週刊海外テックWatch

現場は不信、経営は焦燥 AI導入を突き動かす「二つの不安」

 AI投資の勢いは、バブル懸念の中でも衰えていない。しかし、その推進力になっているのは、生産性の向上や収益拡大だけでないようだ。最近のいくつかの調査から、企業内でAIを推進する大きな2つの「不安」が浮かび上がってきた。労働者と経営者では全く異なる内容だが、いずれも「時代遅れになることへの恐怖」だ。

従業員は「会社のAI」を信じていない

 AIツールを導入した職場で、従業員がこっそり手作業でやり直している――。SAP傘下のDAP(デジタルアダプションプラットフォーム)会社WalkMeが4月9日に発表したレポート「The State of Digital Adoption 2026」によると、従業員の54%が過去30日間に社内AIツールを避けて手作業で業務を終え、33%はAIをまったく使っていなかった。14カ国の従業員1000人以上の企業における経営幹部と従業員を対象にした調査だ。

 「この数字は単なる従業員のAI利用上の“摩擦”ではなく、完全な拒絶を意味している」とレポートは指摘する。「摩擦」とは、現場の従業員が業務ツールで感じるストレスや不要な労力を言う。だが、調査で明らかになった従業員の態度は、それ以上に強い拒絶を示すものだという。

 また、従業員と経営幹部とのAIツールへの認識のギャップもはっきり出た。経営幹部の88%が「従業員には適切なツールが提供されている」と考えていたのに対し、従業員側では21%にすぎなかった。

 興味深いのは、従業員の45%が未承認AIを利用し、36%はさらに機密データまで扱っていたという点だ。未承認AI、いわゆる「シャドーAI」がかなり使われていることになる。つまり従業員は、AI全てを拒絶しているのではなく、会社が導入したAIとその運用を避けているのだ、とレポートは解説する。

 The Futurum GroupのKeith Kirkpatrick氏は「従業員が承認されていないAIツールを使用するのは、承認されたツールや不明確なガバナンスによって生じたパフォーマンスや効率性のギャップを補おうとしているからだ」とコメントしている。