事例紹介

24時間業務を支える仮想化時代のバックアップ――、フラワーオークションジャパンが「Veeam Backup & Replication」を導入

 東京・大田市場内に本社を置く株式会社フラワーオークションジャパン(以下、FAJ)は、従来利用していたバックアップシステムをリニューアルし、Veeam Software(日本法人:ヴィーム・ソフトウェア株式会社 以下、Veeam)の「Veeam Backup & Replication」を導入した。同社のIT部門では、「業務を邪魔しない新しいバックアップの仕組みが必要だった」と話す。

 同社が必要とした業務を邪魔しないバックアップシステムとはどういうものか。そして、バックアップソリューションの中からVeeam Backup & Replicationを選択したのは、どういった点を評価したからなのだろうか。

 導入を担当した、FAJ システム部 部長の中島宏氏に話を聞いた。

FAJ システム部 部長の中島宏氏

自動バックアップが不可欠と考え導入

 FAJは、東京都中央卸売市場大田市場に本社を置く「花き」の卸売り事業者だ。市場で行われている競りに参加し、落札した花きを販売している。

 花きには「切花」や「鉢物」などがある。切花はその名前からわかるように、根のついていない花を指す。鉢物とは、鉢植えになった盆栽等の鉢植え植物だ。通常、切花と鉢物は異なる流通業者が取り扱うことも多いが、FAJは両方を取り扱っている卸売り事業者だ。大田市場は、花きの市場としては日本最大であり、そこに本社を置くFAJは、国内最大規模の花き卸売り事業者だという。

 同社のIT部門であるシステム部の部長である中島宏氏は、自社の業務の特徴についてこう紹介する。

 「大田市場の場合、鉢物は火曜、木曜、土曜に、切花は月曜、水曜、金曜に取り扱いされています。当社は切花と鉢物の両方を取り扱っているため、月曜日から土曜日まで休みなく業務が行われます。しかも、1日に行われる作業は、早朝に競りが行われ、その後競り落とした商品が入荷し、それを夜中まで地方発送を行うとほぼ24時間態勢で作業を行っていることになります」

 業務が24時間態勢で行われているということは、情報システムに関しても、休みなく活用されていることになる。

 「それだけに、以前活用していたバックアップシステムには問題がありました。バックアップのための時間がかかりすぎたのです。最も時間がかかる場合には、バックアップだけで24時間たっても終わらないことがありました」。

 作業中にバックアップ作業が行われれば、システム負荷が高くなってしまう。そこで、短時間にバックアップを行う新システムが必要となった。

 「実は以前、ランサムウェア被害にあったことがありました。その経験から、バックアップの重要さは理解しています。新しいバックアップシステムを探す中で出会ったのが、Veeamのバックアップツール『Veeam Backup & Replication』でした」と中島氏は振り返る。

 Veeam Backup & Replicationは一度フルバックアップを取った後は、増分だけをバックアップする方式となっている。以前利用していたバックアップシステムに比べ、バックアップにかかる時間を大幅に短縮できるようになった。

 「バックアップにかかる時間が短縮されたことで、本来の業務への影響もなくなりました」と導入したことには大きなメリットがあったと説明する。

 作業負荷としても、以前はストレージにスナップショットを取る作業を手動で行う必要があった。現在では、社内での作業が少ない夜中の都合の良い時間を設定し、自動的にバックアップを終わらせる仕組みとなっている。IT部門にとっては、作業負荷が大きく軽減したことになる。

 バックアップを巡るトラブルが少なくなり、作業時間は軽減。手動で行っていた作業が自動化されるなど、Veeam Backup & Replication導入は、FAJにとって大きなメリットをもらしているといえるだろう。

導入のきっかけとなったのはVMwareのユーザー会の声

 では、どんなきっかけでVeeam Backup & Replicationを知ることとなったのか。

 「最初に知るきっかけになったのは、VMwareのユーザー会でした。当社はVMwareの仮想環境を利用しているのですが、参加していたユーザー会で、ほかの参加者からVeeam Backup & Replicationの話を聞いたのです」

 それまで中島氏は、Veeamの名前こそ知っていたが、バックアップソフトとしてどんな機能があるのか等については理解していなかったという。

 「ユーザー会ですから、販売目的でソフトをアピールされたわけではありません。技術志向が強いIT部門の担当者同士の話から、『バックアップだったらVeeamの製品がいいよ』という声を聞いたのです。それも大企業だけでなく、当社のように、それほど規模の大きな会社ではないところでも使いやすいソフトだ、という評価を聞きました」。

