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脆弱性騒動が問いかけるもの 今求められるCPUとは?

修正がクラウドに影響?

 しかし、これでめでたしというわけにはいかない。なぜ、このような根本的な部分の欠陥が長く続いていたのかは明らかになっていないのだ。

 “Linuxの父”ことLinux Torvalds氏はLinuxカーネルのメーリングリストで早々に怒りを爆発させた。4日付のBusiness Insiderによると、Torvalds氏は3日の投稿で、「なんで、(カーネルメモリへのアクセスが)全部、設定オプションなしでできてしまうのか?」と設計を非難。「Intelは『これまでも、これからもクソ(shit)のような製品を売りつけて、何も修正しない』と言うつもりなのか?」と不満をぶちまけている。

 また、回避策によってユーザーに影響が出る可能性がある。The Registerは、対策を施したデータベース「PostgreSQL」の速度が、17%~23%低下したとの報告を紹介した。他メディアも「30%程度の速度低下」の可能性を伝えている。Intelは、こうした影響は「ワークロードに依存」すると説明している。では、どのようなシステムに影響するのだろうか――。

 Morningstarのアナリスト、Abhinav Davuluri氏は「速度低下によって最も顕著に影響を受けるアプリケーションやワークロードは、さまざまな場所から大量の情報やデータのシステムコールを受けるものだろう」とTheStreet.comにコメントしている。つまりクラウドということだ。そして、パフォーマンスの低下はクラウドのユーザーに直接影響する。ワークロードの実行に時間がかかると、時間単位で課金されるサービスの場合、コストが上昇することにつながるからだ。

 今回の脆弱性はCPU設計の深い部分から発したものだという。ZDNetのシニア・テクノロジー・エディタJason Perlow氏は、これを「DNA」になぞらえる。「この場合、DNAで病気を持っているのは、Intelのx86アーキテクチャだ。これは、かつてのパソコン、データセンターサーバ、組み込みシステムで支配的なシステムアーキテクチャだ」と解説する。そして、こう指摘する。「x86アーキテクチャの延命のため、われわれは何年も何十年も、あらゆる種類の治療を行ってきた」

 Perlow氏は、かつてSun Microsystemsが「OpenSPARC」でチップ技術をオープンソース化したことを挙げながら、今こそ、クラウド、モバイル、IoTのために、OpenSPARCのような、ライセンスやIP(知的財産権)に縛られず、誰でも製造・利用できるマイクロプロセッサが必要だと主張している。

 そして、今回の脆弱性問題は、それを考える機会になるというのだ。