を目指す」と語った。

パナソニック ホールディングス グループデジタル統括部長兼パナソニック オペレーショナルエクセレンス 執行役員CIO兼パナソニック デジタル 取締役の豊田彰朗氏

 パナソニック デジタルでは、3社の統合計画を発表して以降、新たな組織体制や人事制度のすり合わせなど、統合に向けた準備を進めてきた。こうした取り組みを行った2025年度を「Foundation Transformation」と位置づける一方、新会社が発足した2026年度を「Alignment Transformation」として、部分最適から、全体最適へと転換。働き方や文化の融合などにより、足場固めを進めるフェーズとした。

 社員からの公募により、新たなスローガンとして、「つなげる、デジタルの力で」を掲げたほか、行動指針を制定。パナソニック デジタルの阿部社長は、「行動指針のなかでは、先導する、共創する、成果創出する、成長するという動詞に思いを込めた。これをベースに経営をしていく」と述べた。

 さらに2027年度以降を「Value-Creation Transformation」と位置づけ、事業拡大や新たな競争力の加速、社会貢献や新しい付加価値創出などに取り組む。

段階的 トランスフォーメーション

 一部では、すでに統合の成果が生まれはじめているという。

 旧パナソニック ネットソリューションズが持つビデオマネジメントシステム「ArgosView」と、旧パナソニック ソリューションテクノロジーの生成AI監視ソリューションを組み合わせて、新たなソリューションとして提供。ATM利用者の動きを見て振り込み詐欺の被害にあっていないかどうかを判断できるほか、旧パナソニック インフォメーションシステムズの工事ノウハウを活用して、カメラの設置なども社内で行えるようになる。

ArgosView&生成AI監視ソリューション

 また、国内において、ITソリューションの外販を進めてきた旧パナソニック ソリューションテクノロジーの一部社員が、パナソニック デジタル上海に出向し、日系企業を中心に製造ソリューションの販売を強化。「従来の枠組みでは海外赴任という制度はなかったが、新たな体制となったことで、新たな制度を導入できた。事業の拡大とともに、社員の成長の場を提供できるようになる。社員からは、良い反応がある」とした。

パナソニック デジタル上海との人材交流

 さらに、社内に向けて「AI Everyday」を打ち出し、PX-AIをはじめとして、さまざまな業務でのAIの活用を促進。エージェント型AIの活用も積極化し、文房具としての利用促進だけにとどまらず、業務変革にも挑む。コールセンター業務などにおいては、事業会社をまたいで利用できる共通のエージェント型AIの利用基盤を構築し、横展開するといったことも進める。

AI Everyday

 PX(Panasonic Transformation)の進捗については、2026年5月に、6年目を迎えたことに触れながら、これまでのDXの取り組みに加えて、AIドリブンのトランスフォーメーションや、コーポレートトランスフォーメーションによる取り組みも行い、これらの3つの軸でトランスフォーメーションを進める姿勢を示した。

PXは経営基盤へと進化

 一方、外販事業については、2025年度実績で300億円弱の売り上げ規模を、2030年度までに500億円に拡大する。全社売上高の約3分の1を外販が占めることになる。また、現在5%弱の利益率を10%に引き上げる。

 パナソニック デジタルの阿部社長は、「現在は全社売上高が約1500億円であり、約1200億円がグループ会社からの売り上げとなっている。一部事業のカーブアウトに加えて、SAPによる基幹システムの刷新が2026年度にピークを迎え、2030年度までに完了する予定であり、その時点でのグループ会社からの売上高は1000億円にまで縮小するが、外販を増やすことで、全体で1500億円の売上規模を維持する。将来は、外販比率を50%に持っていける力はあると見ている」と語った。現在、2700社の企業に対してソリューションを提供しており、この顧客基盤も生かす。また、中国、アジアを中心にした海外事業の取り組みも進める。

 「お客さまにとってのサプライヤーではなく、パートナーを目指す。単に、ITソリューションを提供するだけでなく、経営者と話をし、経営課題を解決することを支援したい」とした。

 パナソニック デジタルの豊田取締役は、「ソリューション領域で事業会社と連携し、ITサービスの外販を加速する」と述べた。

 「ERP/CRM」、「製造ソリューション」、「ICT/セキュリティ」、「教育・施設ソリューション」、「SaaS・業務DX」の5つの分野で強みがあるとし、事業比率が高いICTインフラやセキュリティでは、国内10万人以上のパナソニックグループ社員を対象にしたシステム構築力や運用力を生かすほか、製薬会社向けMES(製造実行システム)の提案などを強化。施設向けには、グループ会社が持つ照明システムやチケッティングシステムと連携した提案を進めるなど、専門領域に特化したビジネスを進める。一方で、製品ポートフォリオの見直しを行い、強みにフォーカスした体制にシフトする考えも示した。