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成層圏の戦い Googleの気球とFacebookの無人機

世界をつなぐという目標

 買収交渉が報じられる前の2月24日、スペイン・バルセロナで開催されたモバイル関連展示Mobile World Congress(MWC)のキーノートスピーチで、FacebookのMark Zuckerberg CEOは「次の10年で、25億から30億の人がインターネットに接続できるようにしたい」と発言した。WhatsAppの買収から、同氏が力を入れているインターネット普及促進団体Internet.orgに話が及んだときである。

 Internet.orgは、「現在インターネットアクセスがない世界の残り3分の2にインターネットを提供する」ことを目標としており、Facebookのほかに、Nokia、Ericsson、Qualcomm、Samsung、Opera、ファブレスメーカーのMediaTekが設立メンバーとなって昨年8月に立ち上げた。「手頃な料金」「効率」「ビジネスモデル」という課題をクリアしながら、インターネットアクセスの拡大を図るとしている。

 Zuckerberg氏は「私がFacebookを始めたのは、いつの日か、誰かが世界の全ての人をつなぐというビジョンを信じているからだ」と熱く語った。

 一方、Googleも昨年6月、同様の目的で、気球を使ってインターネット網を構築する「Project Loon」を発表している。実験的プロジェクトを推進するSergey Brin氏直轄の「Google X」が担当。ニュージーランドで試験を実施した後、範囲を拡大する計画だ。こちらも成層圏に中継器をとばし、空からインターネット接続を提供する。新興国が多い南半球に絞っており、南緯40度線を中心にインターネット接続を提供することを目指す。

 無人機と気球という異なるアプローチだが、「空からインターネットを降らせて」、地上の基地局を整備するのが困難な地域に、安価なサービスを提供する、というのが共通の目標だ。中継器が空中を漂いながら地上の端末とデータ通信を行うのだ。

 The Vergeは両社のソリューションの比較をまとめている(Titanは次世代機Solara60のデータ)。

Google LoonSolara60
寿命100日以上1826日以上
大きさ幅15m、高さ12m幅37m、長さ15m
最大積載量約10km約113km
高度20km~27km20km
通信速度3G(0.1Gbps以上)1Gbps
1機あたりカバーエリア1256平方km2637平方km

 1機あたりのパフォーマンスでは無人機が大きく上回るが、単価では気球の方が安いということになるだろう。

(行宮 翔太=Infostand)