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AIスタートアップの「解体セール」 人材争奪に使われる「acqui-hire」
2025年7月22日 11:17
「acqui-hire(アクイハイヤー)」の新手法
人材獲得合戦がヒートアップしているAI業界では、Windsurfのような例が増えている。スタートアップ企業全体を買収するのではなく、トップやコア人材を引き抜く手法だ。
昨年3月、AIアシスタントを開発するInflection AIの共同創設者Mustafa Suleyman氏らがMicrosoftに移籍した際、Microsoftは総額6億5000万ドルを支払った。技術ライセンス料などの名目だが、実質的には“人材購入費”だった。
同様の事例は相次いでいる。ほかにも昨年は、GoggleがCharacter.AIのNoam Shazeer CEOらコアメンバーをDeepMindに迎えて27億ドルのライセンス料を支払った。AmazonはAdept AIに約2500万ドルを支払って従業員を雇用し、Adeptは投資家の出資分4億1400万ドルをほぼ全額償還した。
これらの取引で特徴的なのは、高額なライセンス料が非独占の契約だったという点だ。株式の移動もなく、利点はほぼ人材獲得のみ。この形式は、通常の企業買収とは異なることから、「acqui-hire(アクイハイヤー:acquisitionとhiringを組み合わせた造語)」と呼ばれている。テック大手が欲しい部分だけを切り取って持ち去る手法だ。
最近では今年6月、MetaがScale AIに143億ドルを出資して、CEOのAlexandr Wang氏を最高AI責任者に迎え入れた。Scale AIの株式の49%を取得したが、議決権も持たないという契約だ。
しかし、そうしてコア人材を引き抜かれたあとのスタートアップの運命は厳しい。
7月17日付のBloombergは、Scale AIが従業員の14%に当たる約200人を解雇し、グローバルの契約社員500人の契約を打ち切る“再編”を行うと報じた。昨年のInflection AIとAdept AIの場合は、従業員の多くは大手に移籍できた。が、Character.AIでは約140人が採用されずに置き去りになった。
Windsurfの場合は、恵まれていたと言える。