Infostand海外ITトピックス

攻めに出たDropbox アプリスイート戦略は成功するか?

元国務長官Rice氏の取締役就任に反対運動

 Dropboxの発表でもう一つ話題になったのは人事だ。これまでも財務管理を担ってきたSujay Jaswa氏を正式にCFOに任命したほか、GoogleのMotorola MobilityでCEOを務めていたDennis Woodside氏をCOOに迎え入れたことも発表した。もう1人がCondoleezza Rice氏。Bush大統領の下で国務長官などを務めたRice氏は、現在スタンフォード大学で政治学教授を務める傍ら、Hewlett-Packard(HP)など大企業の取締役も多数兼任している。

 だが、ユーザーコミュニティからは反発の声が上がった。Rice氏がBush政権下で国連安全保障理事会のメンバー盗聴を支持する姿勢を見せていたことが原因で、DropboxボイコットやHouston氏に反対意見を送ろうと呼びかける「Drop Dropbox」というサイトも立ち上がっている。

 Houston氏はその後、Rice氏の任命についてブログで説明。「Dropboxがこれからグローバル展開するにあたって、Rice氏の国際経験を重視した」と述べている。そしてユーザーのプライバシーと権利についてのコミットは変わらないと強調した。

 WiredはDropboxが政府によるユーザー情報開示要請について透明性を実現するとしている点を認めながらも「クラウドコンピューティングとストレージの競争は激しく、“見た目”は重要だ」「Dropboxや競合が売っているのは、最終的には信頼だ。顧客は単にギガバイトを購入しているのではない」と言う。実際、政治的な意見が与える影響は大きい。つい先日も、MozillaのCEOに就任したBrendan Eich氏が、同性婚を支持していた過去からボイコットを含む大規模な反対運動が起こり、最終的にCEOの退任に追い込まれた。

 Wiredは、Rice氏の任命を快く思わなかったとしても、わざわざDropboxに保存しているファイルをほかのサービスに移動させるユーザーは少ないのではないかとしながら、「信頼はデリケートなプロセスだ」とクギを刺している。

 これらの人事はIPOに向けた動きと見られているが、当のHouston氏はFinancial Timesに対し「(IPOよりも)Carouselなどの製品のことを考えるのに多くの時間を割いている」とコメントし、IPOについては明言を避けた。

 Dropboxは今年に入って3億5000万ドルを調達しているが、その際の評価額は100億ドルに達している。

岡田陽子=Infostand