大河原克行のクローズアップ!エンタープライズ

Dell EMC Worldで明らかになったDell Technologiesの“3つのポイント”

ますます大きくなるVMwareの存在感

 またVMwareでは、パブリッククラウドサービスのvCloud Airを、フランスOVHに売却したが、「これは、VMwareが、自社の製品をクラウドプロバイダーがしっかりと動作させることができるかどうかを確認する、という要素があった。だが、その役割が終わったといえる」とその理由を説明してみせた。

 その点では、Dell Technologiesのクラウド戦略も転換期に入ったことを象徴することになったイベントだったともいえよう。

 会期中には、クラウド戦略に関するセッションも用意され、汎用的なアプリやクラウドネイティブアプリ、ミッションクリティカルアプリにおいては、それぞれを稼働させる際にVMwareを活用し、環境管理では、汎用アプリではVMware、クラウドネイティブアプリではPivotal、ミッションクリティカルアプリではVirtustreamを活用することで、すべてのクラウドサービスを網羅できる体制を整えていることを強調してみせた。

 サービスとツールを組み合わせながら、あらゆるクラウドサービスにかかわっていく姿勢が明確になったといえる。

 そして、最後が、Dell TechnologiesとVMwareとの関係が一気に強固になった点だ。これは、今回のDell EMC Worldで最も強く感じた変化だ。

 過去のEMC Worldでも、VMwareのパット・ゲルシンガーCEOが、基調講演を行うことはあったが、あくまでも脇役の存在であることは否めなかった。

 だが、今回のDell EMC Worldでは、VMwareから数々の新たな取り組みについてのアナウンスが行われ、VMwareのプライベートイベントであるVMworldと見間違えるほどの、まさに主役級の扱いであったといえる。

 デル会長兼CEOは基調講演のなかで、「VMwareは多くのイノベーションやチャンスを生み出すことができる。Dell Loves VMware」と発言。ステージ上のスクリーンに、両社のロゴとハートマークを大きく映し出してみせたほどだ。

両社のロゴとハートマークを大きく映し出してみせた

 VMwareは、会期中に、IoTのアーキテクチャの構築を支援する「VMware Pulse IoT Center」を発表したほか、今後、「VMware Pulse」の製品群を広げていくことを公表。さらに、VxRail Appliances、vSAN ReadyNodesをベースにし、VMware Horizonを搭載した「VDI Complete」を発表したり、Pivotalとの連携によって、Pivotal Cloud Foundryと、VMware NSXを組み合わせたDeveloper Ready Infrastructureを発表したりといった具合に、VMware関連の発表が相次いだ。

 VMwareのパット・ゲルシンガーCEOは、「私は3年前のEMC Worldで、すべてのインフラがHCIになると断言したが、それに向かって、HCIの市場が爆発的に伸びている。VMwareはこの市場でリーダーになる必要がある」と述べ、ここでもDell Technologiesと足並みがそろっていることを強調してみせた。

 これまでのVMwareの立場は「独立性」であった。DellによるEMCの買収が発表されて以降、デル会長兼CEOも、ゲルシンガーCEOも、「独立性」の言葉を何度も使い、等距離外交を維持するポジションを訴えてきた。

 そこから連想されるのは、Dellを含めたベンダー各社とのパイプの太さは、すべて同じものというイメージだ。

 だが、今回のDell EMC Worldにおける幹部の発言や発表内容を聞いていると、そのイメージを変えた方がよさそうだ。

 どうしても、Dellとの緊密ぶりが、他社との距離感の差となって感じるからだ。

 そこで筆者は、Dell EMCのゴールデン プレジデントに、今回のDell EMC Worldをきっかけに、「独立性」のとらえ方を変化させた方がいいのかを直接、聞いてみた。

 ゴールデンプレジデントの第一声は、「パイプの太さには、それぞれに違いがある」というものだった。

 では、なにが違うのか。

 ゴールデンプレジデントは次のように語る。

 「Dell Technologiesは、戦略的に統制が取れた生態系のなかで、VMwareとの関係を構築している。もちろん、VMwareは、ほかのベンダー各社とも戦略的な協業体制を取っている。これらの関係は、1対1の独占的なものではないことも明らかだ。これは、Pivotalも同じであり、それぞれが持つエコシステムを生かしたビジネスを行っていくことになる」と説明する。

 しかし、その上で、次のように続けた。

 「だがVMwareにとって、最も緊密なつながりを持っているのは、Dell Technologiesである。それはパイプの太さが違っているといっていいほどのものだ。これは、家族としての関係なのか、友人としての関係なのかというほどの違いがある。VMwareは家族であり、それだけの強いつながりがある。家族がいながら、友人がいるという関係に似ている」。
 そして、「以前、EMCフェデレーションといったいた中でのVMwareとDellの結びつきよりも、いまの結びつきの方が緊密であることは明らかだ」と付け加えた。

 この言葉からも明らかなように、DellとVMwareの関係は、「独立性」は維持しながらも、これまでのような「等距離外交」のイメージはもはやないといっていい。VMwareは、Dellと最も緊密な関係を持つことを明言しながら、ほかのベンダーとの関係を維持するという舵取りをしていくことになる。

 もちろん、その方向にかじを切るタイミングは、いつかは訪れるとは思っていた。しかし、2016年9月の統合から、1年をたたずにここまでかじを切ったのは正直驚きだ。

 この点でも、大きな転機を感じざるを得ないDELL EMC Worldであったといえよう。