ウイルス対策機能付きのNAS、バッファローの「TeraStation TS-XHL」の価値は?
ネットワークに接続して、データを保存できるNAS(Network Attached Storage)は、企業において重要性を増している。そうした中で、NASにも高いセキュリティ機能が求められるようになってきた。
今回は、バッファローから、セキュリティ機能付きのNAS「TeraStation TS-XHL/R6VCシリーズ(以下、TS-XHL)」をお借りできたので、その特徴をレポートする。
■増えるデータ量と求められるセキュリティ
現在、個々のPCで生み出されるデータ量が膨大な容量になってきている。例えば、レポートをまとめるのに、以前はテキスト中心だったが、最近ではグラフや写真、ビデオなどを取り込み、わかりやすくビジュアル化されてきている。これにより、1つのレポートのデータ容量も飛躍的に大きくなっているし、当然ながら、全体のデータ量も膨大なものになり、それをどう管理するかが課題になっている。
また、同時に、個人が生み出すさまざまなデータを多くのユーザーと共有して、利用していくことが、重要になってきている。PCが部や課に数台置かれていて、何人かで共有している状況から、個人に1台という環境になり、大きな容量のデータを簡単にネットワークで共有できる仕組みが必要になってきた。こうしたことを受け、NASの重要性が企業で認識されてきたのだろう。
最近では、低価格の家庭向けのNASなども発売されている。コストだけ考えれば、バッファローの企業向けNASであるTS-XHLは、多少高価に感じるかもしれない。しかし、TS-XHLは、企業での利用を考えて、高い信頼性、セキュリティ性などがサポートされている。企業においては、コストも重要だが、高い信頼性といったことも非常に大きなポイントになる。
本体には4台のHDDが内蔵できるようになっている。トレイを使って簡単に交換できる | TS-XHLは、1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-TのLANポートが2つ、USBポートが2つ、UPS用のシリアルポート1つが用意されている |
■RAIDとレプリケーションをサポート、高い信頼性を実現
それでは、ここからは具体的にTS-XHLが持つ機能を見ていこう。
TS-XHLは、4台のHDDが内蔵できるようになっているが、RAIDに対応しており、データを複数のHDDに分割して保存することで、高速にアクセスできるようにしたり、信頼性をアップしたりすることが可能だ。
RAIDは、0/1/10/5/6の5つのモードをサポートしている。
RAID 0(ストライピング)では、ディスクアクセスを高速にできるが、HDDが1台でも故障を起こすと、NAS全体でデータがクラッシュしてしまう。逆にRAID 1(ミラーリング)では、4台のHDDを2台一組にして同じデータを保存する。つまり、マスターのドライブにトラブルが起こっても、バックアップのドライブが用意されているため、信頼性がアップしている。しかし、NASとしては容量が1/2になる。
この両者を組み合わせたものがRAID 10で、RAID 1でミラーリングされたドライブのセットを2組用意して、それらの間でストライピング(RAID 0)を行っている。
RAID 5は、複数のHDDに対してデータとパリティを分散して書き込みする方式で、HDDが1台故障しても、3台のHDDが動作していれば、データを再現することができる。ただし、NASの容量が3/4になってしまう。また、3台のHDDでRAID 5を構成し、残りの1台を故障時のスペアディスクにするモードも用意されている。
このほか、TS-XHLで新しく追加された機能としてRAID 6がある。RAID 6では、HDDが2台故障しても、残りの2台からデータを再現することができる。RAID5よりも耐障害性が高いモードだ。ただし、NASの容量が1/2になってしまうというデメリットもある。
TS-XHLで追加されたRAID 6を使えば、HDDが2台故障しても、新しいHDDに交換してリビルドすれば、復旧できる | RAID 6では、1台のHDDが故障し、さらにリビルド中に1台のHDDが故障しても、完全復旧が行える | RAIDモードの比較表。RAID 0はディスクアクセスは高速だが耐障害性はない。RAID 6が最もバランスがいい。ただし、データ容量が1/2になってしまうというデメリットもある |
レプリケーション機能を使えば、TeraStationごとリアルタイムにバックアップすることができる |
