モバイルが目玉、ユニーク技術の「DEMO 08」あれこれ



 最新技術に特化したイベント「DEMO 08」が、1月28日から30日にかけて米カリフォルニア州で開かれた。未発表の技術や製品を規定時間内にプレゼン形式で発表するユニークなイベントで、年初めと秋の年2回開かれている。今回も77社が出展して、アイデアと技術力を競った。ビジネス、コンシューマなどのジャンルが設けられているが、目立ったのはモバイルがらみの分野。話題のDEMOデビューをざっとみてみよう。


 大きな話題をさらったのは、“シリコンバレー初の新しいタイプの電話会社”を標榜する米Ribbitだ。年末に、Flashベースのプラットフォーム技術「Ribbit Platform」を発表してメディアの関心を集めていた同社は、この会期中、消費者向けサービス「Amphibian」(開発コード名)を発表した。これまでの携帯電話を、バーチャル/リアルの「デュアルワールド携帯電話」に変えるもので、携帯電話への着信をPCで受信するなどが可能になる。「Webブラウザが携帯電話になる」と同社は説明している。

 Ribbitのプラットフォームは、PSTN(公衆交換電話網)、VoIPネットワークに接続するスイッチにより、Webと音声サービスとを結びつける。FlashとFlexをベースとしたAPIを提供することで、通信分野を専門としない開発者でも音声通話サービスを開発できるという。Ribbitはこれを「ボイスウェア」と称しており、新しい流れを作ろうとしている。

 同社は昨年末、エンタープライズでは、パートナーのsalesforce.comがRibbitを利用して自社CRMに通話機能を統合したと発表している。salesforce.comは第1四半期中に「Ribbit for Salesforce」を提供する計画。コンシューマ向けのAmphibianは、第2四半期中に提供を開始する予定だ。

 メディアでは、アプリケーションもさることがら、Ribbitが開発者向けのエコシステムを用意している点を高く評価している。これまで大ヒットした製品にみられる特徴の一つである。


 携帯向けブラウザにもニューカマーが現れた。Skyfireは、PC用Webブラウザと同じ感覚でWebサーフィンができる携帯電話用フルブラウザを披露した。現在、携帯電話に搭載されているWebブラウザは機能が限られており、たとえばFlash、Ajaxといったリッチアプリケーションには対応していない。ブラウザ「Skyfire」はこれらの再生に対応し、PCと同様の機能を備えるという。

 PC World誌は、この携帯ブラウザについて「壮観だ」とコメント。速度、画像ともに問題なしと絶賛している。米国では、携帯電話などモバイル端末でのWebの利用が日本ほど進んでいないといわれているが、このような技術が携帯電話でのデータ通信を一気に加速するカギを握りそうだ。Skyfireは、まずWindows Mobileに対応し、今後「Symbian」のサポートも計画しているという。


 カナダのRove Mobileは、スマートフォンからPCのリモートデスクトップ環境の利用を実現するソフトウェア「PCMobilizr」を発表した。携帯デバイスの小さなディスプレイにPCデスクトップが表示される。PCに専用ソフトウェアをインストールして、携帯電話のクライアントアプリケーションから接続。ユーザー認証、暗号化などのセキュリティ機能も備える。うまくいけば利用価値が高そうだ。

 まずはBlacberryとWindows Mobileに対応した。月額料金が9.5ドルから。今後Appleの「iPhone」や、Nokiaの「S60」、Googleの「Android」などにもサポートを拡大する計画という。


 既存技術にひと味付け加えて、新しい使い方を提案するのもよくある手法だ。Livescribeが発表した“スマートペン”「Pulse」は、ペン自身が、書いた文字や図形と周囲の音声を記録する。デジタルペン機能に、録音機能を加えた点が特徴だ。

 ドットが刷り込まれた専用紙を使って、書いたものをデータとして保存する。紙に印刷されている録音、停止などのアイコンを押すと、音声メモを取れるという。文字を書いたときの音声データも保存できるため、メモやスケッチを音声データ付きでブログにアップすることなどができるとしている。

 Livescribeは「新しいタイプのモバイルコンピュータ」と胸を張るが、基本的にはスウェーデンのAnotoの技術ライセンスを受けたもので、付加された音声データ機能が差別化となるかがポイントだろう。


 今春のDEMOも新しいアイディアにわいたようだ。BusinessWeek誌では、「奇抜なアイデアが成功につながるとは限らない」としながらも、サブプライム問題に発する景気後退懸念の中、イノベーションが進んでいることを見て元気が出てくるとしている。

関連情報
(岡田陽子=Infostand)
2008/2/4 09:10