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AI戦争に参入 Facebookの新しい「パーソナルアシスタント」

 Appleの「Siri」、Microsoftの「Cortana」、そしてGoogleの「Google Now」――。ユーザーのパートナーとなって日常的な質問に答え、提案し、アドバイスする。これらは「バーチャルアシスタント」あるいは「パーソナルアシスタント」と呼ばれ、AI(人工知能)技術によって実現される、こうしたサービスの中に、新たにFacebookも「Facebook M」と呼ぶアプリサービスを投入して参入した。マシンのAIに加え、リアルの人間とでサービスを提供する「ハイブリッド」であることが大きな特徴だ。テクノロジーの後退なのだろうか――。

AIとヒューマンスタッフで提供する「Facebook M」

 「Mは、メッセンジャーの中にあって、あなたの代わりに仕事を処理したり、情報を見つけたりするパーソナル・デジタル・アシスタント(PDA=携帯情報端末ではなく、パーソナルアシスタントの意)だ」「ほかのAIベースのサービスとは違って、Mは本当にあなたの代わりに仕事を完了してくれる。例えば、品物の購入、愛する人へのプレゼント、レストラン探し、旅行の手配、アポの設定などなどだ」。Facebookのメッセージング製品担当バイスプレジデントのDavid Marcus氏はブログでこう説明している。

 Mは、OSの中に組み込まれたSiriやCortanaと違って、メッセンジャーアプリの機能として提供される。テキストのみでやり取りし、音声認識や合成音声には対応しない。またSiriやCortanaのような性別はない。代わりに、ほかのAIベースのライバルができないような、さまざまな仕事をこなすことができる。それを可能にするのが「ハイブリッド」だ。

 Mは最初はシステム(AI)がユーザーとやり取りするが、システムの手に余るようになると、人間に切り替わる。人間のスタッフがAIの仕事をシームレスに引き継いで、より難しい仕事をユーザーの代わりに行う。

 この人間のスタッフをFacebookは「M trainers」と呼んでいる。M trainersはAIにできない仕事を処理するだけでなく、処理の過程でMに学習させる。文字通り「トレーナー」だ。Wall Street Journalによると、Marcus氏は、M trainersがどのような人たちで何人ぐらいいるのかは明らかにしていない。だがFacebook社員ではなく、外注者であることを認めている。

 Mのシステムは初期段階で、提供範囲も非常に限られている。8月26日からサンフランシスコのベイエリアで数百人規模のベータテストを開始した。選ばれたテスターしか参加できない。

(行宮翔太=Infostand)