クラウド特捜部

プレーヤーがそろい表舞台に立つOpenStack

OpenStackの今後は?

 OpenStack自体の今後のロードマップとしては、2014年の4月ごろにバージョン9となるIcehouseをリリースする予定にしている。さらに、2014年10月ごろにはバージョン10となるJunoがリリース予定。2014年の11月には、バージョン11となるKを頭文字とするバージョンのDesign Summitが計画されている。

 Icehouseでは、Database Service(Trove)、BareMetal(Ironic)、Queue Service(Marconi)、Data Processing(Savannah)などのOpenStackプロジェクトの機能を取り込もうと計画されている。

 また、多くのオープンソースプロジェクトの成果を取り込んでいくことも考えているようだ。例えば、SDN分野におけるOpenDaylightプロジェクトなどの成果をOpenStackに組み込んでいくと見られる。

 OpenStackプロジェクトの範囲には入らないが、オープンソースのPaaSプロジェクトも、OpenStackをベースにして、PaaSが構築できるようにしていく考えだ。これには、VMwareのCloud Foundry、Red HatのOpenShiftなどがある。

 なお、2012年の末ごろから、OpenStackを採用したパブリック/プライベートクラウドの構築が進んでいる。2014年3月に開催されたOpenStack Days Tokyo 2014では、ソーシャルゲームのグリーが、インフラとしてOpenStackを採用したり、いくつかのパブリッククラウドで、OpenStackベースのクラウドが運用を始めたりしていることが説明されていた。

 注目されるのは、携帯電話会社などの通信キャリアがOpenStackの採用を検討していることだ。多くの通信キャリアは、音声通話をVoIP化することで、すべてのトラフィックをデジタル化しようと計画しているが、ここにOpenStackを利用することで、フレキシブルかつスケーラブルな通信サービスやクラウドサービスを提供できるのでは、と期待している。

 ただし、本格的に通信キャリアがOpenStackを採用するには、乗り越えるべきハードルは高い。特定のサービスでは、OpenStackをインフラとしている例も出てきているので、これからの展開に注目したいところだ。

 なお、FolsomやGrizzlyのリリースあたりから、Red HatやSUSEなどが、自社のディストリビューションとOpenStackの各リリースをベースにして、安定性をより高め、サポートを提供するようになってきた。これにより、多くの企業が本格的にOpenStackの採用を視野に入れ始めたといえる。

 特にRed Hatは、FedraとRed Hat Enterprise Linux(RHEL)の関係のように、Red Hatが無償で提供しているOpenStackディストリビューション「RDO」、RHELとRed Hat OpenStackを組み合わせ、サポートも負荷したたRed Hat Enterprise Linux OpenStack Platformを提供するようになった。

 OpenStackが本格的に企業で利用されるためには、安定的で、サポートがきちんとしたディストリビューションが必要になるだろう。この部分では、Linuxを企業に普及させたRed Hatがキーとなるのではないか。

 また、OpenStackはAWS互換を重視しているため、AWSとは異なるAPIを使用しているクラウドは、互換性を高める作業が必要になるだろう。AWS互換をサポートしているパブリッククラウドも、将来的にはOpenStackベースに移行する可能性もある。

 これだけのポテンシャルがあるOpenStackだが、今後さまざまなオープンソース プロジェクトと連携して、OpenStackに取り込んでいく作業が必要だろう。特に、SDNのOpenDaylight、Software Defined Storageなどの機能は重要になってくるだろう。

 また、オープンソースプロジェクトといってもクラウドのプラットフォームとして利用するため、どれだけ安定した環境が提供できるのかということも重要になってくるだろう。

山本 雅史