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FTCのMeta買収差止訴訟 動き出したKhan氏の逆襲

“GAFAの天敵” Rina Khan委員長

 パキスタン系移民のKhan氏はBaiden民主党政権で指名され、FTC史上最年少の32歳で委員長となった。巨大テック企業の批判者として知られ、イエール大在学中に著した「Amazonのアンチトラスト・パラドックス」という論文で有名になった。

 この論文はAmazonのビジネスを詳細に分析して、同社が「利益を犠牲にしても積極的に成長を追求して支配力を築き、多くの関連事業を統合」することで、「多くのビジネスが依存するインターネット商取引の不可欠なインフラになった」と分析している。

 Khan氏は、このような巨大プラットフォーマー企業に対する独禁政策は、従来の枠組みでは対応できず、「競争過程と市場構造の維持を重視」するものでなければならないと主張した。

 テック業界のビジネスエコシステムは、巨大企業が小規模な新興企業を買収することで成り立っているといわれる。Khan氏は、この合併・買収にメスを入れようとしているのだ。

 Khan氏の委員長就任後、MetaとAmazonの両社は、「過去の同氏の主張から公正な立場で判断できない」として、同氏に担当させないことを求める「忌避」を申し立てていた。今回の訴訟は、Khan氏が逆襲に打って出たかっこうだ。

 伝統的な米国独禁法は「消費者利益の増進」が基本で、正当な企業活動の結果であれば、独占状態自体は違法とはみなさない。また、「優越的地位の濫用」についても、他国の独禁法ほど厳しくない。

 このため、無料のサービスを提供して巨大になったテクノロジー企業をどう規制するか、規制当局は模索してきた。

 実際、FTCはKhan氏の就任前(2020年12月)にもMetaを訴えている。「何年にもわたる反競争的行為」によって、ソーシャルメディア市場を支配したという内容で、その代表的な反競争的行為がInstagram(2012年)とWhatsApp(2014年)の買収だと主張している。

 市場を支配した現在に至る過程の行為を問うもので、FTCが勝てば、MetaはInstagramとWhatsAppの売却を迫られる。

 だが、今回のMeta訴訟は、さらにアグレッシブだ。Khan氏は、Metaがメタバースを独占することを防ぐため、まだ市場が確立してない段階で手を打つという手に出た。

 New York Timesは、この訴訟を「未来の技術独占の阻止」と表現している。「訴訟の核心は、どの企業が最も大きな力を握っているかが明確になるほど市場が成熟するのを待たず、規制当局は反トラスト法を適用できるという考え方だ」(New York Times)