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“プライバシーの守護者”Apple だが全世界ではない

広告業界の悲鳴も

 Appleがプライバシーを前面に打ち出すのは、初めてはない。Tim Cook氏がCEOに就任して以降、プライバシーは同社の重要なトピックとなってきた。

 既にSafariでは、サードパーティクッキーを制御するITP(Intelligent Tracking Prevention)という追跡防止技術を導入しており、iPhoneなどiOS端末ではユーザーの承諾なしに端末識別IDを取得できない仕組みを用意している。

 サードパーティクッキーなどの仕組み・技術は、デジタルマーケティングでは重要だ。広告主はユーザーのサイト訪問履歴情報などから、ターゲティング広告を展開してきた。

 その広告を基盤に大きな収益を上げる他の巨大プラットフォーマーとAppleとの間では、対立する場面も見られる。Cook氏がFacebookの広告ビジネスモデルを非難すれば、FacebookのCEO、Mark Zuckerberg氏が、Appleの支配的な振る舞いを非難するといった具合だ。

 Appleは、モバイル、デスクトップともに最大のプラットフォームではないが、その影響力は大きい。今回のIPアドレス秘匿の発表に対して、「企業にとってIPの遮断は非常に大きな展開で、ユーザー情報中心のプロファイリングの終焉を決定づけそうだ」とデジタルマーケティングコンサルのEric Seufert氏はWall Street Journalに語っている。

 広告業界からは、今後を懸念する声が出ている、とWall Street Journalは伝えている。例えば、「Private Relayは広告エコシステムにより大きなダメージを与える」(モバイル広告測定Branch MetricsのAlex Austin氏)、「企業は自社の電子メール(を用いたマーケティング)が成功しているかを知ることが難しくなる」「勝者はAppleだけだ」(デジタル広告のTinuitiの最高戦略責任者、Niii Ahene氏)といったものだ。

 2021年の電子メールマーケティングの市場規模は「前年比10%増の5億3560万ドル」(eMarketer予想)という巨大なものだ。