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“プライバシーの守護者”Apple だが全世界ではない

中国ではPrivate Relayは提供しない

 Appleは「ユーザーのプライバシーを保護し、自らの情報に透明性とコントロールを提供することが重要だと信じている」(ソフトウェアエンジニアリング担当シニアバイスプレジデント、Craig Federighi氏)と主張する。

 しかし、その言葉は全世界には適用しないようだ。Appleの発表の翌日、Reutersは「Private Relayは中国では提供されない」と報じた。「規制上の理由のため」(Appleの説明)というが、Reutersは「中国との一連の妥協の最新版」と批評している。こうした“妥協”はつい先月にも報じられたばかりだ。

 New York Timesは5月17日付で、貴州省貴州市に建設中のiCloud向けデータセンターに同国内の顧客データを格納し、当局のアクセスが可能になる取り決めを結んだと伝えた。

 Appleの社内文書や計17人の(元・現)社員の証言を積み重ねた調査報道で、州政府所有企業のサーバーにデータを保管。同社とデータを共有する契約を結ぶことで、当局のアクセスも可能になるという。

 また、暗号データを復号するデジタル鍵を同じサーバーに保管するため、当局の手に渡る可能性もあるという。デジタル鍵は通常、別の場所に保管される。

 中国はAppleにとって売上の15%を占める重要な市場だ。New York Timesは、Foxconn生産拠点などAppleと中国の関係を示しながら、「20年以上にわたって、Appleは世界で最も価値のある企業を中国市場の上で作った」と指摘する。

 これに対し、Apple側は、報道は不正確な情報に基づいているとして全面否定している。

 今回の新機能Private Relayは、中国だけでなく、ベラルーシ、コロンビア、エジプト、カザフスタン、南アフリカなど数カ国で提供しないという。Appleの強力なプライバシー方針は“ダブルスタンダード”という批判も受けそうだ。