Infostand海外ITトピックス

大規模人員削減続く テクノロジー企業に転換期か

景気後退の前兆?

 この人員削減が、大きな景気後退の前兆ではないかとの危惧もある。ハイテク企業は「S&P500」の時価総額の4分の1以上を占め、米経済を牽引してきた。その失速が大きな景気後退につながるのではないかの見方だ。

 過去の例では、2008年、2009年に吹き荒れたドットコム不況がある。この時は2年間で30万人近い人員削減が行われた。しかし、今年のハイテク企業のレイオフ数は、まだ、そのレベルにはほど遠いとMarketWatchは言う。

 この世界を長く見てきた元Wired編集主幹のStephen Levy氏は、ドットコム不況との違いをこう述べている。「ドットコムバブル崩壊は、まず顧客や売り上げのない企業が中心だった。いまレイオフしているAmazonや、採用凍結をしているGoogleやAppleのような企業は何百万もの顧客を持ち、利益を上げている」

 Goldman Sachsも最近のレポートで、これが大きな景気後退のサインとは限らないとの見解を示している。理由として「ハイテク部門の雇用は労働市場の小さな部分にすぎない」「技術職の求人はパンデミック前の水準を上回っており、次の仕事に就きやすい」「ハイテク企業の解雇は、歴史的に労働市場全体の悪化の先行指標にはなっていない」という3点を挙げている。

 一方、政治の世界からは冷ややかな見方も出ている。ワシントンDCの政治専門紙、The Hillは、GAFAに代表されるビッグテックが「いったん立ち止まる良い機会になる」と論評している。

 同紙は「シリコンバレーは連邦政府が無能だと信じており、ワシントンの決まり事に従ってこなかった。啓発的エリート主義、独りよがりの自己満足、不当な例外扱いといった姿勢が、長らくワシントンに蔓延していた」と述べ、これまでのビッグテックが傲慢だったと批判。「しかし、それも終焉を迎えつつある」と言う。

 ビッグテックには、ますます厳しい時期かもしれない。