TS-XHLでもう1つ便利なのは、レプリケーション機能だ。バッファローのNAS TeraStationシリーズでは、TeraStation同士をネットワークで接続して、NAS全体をバックアップするレプリケーション機能が用意されている。
レプリケーション機能を利用すれば、マスターのTeraStationに書き込んだデータは、バックアップのTeraStationに自動的にコピーされる。この機能を使えば、マスターのTeraStationのハードウェア自体にトラブルが起こっても、バックアップのTeraStationが利用できるため、データが失われることはない。またレプリケーションは、同じモデルのTeraStation同士だけでなく、古いモデルと新しいモデルでも行うことができる。
このほか、TeraStationには、複数のTeraStationの共有フォルダを指定して、1台のTeraStationにバックアップする「まとめてバックアップ」という機能も用意されている。この機能は、レプリケーション機能のように、書き込まれたら自動的にバックアップするのではなく、スケジュール(時刻)に従って各TeraStationのフォルダをバックアップする。もちろん世代管理を行っているため、毎日バックアップを行っている場合は、10日前のデータも参照することもできる。
■高い管理性とセキュリティ機能
TeraStationでは、WindowsのActive Directory(AD)に対応している。このため、TeraStation自体をADに登録すれば、ADのユーザー/グループ情報を使用して、共有フォルダのアクセス権限の設定が行える。
TeraStation自体にユーザーIDをいちいち手動で登録するのは、数人なら何とかなるが、数百人にもなると、さすがに面倒だ。こういった時にAD連携機能を使えば、ADで共有フォルダのアクセス管理が簡単に行える。
TS-XHLには、AD連携機能が用意されている。この機能を使えば、TS-XHLにユーザーを登録しなくても、ADに登録されているユーザーがそのまま利用できる | AD連携機能を設定すれば、ADのユーザーアカウントがTeraStationに取り込まれる |
TS-XHLには、データを暗号化するハードウェアが搭載されている。これにより、TS-XHLにデータを保存する時に、直接データを暗号化する。ユーザーがいちいちパソコンで暗号化しなくてもいい。これなら使いやすい |
TS-XHLは、MacのTime Machineにも対応している |
さらに、データを保存する場合、自動的に暗号化を行うことができる。共有フォルダにデータを保存する時に、自動的にTeraStation側で128ビットAESで暗号化を行い、ハードウェアで暗号化するため、パフォーマンス的にもデメリットは少ない。もし、TeraStation自体が盗まれても、暗号化されていれば、データが盗まれることもない。
TeraStationでは、クライアントPCのバックアップ機能も用意されている。Windowsパソコンに別売りのバックアップソフトをインストールすれば、WindowsパソコンのHDDをLAN経由で丸ごとTeraStationにバックアップする。
もちろんWindowsパソコンのシステムドライブの内容もバックアップしているため、専用のブートCDを使えば、自動的にTeraStationにバックアップされているイメージをWindowsパソコンに戻すこともできる。これなら、WindowsパソコンにHDDにトラブルがおき、まっさらなHDDに換えたとしても、データを元に戻すことができる。
また、Macに対しては、Mac OS Xが持つ自動バックアップ機能のTime Machineに対応している。このため、TeraStationをバックアップ先にしておけば、MacのHDDも保護することが可能だ。
■最大の特徴はウイルス対策機能
TS-XHLで最大の特徴は、ウイルス対策が可能なことだろう。TeraStationにトレンドマイクロの組み込み機器用のウイルス対策ソフトが搭載され、このソフトが、ウイルスやワーム、スパイウェアの検出/隔離/駆除を行ってくれる。
実際、今まで膨大なファイルを保存するNASにウイルスチェックソフトが入っていなかったのが不思議だった。今までは、クライアントPCから共有フォルダをマウントして、手動でウイルスチェックを行うなどしかできなかった。このため、NASに保存されているデータは、ウイルスに関しては放置されていたのに等しい状況だった。
基本的にクライアントPCであらかじめウイルスチェックがされているという前提で、多くのユーザーがNASのデータを利用していた。ウイルスに感染したファイルがNASに保存されると、クライアントPCからはなかなかウイルス感染していることには気づかない。
