Infostand海外ITトピックス

「ChatGPTには戻らない」 Gemini 3登場でAI競争の勢力図が一変?

実を結んだ全方位戦略

 Gemini 3の意義は、単なるベンチマークでの勝利にとどまらない。Googleの全方位戦略が、ようやく実を結び始めたととらえることができる。

 ChatGPT登場以降、「AIが検索エンジンに取って代わる」との予想が繰り返されてきた。実際、Perplexityの「Comet」、OpenAIの「Atlas」などAIスタートアップのブラウザーが登場し、Googleの牙城を崩そうとしている。

 だが、Googleは、Gemini 3のChromeへの統合で反撃した。Tom's Guideは、統合によって「AI専用ブラウザーの存在意義がなくなった。ChatGPT Atlasでさえもだ」と指摘する。38億のChromeユーザーがデフォルトでAI機能にアクセスできる。この圧倒的な配信力はスタートアップには到底まねできない。

 Reutersは、AI競争が「ベンチマークから、収益を生み出すアプリケーションへとシフトしている」と分析。Gemini 3が「発表時点ですでに収益を生み出す消費者向けおよび企業向け製品の一部を支えている」という点で、過去のリリースとは大きく異なると指摘している。

 Googleの強みはそれだけではない。Wall Street Journalは、Googleが自社のTPUチップを使用して自社ネットワーク上で独自のフロンティアAIモデルを訓練している点にも着目し、「これにより、Googleは事実上、OpenAIとMicrosoftを合わせたような存在になり、(TPUにより)NVIDIAの要素も少し加わった」と分析した。チップからモデル、アプリケーションまでを垂直統合できる企業は、他にはない。

 Googleの戦略を市場も好感している。Googleの親会社Alphabetの株価は過去最高値を更新し、時価総額は初めて4兆ドルに迫った。

 Wall Street Journalは、「他のビッグテック株が冷え込む中、Alphabetは急騰している」「まるで誰もGoogleにAIバブルがはじけたことを伝えていないかのようだ」と皮肉交じりに報じた。