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AI戦争に参入 Facebookの新しい「パーソナルアシスタント」

新たな収益の柱になる?

 こうしてMは業界大手が全力で進めている先行AIに挑戦してゆく。Apple、Microsoft、Googleのほか、Amazonの円筒形スピーカーに搭載される音声サービス「Alexa」もライバルになるだろう。ユーザーの購入に結びつくという点では、むしろAlexaの方が直接の競合かもしれない

 また、この分野にはベンチャーも次々に名乗りを上げている。銀行用AI技術を利用してレストランのレコメンデーションを行うLukaといった企業。コンシェルジュサービスであれば、(人間の)オペレーターが24時間態勢で待機してメッセンジャー経由でレストランや飛行機の予約を引き受けるMagic、また雑用をメッセンジャーで簡単にアウトソーシングできるTaskRabbitなども競合になるかもしれない。類似のサービスはひしめいている。

 その中でMをどう展開してゆくのか――。Marcus氏は「Facebookの目標はメッセンジャーをモバイルでの最初の発見の場にすることだ」とWIRED.comに語っている。Mは無料で、すべてのFacebookメッセンジャーのユーザーに利用可能にするという。「われわれはユーザーが何をしたいかを補足し始めたところだ。これはしばしば何かの購入や、取引につながる。いずれ、(収益を上げる)機会になる」と期待を語る。Mを経由した販売で利益を出す考えだ。

 しかし、一方で人力が必要なMが広がると、相当数のM trainersが必要になることは間違いない。Lebrun氏は、ユーザー数が幾何級数的に増えるのに対し、トレーナーの数は直線的に増加することになるだろうと予想する。それでも、巨大サービスのFacebookには大きなコスト増要因になる。

 Facebookはその膨大なユーザーをマネタイズする新しい道を真剣に探している。同社の売り上げの95%は広告収入だが、PatPal出身のMarcus氏が手がけるプロジェクトがユーザーの購入や支払いに着目したものであることは想像できる。MはFacebookの新しい武器として期待されているはずだ。

 Wall Street Journalは「Facebookは世界最大のソーシャルネットワークで、写真共有で最もポピュラーなのだが、Webの検索や、レストランの予約や、何かをオンラインで買う場にしている人はほとんどいない」と指摘する。Facebookのメッセンジャーアプリのユーザーは世界で7億人にのぼる。

 またWIRED.comは、 MのプラットフォームがFacebookの新しいビジネスを生み出す可能性もあると予想する。例えば、メッセンジャーで入ってくる大量のリクエストを、直接、効率よくさばくといったことに使えるかもしれない。大規模ヘルプデスクのようなケースだ。

(行宮翔太=Infostand)