BYOD推進室

「050 plus」「Web電話帳」で通話を効率化、NTT ComのBYOD戦略

鈴木正彦氏

 企業で導入の進むBYOD。個人の私物端末を業務に使うにはセキュリティなど超えるべきハードルがあるが、そのためのMDMやアプリのコンテナ化といった対策も普及し始めている。一方で「これらは端末のデータをいかに守るかという対策。意外と盲点となっているのが、ケータイやスマートフォンの本来の役割である“通話”の効率化です」と語るのが、NTT Com ボイス&ビデオコミュニケーションサービス部 販売推進部門 オフィスソリューション担当部長の鈴木正彦氏だ。

 同社は“通話”の効率化として、企業向けのスマホ通話アプリ「050 plus W-mode」(2012年11月提供)やオプションサービス「Web電話帳」(2013年10月提供)といったサービスを用意し、BYODを促進するためのソリューションとして提供している。その特徴や狙いについて、鈴木氏に聞いた。

「W-mode」が強みのスマホ電話アプリ

 「050 plus W-mode」は、スマートフォンにビジネス専用の050番号を付与し、低コストでの通話を実現する企業向け電話アプリ。私物のスマホ・ケータイを会社の電話として利用可能にする。

 利用シーンや電波状況に応じて、コスト重視の「IP電話モード」と品質重視の「携帯電話モード」を使い分けられる機能も提供。例えば、社内の連絡用には「IP電話モード」を使い、取引先との連絡など大事な場面では「携帯電話モード」といった活用を想定する。また、音声品質問題がつきまとう「IP電話モード」のみではなく、いざというときに連絡が取れなくならないように、「携帯電話モード」も用意することで他社との差別化を図ろうという狙いだ。

050 plus W-modeの概要

 「無料通話アプリはほかにも出ていますが、特にIP電話/携帯電話モードを使い分けられるこの機能は、他社にはない優位点。ほかにも、IP電話モードの音声品質について“こもり”や“途切れ”などさまざまな症状がありますが、それぞれをチューンナップしながら品質を高めています」(鈴木氏)。

電話帳画面(※「Web電話帳」と連携設定をしている場合)
キーパッド
発信履歴(※「Web電話帳」と連携設定をしている場合)

 050番号以外に、当然だが、通常の090/080番号も利用できる。BYODという意味では、仕事の電話は050番号で、プライベートの電話は090/080番号と使い分けることで、簡単に通話料の公私分計が可能となる。

 「050 plus W-mode」の利用料は、初期費用が1番号あたり1050円、月額費用が1番号あたり525円。050番号利用時の通話料は以下の通り(2014年3月時点)。

IP電話モード携帯電話モード
通話料(発信先別)050番号
(NTT ComなどのIP電話)
無料21円/1分
一般加入電話8.4円/3分21円/1分
携帯電話16.8円/1分31.5円/1分
PHS10.5円/1分
(通話ごとに10.5円加算)
31.5円/1分

クラウドで電話帳を共有「Web電話帳」

 2013年10月には、新機能としてクラウド上でビジネスの電話帳を一元管理する、「050 plus W-mode/050 plus for Biz」のオプション「Web電話帳」をリリースした。

 電話帳をクラウドで一元管理し、そこでメンテナンスするだけで各社員が最新の電話帳を利用できる。電話帳データを組織として“人脈化”できるのがメリットだ。顧客の連絡先や発着信履歴を端末に残さずに利用できるので、端末紛失時の情報漏えいリスクも低減できる。

メニュー画面
社内連絡先一覧

 Web電話帳から発信する場合は、発信先の電話番号を選び「050 plus for Biz発信」を押すことで、「050 plus W-mode」を介して発信。着信時は、Web電話帳サーバーを参照して、着信相手の名前を表示してくれる。

 「今までですと、かけたい相手の連絡先が分からないとき、自分のケータイで会社に電話し、調べてもらってから折り返してもらう、とそんなケースもありました。これだと折り返してもらっている間に電車が来てしまって結局電話できなかったりと、その不便さは誰しもが経験していると思うのです。自分でもWeb電話帳を使うようになって便利さを感じたところですね」(鈴木氏)。

 また「電話帳の登録は管理画面上からファイルによるインポートなどが可能。表示も登録順ではなく、指定の番号順に表示するなど、使いやすさにこだわりました」という。

 「Web電話帳」の利用料(2014年3月時点)は、初期費用が3150円/契約、月額費用が3150円/契約(30IDを含む)。

ユーザー管理画面
共有電話帳管理画面

「通話の効率化」はBYODへの意外な盲点!?

 このほか、2014年3月末にはクラウド型PBX「Arcstar Smart PBX(仮称)」も提供する予定だ。FMC(Fixed Mobile Convergence)機能により、スマホの内線化を実現する。

 スマホの内線化により、BYOD端末での内線電話をはじめ、代表電話へかかってきた電話の端末転送が可能となる。またPBXをクラウド化することで、顧客側でWeb上から転送設定などが可能となり、人事異動や拠点の新設・統廃合など、普通なら工事を必要としていたものも柔軟に対応できるようになる。

 「老朽化したPBXをクラウド化し初期費用・運用費を削減できるほか、スマホ1台に電話を統合することも可能となります。とはいえ、すべてをクラウドに移行するのは難しい場合は、既存のPBXはそのままで、スマホ内線化のみをArcstar Smart PBXで付け足すような使い方もできるようにしています」(鈴木氏)。

Arcstar Smart PBX(仮称)概要

 NTT Comでは、これら「050 plus W-mode」「Web電話帳」「Arcstar Smart PBX(仮称)」で、企業のBYODを積極的に推進する方針だ。

 NTT Com自身も会社支給の携帯電話を順次BYOD化した。その結果年間1億円超ものコスト削減を実現している。コスト削減に貢献したのは、会社が負担する端末台やパケット通信料などの月額基本料が不要になったことに加え、IP電話により通話料を大きく引き下げられたことだ。

 コスト削減とともに、「通話の効率化」という観点でBYODを訴求する。「これまでは端末やデータをどう管理するかといった話題が中心でした。しかし、モバイル端末の主役ともいえるのは“通話機能”です。ベタですが利用頻度も高い“通話”には、実はまだまだ効率化の余地が。盲点のようですが、『050 plus W-mode』のようなサービスを使ってみて初めて分かる便利さがあります」(鈴木氏)。

 「050 plus W-mode」や特に「Web電話帳」はセミナーなどの反響も大きいという。「Web電話帳」に関しては、「問い合わせは業種に偏りなく、大企業が多い。電話帳をクラウド側でのみ保管するといったセキュリティについては、特に大企業の関心が強いため」とのことだが、「BYODを導入するのは中小企業の方が多い印象。導入フェーズはこれからの所も多いので、NTT Comの“ボイスクラウド”として広く訴求していきます」という。

 “ボイスクラウド”としては、「Arcstar Smart PBX(仮称)」以降も、コンタクトセンターの機能をクラウド化するサービスの提供を予定している。これらを働き方を変える発端とし、「スマートな業務改革を支援します」としている。

(川島 弘之)