週刊海外テックWatch
「11分23秒のキルチェーン」 AIが塗り替えた戦争の論理
2026年3月16日 11:53
AIとクラウドで変貌し続ける米軍
当局は作戦でのAIの具体的な使い方を公表しておらず、「11分23秒」という衝撃的な数字を確かめる術はない。だが、Foundryを基盤とする「Maven Smart System(MSS)」というシステムが米軍に採用されていることは公式情報からも確認できる。
MSSは、AIで処理したデータを元に「標的の推奨情報」を人間のオペレーターに提示するインターフェース・プラットフォームだ。もともとは、AIで標的を識別する「Project Maven」として2017年に開始されたプロジェクトだったが、2018年にGoogleが従業員の抗議を受けて撤退したあと、Palantirが契約を獲得した。
その後、Palantirの手で、より広範なデータ統合プラットフォームへと進化していった。2025年5月付のSpaceNewsによると、国防総省はMSSの契約上限を4億8000万ドルから約13億ドルへと大幅に引き上げ、各地の戦闘司令部向けに展開する計画を発表した。その時点で既に2万人を超えるアクティブユーザーがおり、5カ月足らずで2倍以上に拡大していた。
SpaceNewsは「MSSの演習では、標的の検知から攻撃までの情報作戦の所要時間が、数時間から数分に短縮されたとの報告もあった」と伝えている。そのことからみると、Al Habtoor Research Centreの11分23秒という数字もあり得るるだろう。
MSSは、国防総省のエンタープライズクラウド「JWCC」の上で動作する。JWCCは2021年に紆余曲折の末中止になった「JEDI」の後継プロジェクトにあたり、2022年12月、Microsoft、AWS(Amazon Web Services)、Google、Oracleの4社が国防総省と総額最大90億ドル・最長5年間の契約を結んでスタートした。
それから約3年。今回のイラン戦争は「クラウド化、AI化」の成果を示したものと考えられる。
さらに国防総省は、イラン攻撃に先立つ1月9日、「AI加速戦略」を発表し、米軍を「AIファースト」組織へと根本的に再編すると宣言した。戦闘、情報、組織の各分野でAIを活用するもので、「群ドローン(Swarm Forge)」兵器システムの開発から、官僚的な事務手続きの排除まで、全てをこれまでにない短期間で実行するとしている。