 実際にソフトを利用しているユーザーが高く評価をしていることを聞いて、Veeamに連絡をとった。話を聞くと、差分だけをバックアップする方式など、機能的にも求めていたものに近いことがわかった。

 「バックアップソフトのベンダーとしては、Veeamは後発ということになると思います。新しい会社ではありますが、仮想化基盤が大きく活用されるようになっているシステムで利用するにはベストといえるソリューションではないか、と考えました。バックアップにかかるスピード、確実にバックアップを行うという点では、老舗には負けない十分な機能があることもわかりました。また、クラウドへの対応も行われていることから、当社が求めるシステム的な要件を十分に満たしている企業だったのです」。

 さらにVeeam側と話を進めていくと、FAJにとってVeeamの製品は導入しやすい価格体系となっていることが明らかになった。

 「お話ししたように、当社はVMwareの仮想サーバーを利用しています。Veeamは物理的なCPU数に応じて価格が決まります。仮想サーバーの増減、容量の増減では価格は変わりません。これが、当社の利用状況に合致していました」。

 もちろん、FAJでは、ほかのバックアップソリューションとの比較検討も行ったが、性能的には評価できるものであっても、仮想サーバーを利用しているFAJにとっては、割高になってしまう価格体系だったという。

 「Veeamは内容と価格が合致した理想的な組み合わせと考え、導入を決定しました」と中島氏は振り返る。

 導入にあたっては、販売会社のサポートによってハンズオンセミナーを受けたことで、スムーズに作業が完了したという。導入後は、先に紹介したように差分だけをバックアップするようになったことで、業務への負担がなくなった。24時間業務を行っている同社にとって、データをバックアップする強力なシステムが構築された。

ITを使った花き市場に拡大に挑戦

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、テレワークを導入する企業など働き方を変えた企業は多い。しかし、市場で花きを競り落とし、流通事業者に販売するFAJの業務は、「テレワークで作業をするわけにはいかない業種です」と中島氏は話す。

 実は営業職の一部ではVDI環境を活用して、営業先でテレワークを行っている。これはCOVID-19騒動が起こる以前から実施している。だが、本社のスタッフはこの環境下でも本社で業務を続けてきた。

 「しかし、花きの販売は大きな影響を受けました。ちょうどCOVID-19で自粛要請があった時期は卒業式、入学式の時期と重なり、式の開催が中止となりました。花きが利用されることが多い式が中止になったことで、花きの市場は大きな影響を受けました」

 1年で最も花を購入する人が多い母の日についても、自粛期間だったこともあって例年よりも盛り上がりに欠けるなど厳しい市場環境となっている。

 こうした市場環境の変化は、情報システム部門の役割を重くしていると中島氏は話す。

 「取引にかかわる請求書などの伝票を紙から電子化できないか、という声は以前からありました。COVID-19の影響で、対面からデジタルでの取引に移行したいという動きが加速するのではないかと見ています。花を扱う小売店も、これまでのようにショッピングモール内のリアル店舗からECサイトに移行するとも言われていますが、小売店を支援していくことも重要です。5月11日からは、近所の園芸店、生花店を探すことができるサイト『うちハナ』をオープンしました。こうしたサービスのベースとなるのが、われわれシステム部門が作る情報基盤です。情報システムの役割はますます重要になると考えています」。

 中島氏が所属するシステム部のスタッフは7人。「同業他社と比べると人数は多い方だと思います。これはシステムの内製化など、やるべきことがたくさんあるからこそのことだと思います」

 中島氏が話しているやるべきこととは、ディザスタリカバリ(災害対策)、社内システムのさらなる進化など多岐にわたるという。

 「次期システムの検討を始めたところです。面白いと思っているのは、データベースを含めた分散型システムを構築し、極端にいえばバックアップも必要ないようなシステムです。以前はコストがかかりすぎて、分散化システムを実現するのは現実的ではないと思っていましたが、クラウドが利用できるようになったことで、不可能ではないのではないか?と考えるようになりました」。

 新しいことに取り組むシステム部を支えるものとして、Veeam Backup & Replicationは不可欠なものとなりつつある。同社では、システムとスタッフの負荷をいずれも減らすことのできたソリューションとして、この製品を評価しているとのことだ。