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共和党新政権で米国のAI政策が大転換 Elon Musk氏がキーマンに

「No Woke AI」

 保守層が、Biden政権のAi政策を批判する際、「過度な規制」とともに、「No Woke AI」という言葉がよく使われる。「woke(目覚めた)」はジェンダー・人種・社会正義に関する配慮しようという進歩的な立場を言う。「No Woke AI」はこれを「リベラルな価値観の押しつけ」として拒否するスローガンだ。

 今年2月、GoogleのGeminiが「ナチス時代のドイツ軍の制服を着た黒人やアジア人の画像」や「米国建国を率いた黒人政治家」を生成したことが報じられた。LLMの訓練の際、多様性に配慮した結果、歴史、事実と異なる不自然な出力を生んだ例だが、これが「目覚めたAI」のひとつとされている。共和党にはAIの安全対策を「検閲」と捉える者も多い。

 「Biden政権が、AIを武器化して、アメリカ市民を標的にしている」というTrump氏の発言は、この文脈から理解できる。

 そこで、新政権でAI規制がどのようになるのか――が焦点となる。

 そんな中で、がぜん注目を集めているのが、Trump氏を支援し、新政権で大きな影響力を持つElon Musk氏だ。

 Musk氏は、AI開発の一時停止を求める公開書簡への署名や、カリフォルニア州のAI安全法案「SB 1047」(知事の拒否権発動で廃案)への支持など、以前からAIへの規制を支持してきた。そのMusk氏が政府効率化組織(DoGE)の共同責任者になる。連邦組織に大ナタを振るい、規制撤廃の音頭を取ることになるのだが、本人はどう考えているのだろう。

 保守派政治コメンテーターとして知られるTucker Carlson氏の10月のインタビューで、Musk氏は「AIの安全担当に任命してもらわないのか」と尋ねられ、こう答えている。

 「私は、少なくともAI企業が何をしているのかを把握する何らかの規制機関を設けることを推進すると思う。また、たとえ規制や規則がなくても、警鐘を鳴らすことができる」。そして、「私はSam Altmanを信用していない」とも述べている。

 OpenAIのようなAI大手やビッグテックには、いずれにしても厳しい時代が迫っているようだ。