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“プライバシーの守護者”Apple だが全世界ではない

 Appleがプライバシー保護の強化を宣言している。開発者イベント「WWDC21」では、“VPN的”な新機能などプライバシー関連が主役になった。この分野では、プラットフォーマー他社は及び腰だが、違いを見せつけた格好だ。一方で、中国などいくつかの国では、この機能を提供しないといった“世渡り上手”な対応も指摘されている。

プライバシー戦略は製品の一部に

 6月7日にオンラインで開催された「WWDC(Worldwide Developers Conference)21」で、Appleは最新の「iOS 15」「MacOS Monterey」を発表。コミュニケーションサービス「FaceTime」のAndroidなど他プラットフォームへの対応も明らかにした。これら多くの発表の中で、プライバシー関連機能の多さが目立っている。

 FaceTimeにはエンドツーエンドでの暗号化。メールクライアントの「Mail」では、メールの開示に関する情報を送信者が受け取るトラッキングピクセルの無効化機能が追加された。クラウドサービス「iCloud」には、新たに有料サービス「iCloud+」が発表された。これまで容量5GB超は有料だったが、新サービスは、さらにプライバシー保護などの拡張機能もパッケージしたものとなる。

 その機能拡張の1つが、「Private Relay」だ。ユーザーのIPアドレスをサービス側から秘匿して、広告主やサードパーティが履歴を追跡できなくする。正確にはVPNではない。WebトラフィックをApple管理のサーバーに送ってIPアドレス情報を切り離し、サードパーティが管理する第二のサーバーで一時的なIPアドレスを割り当てて目的のWebサイトに送るという仕組みだ。

 「Appleはプライバシーをマーケティングの売り文句ではなく、ビジネス上の強みにした。プライバシー戦略は製品の一部となっている」とCNBCは評している。さらに「データをローカル処理することでプライバシーを強化できるだけでなく、開発者の観点では高速さにもつながる」と述べ、クラウドサービスを駆使してユーザー体験を作りあげるGoogle Androidのアプローチと対比させた。