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身売りから一転、CEO入れ替えで新方向を探るBlackBerry (Sybaseの復活劇を再現?)

Sybaseの復活劇を再現?

 さてChen会長の下、これからのBlackBerryはどうなるのだろう? 二転三転の後だけあって、厳しい目も少なくない。Reutersは、Fairfaxの方針に投資家が懐疑的になっていると伝えた。ある投資企業は「投資家の多くが失望した」とコメントしている。身売り撤回の発表後、同社の株価は約12%下落した。

 BBCは「また下方スパイラルに戻った。10億ドルで時間を買ったようなものだ。マイナスの見方は今後も続くだろう」というBGC Partnersのコメントを紹介する。Bloombergは、別の金融機関の「可能性はどんど小さくなっており、少ない選択肢を検討することになりそうだ」との見解を引用している。

 一方で、別のBloombergの記事は「BlackBerryの将来が明るくなった」と好意的だ。楽観論の根拠は、Chen氏の会長就任だ。Chen氏はSybaseのCEOに1998年に就任。データベース分野のパイオニア的存在でありながら、OracleやMicrosoftにシェアを奪われていった同社を、エンタープライズモバイルというニッチ分野で復活させた経験がある。Sybaseはその後、2010年に58億ドルでSAPに買収されている。

 Chen氏はReutersに対し、「長期的に持続可能な事業を構築する材料はちゃんとそろっている」「前にもやったことだ。同じ状況を以前に見ている」と語った。また、「やることはたくさんある。課題はたくさんあるが、そうでなければ(会長職に)関心を持たなかった」と述べ、立て直しに熱意を燃やしている様子だ。

 業界紙Fierce Wirelessは、「今後6-12カ月で新しい方向が見えてくると期待している。新しい経営陣が主導し、新しい優先事業と方向性を定めるだろう」との業界アナリストJack Gold氏の見解を紹介する。「Chen氏はしっかりしたCEOであり、BlackBerryに新しい成長をもたらすか、現在よりも価値の高い状態で売却できるようにポジショニングを行うだろう」「とてもポジティブな動きと見ている。新しい経営陣が立て直しという使命を持って入っており、(投資受け入れにより)余裕もある」とGold氏はBlackBerryの将来に前向きだ。

 一方The Registerは、SybaseとBlackBerryを対比させ、状況(データベース市場における当時のSybaseとスマートフォン市場における現在のBlackBerry)は似ているとしながらも、モバイルの“ニッチ”がどこになるのかが不明であり、モバイル業界全体の動きが非常に高速であるという2つの点から、Chen氏がどうBlackBerryを立て直すのかに疑問符を残した。eWeekはChen氏の手腕に尊敬の念を示しつつ、安全性を重視する企業や政府から得てきた信頼の回復が最初の肝だと分析する。

 BlackBerryと同じようにiPhone登場前に市場を制していたNokiaはMicrosoftへの売却という道を選んだ。Chen氏の下でBlackBerryがどうやって生き残るのかが注目される。

岡田陽子=Infostand