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どう転身する? クラウド時代のIBM

選択と集中か、分社化か、それとも…

 IBMは提携のほかに、事業の見直しと集中を急ピッチで進めている。今年1月にコモディティのx86サーバー事業をLenovoに売却。第3四半期の業績発表時には半導体事業をGlobalFoundriesに譲渡することも発表している。2013年9月には顧客ケアアウトソーシング事業のSYNNEXの売却を発表した。

 こうした動きもあってか、CEOのRometty氏の手腕にフォーカスしたFinancial Timesは、どちらかというとRometty氏に好意的な見解を示しており、むしろ必要なのは「緊迫感」だと述べている。また、(Rometty氏自身ではなく)IT業界の中心にあるというIBMの社風により、クラウドで業界を変えつつあるAmazonの脅威を軽視しているという意見も紹介している。

 多くのメディアは同社の事業のスリムダウンの努力を評価する。これに対し、Forbesは対照的に好調なAppleと比較したコラムを掲載した。コンシューマーとエンタープライズと、分野こそ異なるが、両社はハードウェアとソフトウェアの両方を持つという共通点がある。

 それによると、「Appleはソフトウェアとサービスにアクセスする実験的ツールとしてハードウェアを位置づけており、ブランドはソフトウェア/サービスとハードウェアとのつながりに依存している」という。ブランドとマーケティングを伝えるプロプライエタリなエコシステムの構築に成功したAppleに対し、IBMのRometty氏はハードウェア事業を「栄養価値のない空カロリー」と形容したと指摘。「(Rometty氏は)意見を述べているのであって、事実ではない。IBMが“空カロリー”とみるから、空カロリーになるのだ」と指摘した。

 また、Re/Codeは一案として、このところIT業界で続いている「分社化」の可能性を探っている。サービス、ソフトウェアとハードウェアと真っ二つに分かれそうだが、実際は両者は依存関係にあるとする。Reutersも、これまでいくつかの事業部を売却してきたことから、「IBMからその規模のニュースがあるとは思えない」というアナリストの見解を紹介している。

 “隠し球”もないわけではない。IBMは、人間と同じように理解し、考える「コグニティブコンピューティング」の「Watson」の商用化を進めている。Watsonはすでにクラウドプラットフォームとしても提供されており、SAPやMicrosoftの提携によって顧客の利便性が改善するという。

 創業103年のIBMは、過去にもコンピューティングのパラダイムが変わるたびに危機を乗り越えてきた。クラウド時代はどのようにして生まれ変わるのだろうか――。

岡田陽子=Infostand