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Facebookが企業SNSに進出 コンシューマから攻略なるか

コンシューマ向けサービスの企業展開は難しい

 法人向けソーシャルサービス市場は新しい市場ではない。すでに多くのサービスがひしめき合っている状態だ。代表的なのは、Microsoftが2012年に12億ドルで手に入れたYammer、SAPが買収したSuccessFactor、さらにGoogleなどの大手、Slackなどのベンチャーも狙っている。Facebookの参入はどんな影響を与えるのだろうか? そもそもチャンスはあるのだろうか?

 この分野を長くウォッチしているCRM専門のコンサルCRM Essentialsの幹部は、市場がなかなか盛り上がらずに機を逸してしまった、とTechCrunchに述べ、企業向け、企業文化や習慣を変えることは難しく、「ソーシャルネットワークを職場に持ち込むのは簡単なことではない」「人間のインタラクションはさまざまで、すべての期待を満たすプラットフォームを構築するの難しい」と課題を指摘する。そうした中でも、「Facebookはチャンスをつかむかもしれない」と予想する。

 Facebookがコンシューマ分野で築いた知名度と、すでに多くのユーザーがプライベートで利用しているという点は強みだ。TechCrunchは「デファクトのコラボレーションチャンネルになる可能性はかなりあると見る。ただし、利用のための敷居を低くして、分かりやすいビジネスツールを提供しつつ、プライバシーと安全性という最大の懸念にきちんと対応できれば、の話だが」というビジネスコンサルAdjuviの幹部の見解を紹介する。

 TechCrunchはこのほかにも、Dropboxと比較したDow Brook Advisory Servicesのアナリスト、Lawrence Hawes氏のコメントも紹介している。それによると、DropboxもFacebookも、ともにコンシューマ向けに最初に設計されたサービスで、Dropboxは企業向けサービスに本腰を入れて数年になるが、この道は簡単ではないという。

 GartnerのリサーチバイスプレジデントMichael Gotta氏は、これまでの法人向けソーシャルの問題として「目的地としてのソーシャル」は失敗していると分析する。つまり、そのサイトに行ってソーシャル機能を利用してもらうというアプローチでは、ユーザーの行動や習慣を変えるのは難しいというのだ。

 Facebook at Workも「目的地アプローチ」といえるが、企業の従業員のほとんどがすでにプライベートでFacebookを利用して慣れ親しんでおり、有利だ。さらに「コンシューマライゼーションやBYOx(なにかを業務に持ち込むこと。多くはDeviceのBYOD)トレンドによって、企業がさまざまなデバイスとアプリケーションを受け入れるようになっている」と、追い風があることも指摘する。

 プライバシーとセキュリティの懸念は多くの専門家が挙げたが、Gotta氏はこれに加え、2014年にFacebookが行っていたことが明らかになった「感情操作実験」を同社へのマイナス材料として挙げた。感情操作実験は、ニュースフィードの内容を人為的に操作し、それがユーザーの投稿にどんな影響を与えるかを実験したものだ。本人の承諾を得ずに実施したことが、倫理的に問題があるとの批判を受けた。

 このほかGotta氏は、競合への影響については、エンタープライズソーシャルサービス(ESN)のみの提供にフォーカスし、多様性のないベンダーは「一部の基本的な利用がFacebookに移るかもしれない」と警告。またビジネス向けSNSの代表格であるLinkedInなどとの競合の可能性もあると述べている。