イベント

【OpenStack Summit】PayPal、eBay、VMware、NTTのセッションとIntel講演、2014年の重点分野 など

 オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」の国際カンファレンス「OpenStack Summit Hong Kong 2013」が、OpenStack Foundationの主催で11月5日から8日まで香港で開催された。参加者3000名以上と過去最大の規模となった。

 ここでは、基調講演以外のトピックをレポートする。

「ネットワーク技術者やサーバー技術者のコラボレーションが鍵」~PaypalやeBayの担当者が語るOpenStack導入

 ブレイクアウトセッションの1コマとして、PaypalやeBayなどのOpenStack担当者が導入の経緯を話すパネルディスカッション「User Panel: How did you bring OpenStack to your company?」が開かれた。会場の参加者もまじえて、OpenStackの社内導入や社内カルチャーなどについて活発な議論が交わされた。

 パネリストは、PayPal社シニアマネージャのYuriy Brodskiy氏、eBay社クラウドアーキテクトのJC Martin氏、Dreamhost社CEOのSimon Anderson氏、NTTのShintaro Mizuno(水野伸太郎)氏、Aptira社CEOのTristan Goode氏。司会をVMware社のSomik Behera氏が務めた。

左から、PayPal社シニアマネージャのYuriy Brodskiy氏、eBay社クラウドアーキテクトのJC Martin氏、VMware社のSomik Behera氏(司会)、Dreamhost社CEOのSimon Anderson氏、NTTのShintaro Mizuno(水野伸太郎)氏、Aptira社CEOのTristan Goode氏

 まず、OpenStack導入のきっかけについての質問に対して、eBayのMartin氏はハイパーバイザーやネットワークなどをクラウドで統合して自動化することを目的としていたことを述べ、その中でOpenStackはコミュニティやエコシステムなどが発達していると語った。PayPalのBrodskiy氏も同様だと語り、クラウドというより仮想化の技術として採用したと説明した。

 NTTの水野氏は、ソフトを自社開発していたが、メンテナンスコストがかかるので、継続して開発されているオープンソースソフトを探したと語った。また、ホスティングのDreamhostのAnderson氏は、スケーラブルなプラットフォームとしてOpenStackを採用したと説明した。

 クラウドプロバイダーのApteraのBoode氏は、VMwareの“メモリ税”を避けて新しい技術を探してOpenStackを採用したと語り、「破壊的テクノロジーだ」と主張した。VMware社の製品対OpenStackのテーマについては、会場をまじえて両論が飛びかった。

 最も活発に交わされたのが、「最もチャレンジだったことは」というテーマから派生した、社内の技術者のコラボレーションについての議論だ。PayPalのBrodskiy氏がチャレンジだったこととして「技術者のスキルセット」を挙げると、eBayのMartin氏は「OpenStackの前に動かしていた古いシステムでは、ストレージ、ネットワーク、コンピュータでチームが分かれていた」点を紹介。

 DreamhostのAnderson氏も「うちでもネットワークやシステムなどごとに技術者が分かれていた。OpenStackの導入でそれが変化し、スキルセットがクロスするうようになった」と語り、NTTの水野氏も「コンピュータ技術者がプロジェクトを始めたが、ネットワーク技術者が参加して協力することでクオリティが高くなった」と語った。

 会場からは、思いあたる節があるらしき参加者から「ネットワーク技術者とコンピュータ技術者との壁をどう解決したか」という質問も出た。DreamhostのAnderson氏は「1つの答えはない。ひたすら、コミュニケーション、コミュニケーション、コミュニケーションあるのみ。時には戦うことも含めて、互いの違いを相手に理解してもらうことが重要だ」と答えた。また、eBayのMartin氏は、それぞれのチームが互いに、ほかのチームの範囲の技術について興味を持って質問をしてみるようになるとよいだろうと語った。

 ほかの参加者から「歴史の長い企業ではルールが決まっていてスキルセットが固定されてしまう」という質問が投げられると、NTTの水野氏は、トラブル時にそれぞれの分野からメンバーが集まって対策チームが組まれるケースを例に、「若い技術者が境界を越えて情報を共有していく機会が必要」と語った。

(高橋 正和)