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AIデータセンターに求められる新しいパワーアーキテクチャとは

ローム、デルタ電子が最新動向を紹介

AIデータセンターの課題は「電気が足りない」

 ローム株式会社は7月28日、AIサーバー・データセンター市場の最新動向と省電力化に向けたソリューションに関するメディア向けセミナーを開催した。セミナー前半では、デルタ電子株式会社の華健豪氏(代表取締役社長)が、AIおよびデータセンター関連の市場概況について説明したので、その内容の一部を紹介する。

 AIは、機械学習から深層学習、生成AIへと進化し、処理性能の向上とともに活用領域を急速に拡大している。この動きに不可欠なのが電力だが、2025年時点で全世界のAIデータセンター向け電力は約112GW、2030年までにそれが110GWになると予測されている(2026 Global Data Center Market Outlook)。

 4年間で100GWの追加が必要だが、これは原発約100基分に相当する。華氏は、「原発は時の政権に左右されるし、世論的に賛否が分かれやすいアジェンダ。しかも納期は8~10年かかる。違う方法があってもいいのではないか」と言う。

 米国では、巨大データセンターが建設されると系統電源に負荷がかかり、本来住民が使うはずの電力が足りなくなると反対運動が起こることもある。また、BYONG(Bring Your Own New Generation)という枠組みで、データセンターを建てる場合は自前の発電所を作るというルールがある州もある。

 従来の系統電源依存型から、別のアーキテクチャへの変更が必要になっている。考えられるのは、データセンターと電力インフラを一体設計する「自律分散型」だ。特に大規模土地取得も原発建設も難しい日本では、コンテナ型を含めた比較的小さなデータセンターを分散し、再エネを含めた電源と組み合わせるのが現実的だろう。

 また、自律分散のAIデータセンターが適している、もうひとつのエリアがフィジカルAIだ。レイテンシーを考えると、脳であるAIデータセンターと、手足に当たるロボットの距離は近い方がよく、大規模なデータセンターに一極集中させるよりも合理的と言える。

消費電力増加に対応する新しいパワーアーキテクチャ「SST」

 AIサーバーの増加に加え、GPUの世代が進むことで、1ラック当たりの消費電力も急増している。現行GPUの場合、消費電力は100~200kW/ラックだが、NVIDIAは、将来的に1MW/ラックになるとしている。1ラックあたり1MWは、とんでもなく熱い。

 100~200kW/ラックの場合、系統電源から受電した交流電源を、サーバーラック内でAC/DC変換してサーバーに48Vで直流給電する。高い電圧を低くするには、電力のロスが発生する。多段階で減圧するため、この時の電力使用効率は87%。これは、数字としてさほど悪くはない。

 これから出てくる次世代GPUになると、600~800kW/ラックが必要になり、ラック内に大容量の電気を引き込む必要がある。HVDC(高圧直流送電:High Voltage Direct Current)という方式で、電力ロスが少なく、電力効率は89%に改善する。ただし、従来のラックではなく、高電圧のバスバーを備えたラックが必要になる。

 大規模なAIデータセンターでは、このHVDCへの対応が求められているが、日本では高電圧の配線には専門資格が必要なため、通常のデータセンター構築で一般的になるためには法改正などが必要だ。だが利点も多く、あらかじめHVDC対応にしておくと、次の1MW/ラックに対応しやすい。

 将来的に1MW/ラックのGPUになると、サーバーラック内でAC/DC変換するのではなく、系統からの受電を直接±400/800VDCに変圧するSST(個体変圧器:Solid-State Transformer)が重要になる。SSTとは、パワー半導体と高周波トランスを組み合わせてAC/DC及び電圧を変換する、次世代の電力変換装置だ。鉄心と銅線を用いた従来の巨大な変圧器と異なり、小型軽量化や能動的な電力制御、双方向の電力変換が可能となる。

 価格高騰している銅の使用量が大きく減り、電力効率も92%と現行の方式より5%改善する。5%というのは小さな数字に見えるが、使用電力量が大きいため、実際にはかなり大きな省電力効果がある。

 一方、冷却技術に関しては、液冷が前提になる。現在はDirect-to-Chip方式の液冷が普及しているが、1MW/ラックとなると、それでは追いつかない可能性もある。2027年以降はサーバー全体を冷却液に浸ける液浸の採用が進みそうだと華氏は見ている。

半導体は多様な素材が共存する

 セミナー後半では、ローム株式会社山口雄平氏(マーケティング本部AIサーバー市場担当)が、AI市場向けパワー半導体の動向を解説した。

 パワー半導体は、デルタ電子 華氏の話で出てきたSSTとは別に、サーバー内のGPUに電力供給するためのコンポーネントにも使われている。「現在はSi(シリコン)やSiC(シリコンカーバイド)が採用されているが、次世代モデルでは、小型・高効率化のためにSiCやGaN(窒化ガリウム)の適用が期待されている」と山口氏は言う。

 また、GPUの性能が上がれば必要な電力が増える。このため、電力供給のためのコンポーネントの搭載数も増える。現在は1つのGPU当たりDrMOSと呼ばれるコンポーネントが20程度搭載されているが、それが次世代GPUでは50程度と、倍以上になる。

 AIサーバー向けのパワー半導体の需要は伸びると予測されているが、それをさらに裏付けるのが、サーバーの形の変化だ。

次世代AIサーバーの形

 次世代AIサーバーではボードが縦挿しになり、ボードの数は4倍、消費電力は70倍以上になるという。パワー半導体やスイッチングを行うアナログデバイス(LSI/IC)の増え方はすさまじいものがある。

 AIサーバーでは、電力の供給元(高電圧)はSiCやSJMOSが、GPUに近接した部分(低電圧)はDrMOSが使われている。半導体の種類によって適材適所があり、AIサーバーラックでは複数の半導体が共存する状態になるため、それらを必要に応じて提供するのが、半導体メーカーの役割だ。

 AIは、高性能のGPUだけあればいいわけではなく、電源システムや冷却システムがなければ動かない。ロームでは、その電源・冷却のベンダーであるデルタ電子と協業し、AI市場に貢献していく考えだ。