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「市民データサイエンティスト」が活躍? 専門家でなくてもデータ分析

市民データサイエンティストのメリットとリスク

 データサイエンティストは、ビッグデータなどとともに脚光を浴びた新しい職業だ。集まってきた膨大なデータの山から、ビジネスにとって意味ある洞察を得る専門家であり、最先端のプロフェッショナルとされている。

 だが、データのモデリングなど統計学や数学の知識、それにITやビジネスの知識が必要されること、また新しいカテゴリであることから人材探しは難しく、圧倒的な売り手市場と言われている。米国の場合、データサイエンティストの平均報酬は11万9000ドル(約1365万円)にのぼり、雇いたくても人がいない、報酬面のハードルも高いという状況だ。

 それに対して、市民データサイエンティストは、データ分析を本業とはしない人たちだ。Gartnerのアナリストでリサーチ担当バイスプレジデントのAlexander Linden氏は、2015年早々、この市民データサイエンティストの登場を予想していた。

  Linden氏は予想にあたって、「データ分析のニーズと高コストなデータサイエンティストとのギャップ」と「情報を使いこなす情報ワーカーが簡単に利用できるツールの登場」という2つの要素がそろうことが推進要因だと考えた。

 2016年初め、「2016年は市民データサイエンティストの年になる」として、この話題を紹介したTech Republicは、「ビッグデータと分析アプリケーションが中央から企業の末端まで行きわたるIoTも、市民データサイエンティストを促進する」とのDellのビッグデータ分析ソリューション事業Dell Statisticaで最高リサーチ責任者のShawn Rogers氏のコメントを紹介している。

 その一方、(1)これらの従業員はデータ分析の知識がほとんどない、(2)データ関連の規制順守、セキュリティやプライバシー関連の要件に違反するリスクがある、(3)他の事業部と対抗するような戦略を編み出す可能性がある――、というマイナス要因(トレードオフ)を挙げていた。とはいえ全体としては、データの活用が進むメリットの方が多いと結論づけている。

 だが、異論もある。データサイエンスコンサルティングのKDnuggetsは昨年4月のComputerworldに、「“市民歯科医”と言われたって人は信じないだろう」とコメント。トレーニングを受けていない者がデータサイエンティストを名乗ることは“災難”につながりかねないと主張した。