インターネットなどからダウンロードしたファイルなどは、気をつけてチェックするが、社内にあるNASのデータはそれほど注意されていない。このため、知らないうちに、NASからウイルスがまん延する可能性もあった。
今回、TS-XHLにウイルス対策ソフトが内蔵されたため、NAS自体でウイルスチェックを行い、NASに保存されているファイルの安全性を高めることができる。もちろん、TS-XHLに内蔵されたウイルスチェックは、インターネットにアクセスできれば、日々ウイルスのパターンファイルのアップデートを行い最新のウイルスに対応することができる。
また、ソフトのエンジン自体がバージョンアップした時には、TS-XHLのファームウェアをアップデートすることで、対応できるようになっている。
多くのNASでは、ウイルス対策機能がないため、NAS経由でPCにウイルスをばらまく可能性がある | TS-XHLに保存されたデータは、自動的にウイルスチェックが行われるため、NASのデータを安心して利用できる |
■UPSで停電対策、保守サポートも充実
TS-XHLとUPSを使えば、停電時にも、UPSのバッテリーを使用して、安全にTS-XHLをシャットダウンできる。これにより、停電時にも、データが破損することはない |
TeraStationには、UPS用のポート(シリアルポート)が用意されている。オムロンやAPCなどのUPSを接続すれば、停電時にはUPSのバッテリを使って、安全にTeraStationをシャットダウンするため、突然の停電時でも、データはキチンと保護される。もちろん、シリアル接続タイプのUPSだけでなく、USB接続タイプのUPSにも対応している。
TS-XHLは、家庭用のNASと比べると、信頼性の高い電源ユニットを採用しているし、HDDが故障した時には簡単に交換できるよう、HDDユニットを利用するように設計されている。またファンについても、ボールベアリングタイプの高信頼ファンを採用している。
また、ネットワークの耐障害性をアップするために、LANポートを2ポート用意している。ポートトランキング機能を使えば、ネットワークを二重化して、片方のケーブルにトラブルが起きても、もう一本のLANでTS-XHLにアクセスができる。
これだけ高い信頼性を持つバッファローのTeraStationだが、万が一のトラブル時に備えて、オンサイト保守サービスとデリバリー保守サービスが完備している。
オンサイト保守サービスでは、何かTeraStationにトラブルが起こったら、出張保守で修理に来てくれる。また、デリバリー保守では、TeraStationにトラブルが起こった時に、バッファローに連絡すれば、すぐに代替機や代替パーツを貸し出してくれる。バッファローが代替機を送ってくれるため、故障機をバッファローに送り返して、修理されるまでの期間、システムが利用できないということはない。ユーザーは、代替機をそのまま利用してもOKだ。
こういったきめ細やかな保守サービスが用意されているのも、国内メーカーのバッファローならではだろう。こうした保守サービスが提供されているのは、企業にとっては安心できる。
■便利機能も各種搭載
このほかTS-XHLは、外部からNASのデータに簡単でかつ高いセキュリティ性を持ってアクセスできるWebアクセス機能、TeraStation TS-XHLのUSBポートにプリンタを接続して利用するUSBプリンタサーバー機能、NAS内部のデータを簡単に検索できるTeraSearch機能などが利用可能。
MySQLの内蔵や、FTP機能、NFS機能、DFS機能などもサポートされているため、WindowsやMacからのファイルサーバー用途のみならず、サーバーなどとも連携した、より深い使い方にも対応している。
性能面でも、以前のTeraStationよりも性能がアップし、複数台のPCからのアクセスでもパフォーマンスは低下しにくくなった。こうした点も、うれしい改善点だろう。
企業においてデータは爆発的に増えているため、NASなどの多くのユーザーが使用できる共有フォルダは非常に便利だ。しかし、企業が必要とするセキュリティ性の高さ、信頼性の高さなどを考えれば、コンシューマ向けと同じNASは利用できない。
バッファローのTS-XHLは、高い信頼性とセキュリティ性を兼ね備え、さらに今までのNASではなかったウイルス対策機能も内蔵している。これは、企業のニーズにマッチした製品といえる。これだけの機能を持ちながら、4TBモデルで約15万円(ウイルスチェック機能5年間ライセンス付き)とリーズナブルな価格だ。