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世界の自動車大手の狙いは? 相次ぐ配車アプリ企業との提携

「トヨタにはUberから学ぶものはない」

 配車サービスは、インターネット、スマートフォン、アプリが生んだ新しいモデルだ。GPS機能を持ったスマートフォンから、専用アプリでリクエストすると、近くにいる契約ドライバーの車を乗客のもとへ配車する。決済はクレジットカードで行われ、現金は持たなくてよい。

 契約ドライバーの私用車(リース車もある)を活用することから“シェアリングエコノミー”の代名詞にもなった。Uberの成功のおかげで、世界的にじわじわと普及しつつある。震源は米国だが、欧州のGett、英国のHailo、Maaxi、中国のDidi Chuxingなど各地で多数のサービスが生まれている。このビジネスの勢いを示すように、Uberの評価額は2015年末時点で625億ドル。まもなくGMを上回るとも予想されている。1日の利用数が1100万回というDidi Chuxingも評価額200億ドルという。

 このような配車サービスに大手企業が出資する事情は、各社さまざまだろう。例えば、Appleは、「iPhone」の成長が鈍化する中で事業の多様化を図っているところで、Reutersは「(Appleにとって)重要な中国市場の理解を助ける」と目的を分析している。

 GM、Volkswagen、トヨタはどうだろう。車のシェアリングが進み、自動車が“所有”から“共有”するものになれば、生産台数が伸びなくなり、自動車メーカーに痛手となりかねない。Bloombergによると、UberのCEO、Travis Kalanick氏は「車を所有する時代は終わる」という旨の発言をしており、ビジネスコンサルタントのMcKinseyも、共有サービスは個人的なモノとしての車という概念とは逆のものだとしている。

 となると、新しい若い企業と組むことで時代に遅れないようにする狙いかと想像される。しかし、Bloombergは、自動車業界、配車サービスの現実を指摘しながら、「トヨタにはUberから学ぶものはない」と、この見方には否定的だ。

 Bloombergによると、Uberドライバーは、全米の自動車登録台数2億6500万台に対して、わずか0.17%にすぎず、Uberのアクティブドライバー数は、米レンタカー最大手Hertzが保有する自動車台数よりも少ない。「古参の恐竜が若い企業から学ぼうと思っている? それでは正反対だ」(Bloomberg)という。また、データの獲得という面からみても、自動車メーカーはネット対応が進んでおり、「ライドシェアリングアプリから得られる以上に、自動車メーカーは膨大なデータにアクセスできる」としている。

 こうしたことから、自動車メーカーの狙いはリースや自動車の販売網としてのカーシェアリングにあるのではないかとBloombergはみている。「(自動車メーカーは)ライドシェアリングアプリが輸送業界を変えていることを無視してはいないが、(配車サービスとの提携によって)新しい顧客とセールス担当を獲得しているのだ。メーカー各社は早い段階から関係を構築しようとしている」と分析する。

 トヨタはUberドライバーに自社製乗用車をリースすることを明らかにしており、GMとLyftは週99ドルでGMのChevy Equinoxesなど一部機種を提供する計画だ。個人が車を所有しなくなっても、輸送手段としての車は必要だ。とすれば、カーシェアリングはメーカーにとって重要な販売先となる。

(岡田陽子=Infostand)