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AWSがビデオ会議サービス参入 「Chime」の狙いは

Cisco、Microsoft、Googleに対抗

 ChimeはAWSが一から開発したのではなく、同社が2016年に買収したBiba Systemsのサービスをベースにしたものだ。当時、TechCrunchはBibaを「ビジネスユーザー向けの動画メッセージアプリを開発・運用するベンチャー」と報じていた。この買収は11月に報じられ、Bibaが所有していたビデオ会議とオーディオストリーミングに関する特許もAmazonに移管されていたことなどから、AWSの年次イベント「re:Invent」でビデオ会議も発表するとみられていた。

 発表は2カ月遅れたものの、予想通りとなった形だ。しかし、この分野は、Ciscoの「WebEx」、Microsoftの「Skype for Business」(旧Lync)、Google「Hangout」の3社の存在が大きく、競合の激しい市場だ。

 そのためか、Chimeが優位に戦えるとみるメディアは少ない。Telecoms.comは、Chimeが参加情報の把握しやすさ、遅れている参加予定者への通知機能など、これまでのビデオ会議よりも、品質、使い勝手、効率の面で改善する努力を認めつつも、「先行3社はすでに地位を確立しており、(AWSは)単に“出遅れた”以上の開きがある」と厳しい。

 またビジネスユーザーの間で、ビデオ会議をすることを「WebExする?」と動詞化されていることを紹介しながら、「既存製品名が同義になっている分野に参入することは、かなりタフな挑戦になる」と予想した。

 TechCrunchはChimeローンチを報じた中で、バーチャルミーティングの分野でGoToMeetingなどとも戦うことになると述べている。この分野はCitrix SystemsのGoToファミリを取得したLogMeInも展開している。

 Business Journalは「この市場は競合が激しく、いかに競合優位を保つかが問われる」(Gartnerのアナリスト、Bern Elliot氏)という見解を紹介する。Elliot氏は、AWSのChimeはライバルにとって「短期的には、直接脅威にはならないだろう」と予想している。

 Chimeには細かな差異はあるものの先行サービスと機能はほぼ同等で、価格も決して安くはない。MicrosoftはSkype for Businessを含むOffice 365 Business Essentialsを1ユーザー月額5ドル、Business Premiumを同12.5ドルで提供している。

 とすれば、AWSの強みは、IaaSなどパブリッククラウドで構築したシェアだ。その潜在力に注目する者もいる。Business Journalは「Amazonは書店、小売りなど既存業界の破壊によって価値を高めてきた企業」とし、次はビデオ会議市場を崩壊させるかもしれないと述べている。