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AIスタートアップの「解体セール」 人材争奪に使われる「acqui-hire」

 AI開発スタートアップのWindsurfが、同業のCognition AIに買収されることが決まった。ここ数カ月、OpenAIが買収するとの観測が広がっていたが破談となり、主要人材はGoogleに、残る事業はCognition AIに「分割」されるという形となった。ここに至った背景には、企業を買収せずに「最も価値ある部分」だけを切り取るテック大手の手法がある。

30億ドルの買収が破談に、数日で2社が分割取得

 「この72時間は、私のキャリアの中で最も激しいジェットコースターのようだった」。Windsurfの暫定CEO、Jeff Wang氏は7月14日のLinkedinへの投稿で、こう述べ、「何より感謝の気持ちでいっぱいだ」と、Cognitionへの謝意を語った。

 Windsurfは「Codeium」として知られるAI支援コーディングツールを開発している。年間売り上げは1億ドル規模に達し、35万社以上に利用されている急成長企業だ。OpenAIは約30億ドルという過去最高額での買収交渉を進めていた。

 ところが7月11日、この買収話が破談になったとメディアが一斉に報じた。Wall Street Journalによると、OpenAIとその出資者であるMicrosoftの間の契約が原因だった。OpenAIが取得した知的財産へのアクセス権をMicrosoftが有するのだが、OpenAIはWindsurfの技術を渡したくなかったのだという。

 そして事態は急転回した。同じ11日、今度はGoogleがWindsurfのCEOであるVarun Mohan氏や、共同創業者のDouglas Chen氏らを雇用すると発表した。Googleは報酬と技術ライセンス料として24億ドルを支払うが、企業買収は行わず、コアメンバーを雇用するというものだ。

 ただし、Googleに行けるのは「選抜されたメンバー」だけで、約250人の従業員のほとんどは取り残された。その中から、過去2年間ビジネス責任者を務めていたJeff Wang氏が暫定CEOに就任した。Cognition AIによる買収の発表はそれから72時間後のことだった。買収額は公表されていない。