クラウド特捜部
Windows AzureからMicrosoft Azureへ
(2014/5/15 06:00)
PaaS部分の機能拡張
PaaSのWeb機能の拡張に関しては、まず、フロントに使用されるWebサーバーのオートスケール機能がサポートされた。これにより、アクセスするユーザー数がバーストするなど、負荷が大きくなれば自動的にWebサーバーを新たに起動して、システム全体で負荷をコントロールできる。
ステージング機能に関しても機能が拡張された。新たに開発したWebアプリケーションに変更する場合、システムを止めずにプロダクションとステージングを切り替えられる。
このほかの機能強化としては、キューを使用したWebJobsがサポートされ、また、Oracleとの提携により、Java、Tomcat、Jettyなどのサポートが行われた。現在、Javaは32ビット版が利用されているが、コマンドラインから64ビット版に変更することができる(将来的には、64ビット版がGUIから選択できるようになる)。JavaやTomcat、Jettyは、Microsoft Azureのギャラリーから提供されているが、ユーザー自身が異なるバージョンのJavaなどをアップロードして使用することも可能だ。
現状では、JavaアプリケーションはHTTPトラフィックのみをリッスンするため、JMXやJMSなどのメッセージングや、JDQPやJDIといったリモートデバッグ機能は使用できない。将来的には、これらの機能が利用できるようにしていく方針だ。
また、1カ所のMicrosoft Azureデータセンターにトラフィックを集めるのではなく、複数リージョンにトラフィックを分散させて利用するトラフィックマネージャー機能が強化された。これにより、各リージョンからのアクセスは、それぞれのリージョンにあるサーバーに振り分けられる。
さらに、特定のリージョンのデータセンターに事故や天災(地震など)が起こった場合、ほかのリージョンのデータセンターにトラフィックを振り分けるといったディザスタリカバリ(DR)も設定できる。
.NET関連では、ASP.NET MVC 5.1、ASP.NET Web API 2.1、ASP.NET Identity 2.0、ASP.NET Webpasge 3.1などへのアップデートが行われている。
モバイル対応の機能強化としては、Windows Phoneだけでなく、iOSやAndroid対応機能が強化された。例えば、Azure Active Directory(AD)でiOSとAndroid(AndroidはSDKを提供)がサポートされたことで、iPhoneやiPad、Androidスマホなどでもシングルサインオン(SSO)が使用できるようになった。これにより、Microsoft Azureのクラウドサービスをさまざまなデバイスで利用しやすくなっている。
こういった流れは、今後加速していくだろう。実際、iPad用のOfficeソフトがリリースされたことで、iPadでのデータの編集・作成などが行えるようになった(iPhoneやAndroidスマホなどは、表示機能が中心。あまり編集機能は充実していない)。
また、オンプレミスに設置されたADとAzure ADの連携も双方向になった。これにより、Azure AD側で更新作業を行っても、オンプレミスのADに反映されるようになる。今までのように、オンプレミスのADをリードオンリーにしたADがMicrosoft Azureに搭載されている、という状況ではなく、本格的なADがクラウドに搭載されたといえるだろう。
もう1つ大きい機能強化としては、Office 365の各種機能をAPIとして提供していくことが挙げられる。つまり、Office365の各種機能がPaaSとして提供される。
この機能を利用すれば、ドキュメントを作成してWordフォーマットにしたり、データをExcelに入れ、グラフ化して表示したりすることができる。今までは、開発者がいろいろな機能を作り込まなければならなかったが、Office 365のAPIにより、開発者はOffice 365に用意されている機能を利用できるため、無駄なコードを書かなくてもよくなる。また、Office 365が持つ高い表現力を、自社のクラウドアプリケーションで利用することができる。