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データスクレイピングに適法判断 LinkedIn/hiQ訴訟

 Webサイトからデータを収集するスクレイピングは“データの時代”に欠かせない手法だ。そのスクレイピングが「CFAA」(米コンピューター詐欺と濫用に関する法律)違反であると主張するLinkedInと、スクレイピングを行っていた雇用分析企業hiQ Labsが争っていた訴訟の判決が下った。結論は「違反しない」で、LinkedInの敗訴となった。

公開情報のデータスクレイピングは適法

 発端は2017年5月、LinkedInが、自社サービスへのhiQのアクセスを遮断したことだった。LinkedInはあわせて、hiQの行為がユーザー規約違反であるとしてスクレイピングの停止通告書を送った。

 hiQは、LinkedInユーザーのプロフィールをスクレイピングして分析するビジネスを展開している。その結果を法人顧客に提供して、従業員が転職する可能性を推測できるサービスだ。

 LinkedIn側は、スクレイピングの行為がCFAAや、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)、カリフォルニア州法などに抵触すると考えた。特に、ハッキングやサイバー攻撃などを禁じて「対ハッキング法」とも呼ばれるCFAAに違反するものだと主張した。

 対するhiQは、スクレイピングは適法であり、遮断は事業存続の危機をもたらすと主張。アクセス遮断の解除を求めて連邦地裁に提訴した。

 一審の連邦地裁判決はhiQ側の勝訴で、LinkedInに対して、hiQへのアクセス制限を解除するよう仮処分命令を出した。

 理由として、hiQが取得したデータは誰もがアクセスできる公開プロフィールであること。また、アクセス遮断でhiQが受ける事業面の損害が大きいのに対し、LinkedInがスクレイピングで被る被害が小さいことなども挙げられた。

 LinkedIn側は、これを不服として控訴したが、2019年の控訴裁判決は一審を支持した。訴訟はさらにLinkedInの上訴で最高裁まで上がったあと、差し戻された。そうして今回の連邦控訴裁判決が出たという経緯だ。

 判決は、プライバシーを争点にしようとするLinkedInの主張も退けた。プロフィールを公開すると選択したLinkedInユーザーが、公開した情報に対してプライバシー保護を期待しているという証拠はほとんどない、とした。

 結局、LinkedInは全敗のままだ。