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どう転身する? クラウド時代のIBM

 IBMが積極的に提携を進めている。7月に企業向けモバイル分野でAppleとの協力を発表したのに続き、この3カ月の間でSAP、Microsoftと次々に提携を発表した。組む相手はそれぞれ異なるが、フォーカスするのはクラウドとモバイルだ。IT業界で本格化する新しいコンピューティングモデルに適応するための動きだが、「危機」説も出ている。IBMはどんな状況にあるのだろう?

想像以上に状況は苦しい? 10四半期連続で減収

 10月20日発表されたIBMの第3四半期(7-9月期)業績で、同社は減益減収を報告した。売上高は前年同期比4%減の223億9700万ドル。サービス、ソフトウェア、システムとテクノロジー(ハードウェア)の3部門で減収となった。売上高の減収は10四半期連続となったが、それよりも投資家が懸念したのが、同社が2015年の営業利益目標を撤回したことだ。カンファレンスコールでは、アナリストの一人が「IBMは危機に陥っているのか?」と質問したという。

 CEOのGinni Rometty氏は、この質問に対し、1990年代はじめにメインフレーム時代からクライアント/サーバーモデルへと転換時に陥った危機を引き合いに出しながら、「前回の時とは違う」と述べたという。そして、複雑さを排除して新しい事業にフォーカスし、迅速に動くことで危機を乗り越えると説明した、とFinancial Timesは伝えている。

 業界の巨人IBMが発したメッセージをメディアは悲観的に報じている。

 多くは現在業界に押し寄せている新しいモデル「クラウド」への対応を課題に挙げる。IBMの強みは、個々の製品開発、コンサルティング、自社ソフトウェアやミドルウェアとハードウェアを結びつけるシステムインテグレーションなどのサービスだったが、迅速な設定、導入、実装を最大の強みとするクラウドに対しては、これらの“付加価値”は大幅に縮小するのだ。

 一方で顧客は新しいクラウドモデルに魅力を感じているようだ。Re/Codeは、IBMのサービス事業にあるビジネスコンサルを受け持つGlobal Business Service(GBS)の顧客の多くが、IBMへの投資よりも、salesforce.com、NetSuite、Workdayなどのクラウドベンダーへの投資を増やしているという金融アナリストの声を紹介する。

 「IBMの顧客生涯価値(Lifetime Value)は5四半期連続で下降線をたどっており、2002年以来の最低値である293億ドルレベルまで下がっている」とアナリストは言う。これに加え、第三四半期の業績発表時にIBMのCFOは大口の契約が外されていると明かしたようだ。GBSが不調になると、ソフトウェアとハードウェアにも響く、とアナリストは危惧(きぐ)を指摘している。

(岡田陽子=Infostand)