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AI戦争に参入 Facebookの新しい「パーソナルアシスタント」

Mを実現するWit.aiのテクノロジー

 実際のMの様子はどんなものになるのだろう。WIRED.comは、メッセンジャーのこんなスクリーンショットを紹介している。

 「来週、シカゴに行くんだけど、うまいハンバーガーを食べたい。どこに行けばいいだろう?」(ユーザー)
「Command Burgerという店の評判がいいです。予約しましょうか?」(M)

 つまり、Mは質問に答えたり、検索操作を代行するだけでなく、コンシェルジュのようなリアルな仕事が可能で、予約や品物を購入するところまで完遂する。言葉に対して言葉を返すだけのSiriやCortanaとは、この点が大きく異なるというわけだ。

 WIRED.comは、Mの技術基盤が、今年1月にFacebookが買収したスタートアップWit.aiのものであること伝えている。Wit.aiは2013年設立。従業員は10人程度で、自然言語処理の技術を開発していた。買収額は非公表。Marcus氏は、メッセンジャーから収益を上げる方法を模索していて、Wit.aiにアプローチし買収。その3カ月後、メッセンジャー上でバーチャルアシスタントを動かすことを決めたという。

 Wit.aiの創設者でCEOのAlex Lebrun氏は、現状ではAIの能力は十分ではないと指摘する。「Siri、Google Now、CortanaのようなAIのできることは非常に限られる。AIの範囲が限られているためだ。これに対し、Mは、ユーザーが求めているものを提供する。より野心的なことを始めたい」と述べている。

 WIRED.comによると、Mの技術は最先端のAI技術ではなく、どちらかというとクラシックなアルゴリズム(具体的には、「条件付き確率場」と「最大エントロピー分類器」)で、その特徴は音声認識に膨大なデータを使わずに済むことだ。Mは運用しながら、ユーザーのデータを蓄積していくが、比較的少ないデータ量で開始することができ、サービス立ち上げの敷居が低く済むという。

 ただし、Mを改良し続けるのは挑戦的な試みになる。Facebookは別部門でニューラルネットワークの研究を進めており、Mと融合させることを目指している。そのためにはトレーナーによるサポートをずっと継続していかなければならないのだ。「(Mは)知れば知るほど、まだ知らないことが増えてゆく」(Lebrun氏)という。

(行宮翔太=Infostand)