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【OpenStack Summit基調講演】最新の採用事例やUbuntu、IBMの取り組みなどを紹介

 オープンソースのクラウド基盤ソフトウェア「OpenStack」の国際カンファレンス「OpenStack Summit 2013」が、OpenStack Foundationの主催で11月5日より香港で開幕した。

 OpenStack Summitは、年に2回開催される。カンファレンスや展示会のほか、年に2回リリースされるOpenStackの次バージョンについて機能追加などを議論する「Design Summit」も併催される、重要なイベントだ。

 OpenStackの開発が速いペースで進み、実用化や実運用が進んできているのに伴い、以前からOpenStack Summitに参加している人によると「かつてはOpenStackの開発関係の割合が高かったが、回を重ねるごとに利用側も増え、今回は導入事例などのビジネス寄りのテーマも目立つ」(長谷川章博氏:株式会社ビットアイル総合研究所/日本OpenStackユーザ会/OpenStack Day Tokyo 2014実行委員会 委員長)という。

OpenStack Summit 2013
朝の参加者登録の様子
会場のAsia World-Expo(香港)

 今回は初の米国外での開催となる。3000名以上の参加者が約500カ国から集まったという。

 初日のオープニングでは香港政府CIOのDaniel Lai氏があいさつ。OpenStackの勢いやコミュニティについて称賛し、クラウドの俊敏性が経済開発につながると語り、香港でもパブリックラウドサービスが次々とローンチして専門家グループによるガイドラインやベストプラクティスの整備も進められているという香港のクラウド事情を紹介した。

オープニングであいさつする香港政府CIOのDaniel Lai氏
オープニングでは、香港のライオンダンス(獅子舞)が披露された

 なお、次回は2014年5月にアトランタで、その次は2014年11月にパリで開催される予定もアナウンスされた。

ストックフォト、映像制作、出張経費管理でのOpenStack採用事例を紹介

 初日の1つ目の基調講演では、OpenStack FoundationのExecutive DirectorであるJonathan Bryce氏が登壇した。

 Bryce氏はOpenStackについて、自動化した形でリソースを管理するものであり、グローバルなコミュニティが開発するオープンな技術であると、あらためて紹介した。そして、IT産業からビジネスまで影響を与えるものであり、新しい貢献者がどんどん登場し、より高レベルのタスクがサポートされるようになったと説明。その結果として、OpenStackを導入する企業の事例を紹介した。

OpenStack FoundationのExecutive DirectorのJonathan Bryce氏
大人数を収容する基調講演会場の様子

 最初の事例としては、ストックフォトサービスのShutterstockのVice PresidentであるChris Fischer氏が登場した。SHutterstockは2003年に設立されて以来、増加するデータを、OpenStackを使ったハイブリッドクラウドで支えてきたという。

 Fischer氏は、「Shutterstockはオープンソースの支持者であり、開発セントリックでDevOpsを重視している」と説明。現在、複数のデータセンターで数千ノードを動かし、週に100回以上デプロイし、毎日1TBのデータを蓄積していると紹介した。また、開発と運用がコードやナレッジを共有することが重要だと語り、「OpenStackが成功したのは、利用者にどう使うかを提示し、いっしょに成長してきたこと」だと述べた。

Shutterstock社Vice PresidentのChris Fischer氏
Shutterstockの紹介。創立10年、オープンソース、DevOps
ハイブリッドクラウドを利用
数千のノードと1日に1TBを蓄積するストレージ

 2つ目の事例としては、映像制作会社DigitalFilm Tree社CTOのGuillaume Aubuchon氏が登場した。Aubuchon氏はまず、映像業界について、ワーナーもディズニーもみなクラウドを使っていると紹介。続いて、OpenStackを“コミュニティのマティーニ”と例え、複数のソフトウェアベンダーやオープンなAPI、クラウド間のID統合などの重要性を説いた。

 また、映像制作のフローとして、OpenStackのプライベートクラウドとRackspaceのパブリッククラウドを組み合わせたハイブリッドクラウドを使い、コンテンツを共有しながら進めると説明し、「クラウドはコラボレーションの手段である」と述べた。

DigitalFilm Tree社CTOのGuillaume Aubuchon氏
「OpenStackは“コミュニティのマティーニ”」
ハイブリッドクラウドを使ってコンテンツを共有しながら映像制作を進める

 3つ目の事例としては、出張経費管理サービスConcurのシニアマネージャーのDan Wilson氏が登場した。領収書の画像の処理と保存がコアにあり、月に1000万点以上の画像を扱うという。そのためにConcurでは、スケーラブルなストレージ技術として、OpenStackのオブジェクトストレージであるSwiftを採用した。

 Wilson氏はSwiftの利点として、スケールさせたときにコストを抑えられる点と、ノードにデータを分散して負荷分散する点、パブリッククラウドと違ってコードがオープンである可視性、グローバルな分散機能が内蔵されている点を挙げた。そして、ディザスターリカバリーのため、SwiftとgeoDNSによってデータを世界中のデータセンターに分散するところを紹介した。

Concur社シニアマネージャーのDan Wilson氏
Concur内部での画像処理
Swiftを選んだ理由
Swiftでデータを世界中のデータセンターに分散

 最後にBryce氏は、「OpenStackは将来的には、IaaSやSaaSといったものではなく、“Useful as a Service”になる必要がある」と述べた。また、「OpenStackコミュニティは、3年で大きなことを達成した。これからも、オープンなコミュニティ、オープンソース、オープンなシステムの力で、OpenStackは成長していく」と語り、「1人1人の貢献が大きな影響を持ち、それが香港に集まった。OpenStack Summitを満喫してください」と参加者に語りかけた。

(高橋 正和)