“特急開発”ツールの進化系
Part 5:多様化と成熟が進む開発環境
■国産ツールも含めツールや方法論は多様化
海外製だけではなく、国内においても独自の方法論に基づいた 生産性の高い開発ツールがいくつか生み出されている。 国産製品を中心に、その概要を見ていく。
GeneXusやSapiens、ユニケージ開発手法といったツールや方法論の他にも、基幹系システムの開発期間を劇的に短縮することを狙ったツールのバリエーションが増えている(表5-1)。まずは、国産の2つのツールを見ていこう。
【表5-1】主要な業務アプリケーションの“特急開発”を想定したツール・方法論(表のPDFはITLeadersのページでダウンロードできます) |
■方法論+ツール型「iRYSHA」~約180の標準サービスを用意
GCT研究所が販売するのは、Webアプリケーションの開発ツール「iRYHSHA(イェライシャ)」だ。標準で用意する機能(サービス)の組み合わせでアプリケーションを構成することに主眼を置いている。
画面や帳票などのUI、データテーブル、基本要件で定義する「業務場面(GYOMU)」を単位として開発を進めていくのが特徴だ。業務の流れに沿って「FlowCreator」で、業務場面同士のつながりを設定(図5-1)。各業務場面で利用するデータ項目の定義や、データベースのフィールド名やデータタイプ、ラベルといった要素は、専用マクロが付随するExcelシートを利用して設定する。この内容を「GYOMU Builder」と呼ぶ生成ツールに登録すると、110項目におよぶ定義情報で構成するアプリケーションの「設定テーブル」に反映。iRYSHAの ASP.NETベースの実行エンジンがこれを逐次読み込み、Webアプリケーションとして動作させるのが基本的な仕組みだ。
【図5-1】GCT研究所の「iRYSHA」での業務フロー設計の例。マスターデータ登録や伝票処理、データ分析といった業務場面の組み合わせとしてフロー図を描いていく |
ユーザー認証やアクセス制御、操作ログ、メール送受信といった汎用的な処理については、iRYSHAが提供する約180個の標準サービスによって実現する。これらは、同社がこれまで手がけてきた15カ国における統合業務(ERP)パッケージ導入の実績と、シンクタンクなどを活用した約40カ国の調査結果から絞り込んだもの。
「例えばセキュリティに求められる要件は、多くの顧客に共通する。汎用的で多くの顧客に横展開できる機能はほぼサービス化を完了した。顧客固有の業務要件以外は、ほとんどカバーできる」(GCT研究所の岡部 摩利夫代表取締役社長)。
ユーザーインターフェイスの細かな変更はJavaScript、企業の個別要件を満たす処理など、汎用化できない部品はC#やJavaでライブラリを個別開発して用意する。