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“企業向けクラウド端末”の「HoloLens2」 その向こうにある世界

 MicrosoftのARヘッドセット「HoloLens」が4年ぶりにモデルチェンジし、多くの改良点でメディアをうならせた。AR分野は、コンピューター体験を変革する技術として期待が高まっており、Magic Leapなど多くの企業が製品を投入する段階に来ている。だが、Microsoftは企業にターゲットを絞ってビジネス戦略を進めているようだ。その先に見ているものは――。

ベールを脱いだ「HoloLens2」

 HoloLens2はモバイル関連で最大の国際見本市Mobile World Congress(MWC)で発表され、前モデルから大きく進化した。ホログラムが高精細になり、「窓を通してのぞくよう」と評判の悪かった視野角も約2倍に改善した。

 操作面でも、手の指までAIで認識しながら、オブジェクトをつまむことまで可能になった。ほかにも、視線追跡センサーの搭載、虹彩認証によるログインなどが盛り込まれている。本体も軽量化した上に、眼鏡ユーザーにも使いやすいようディスプレイ部を跳ね上げ式にするなど細かい配慮もなされている。

 ARヘッドセット/グラスは、“次のユーザーインターフェイス”として、期待を集めている。HoloLensのように位置トラッキング機能を備え、現実世界の上に“あたかもそこにあるように”ホログラムのオブジェクトを表示するMR(複合現実)タイプはこれからの製品だ。

 一番のライバルであるMagic Leapの「Magic Leap One」は昨年8月に開発者向け版をリリースした。価格は2295ドルだが、一般向けとなれば、もう少し安価になりそうだ。

 後を追う新興企業も多い。今年1月のCESでは、中国のNrealがサングラスのようなコンパクトなARグラス「Nreal Light」を、やはり中国のRealMaxは100度という視野角を持つARヘッドセット「Realmax Qian」を披露した。それぞれ1000ドル程度で販売する予定だという。「1000ドル」はコンシューマー向け製品の価格の“スイートスポット”でもある。

 だがHoloLens2は、3500ドル(単体)で、初代から1500ドルの大幅値下げをしたものの、なお高価だ。Microsoftは、あくまで企業向けの製品と位置づけ、他のプレーヤーと同じ土俵で勝負する気はないようだ。

 MWCのデモには、ゲームや家庭用のアプリもなかった。MR事業のゼネラルマネージャー、Lorraine Bardeen氏は「今すぐ、新しいエンターテインメントが熱望されているとは聞いていない」「われわれは『ハイプ』には投資しない」とWall Street Journalに語っている。