週刊海外テックWatch

「民主化」を語るAltman氏 社内文書が示した“本音”とは

急成長するAnthropicと、OpenAIの事情

 Dresser氏のメモが示す危機感の背景には、Anthropicの驚異的な台頭がある。OpenAIの幹部だったDario Amodei氏らが設立したAnthropicは、急速にOpenAIを追い上げている。とりわけClaude Codeなどコーディングツールの企業向け浸透がけん引しており、同社は4月7日、年換算売上高(ARR)が300億ドルを突破したと発表した。OpenAIの同時期のARRは約250億ドルと報じられており、Anthropicが収益ベースでOpenAIを抜いたことになる。

 Claudeの人気は特にプロユーザーの間で高い。4月初めにサンフランシスコで開催されたAI業界カンファレンス「HumanX」に参加したAIスタートアップGleanのCEO、Arvind Jain氏は、企業市場でのClaude人気を「Claude mania(クロード・マニア)」という言葉で表現した。CNBCによると、「もはや宗教のようなレベルだ」とJain氏は形容している。

 DresserメモはAnthropicについて「彼らのストーリーは恐怖と制限、そして少数のエリート集団がAIをコントロールすべきだという考えの上に成り立っている」とまで踏み込んで書いた。OpenAIは、長年「民主的なAI」を掲げ、Anthropicのエンタープライズ重視の姿勢を暗に批判してきた。

 しかし、このメモが描く戦略は、企業顧客の囲い込みという点で、批判の矛先を自社に向けかねないものでもある。「置き換えにくい存在になれ」というメッセージは、Altman氏の「AIの民主化」と矛盾する。

 テクノロジーの歴史において、ブラウザーのNetscape、SNSのMySpaceのように、先行者がその地位を守れなかったことはまれではない。OpenAIは二つの顔とどう折り合いをつけていくのか。Altman氏のブログとDresser氏のメモは、その問いを浮かび上がらせている。