「ないのが不思議だった」、バッファローのウイルスチェック機能付きNASが生まれたワケ


TeraStation TS-XHL/R6VCシリーズ

 NASの本体にウイルスチェック機能を取り込んだバッファローの「TeraStation TS-XHL/R6VCシリーズ(以下、TS-XHL)」は、今までのNASから思えば新しい取り組みといえる。ただ、企業で利用するNASということを考えれば、こういった機能がなぜなかったのか?と思うほどだ。

 そこで、バッファローで企業向けのNASのマーケティングを担当されている事業本部 市場開発事業 NASマーケティンググループリーダーの松﨑真也氏、同じくNAS開発グループリーダーの後藤悟氏、さらにTS-XHLにウイルスチェック機能を提供しているトレンドマイクロ グローバルマーケティング統括本部 事業開発部 プロダクト&サービスマネジメント課 プロダクトマネージャー 伊藤康雄氏に誕生の経緯を伺った。

 

なぜなかったのか不思議なくらい、お客さまからは大好評

――NASにウイルスチェック機能を搭載するというのは、セキュリティ面から企業では必須の機能だと思うのですが、TS-XHLでやっと搭載されたのはどういった経緯だったのですか?

バッファロー 松﨑真也氏

バッファロー松﨑氏
 以前から、企業向けのNASであるTeraStationでは、セキュリティを考えればウイルスチェック機能は、ぜひとも必要だと思っていたのです。ただ、LinuxベースのNASに搭載できるようなウイルス対策ソフトがなかったので、なかなか実現できませんでした。

 お客さまからも、容量が大きくなったNASにはウイルス対策ソフトが必要との声もいただいていたのですが、さすがに自社でウイルス対策ソフトを開発するまではいかなくて。このようなご要望には、Windows Storage Server 2003 R2を搭載したTeraStation WS-QLシリーズをおすすめしていました。これなら、OSのベースがWindows Serverになっているので、既存のウイルス対策ソフトが利用できました。

 しかし、コスト面などから「LinuxベースのTeraStationでウイルスチェック機能をぜひ実現してほしい」という、お客さまからのニーズが高まってきたこと、また、トレンドマイクロが組み込み機器向けのウイルス対策ソフトをちょうど開発したことなどがあって、製品化ができました。うまく環境が整ったという感じです。


NASにウイルスチェック機能があれば、NASを経由した大規模感染も予防できるウイルススキャンは、リアルタイムスキャンだけでなく、指定した時間に起動することもできる。もちろん、ウイルスを発見したら、本体の液晶画面に表示したり、メールしたりすることもできる

――販売されて、お客さまの評判はどうですか?

バッファロー松﨑氏
 発売されて数カ月ですが、評判は上々です。NASでのウイルスチェック機能ということには、多くのお客さまが目をつぶって使われていたので、一度試してみると、「なぜ今までNASにはウイルスチェック機能がなかったのか不思議だ」と感じていただけているようですね。もしかすると、今後企業で導入されるNASには、ウイルスチェック機能が必須機能になっていくかもしれません。

 また、今回TeraStationシリーズに機能追加したウイルスチェック機能は、新しいTeraStation(注:TS-XHL/R6シリーズ、TS-XL/R5シリーズ、TS-RXL/R5シリーズ、TS-WXL/R1シリーズなど)でしたら、プリインストールでなくても、利用することができます。基本的に、ファームウェアのアップデートを行い、ウイルスチェック機能のライセンスを購入していただければ、現在お使いのTeraStationでも利用できるのです。

 ウイルスチェック機能のライセンス料は、5年間で1万8000円(注:税別価格)なので、年間3600円ほどで、今まで実現できなかったNAS上でのウイルスチェックが利用できます。現在、TeraStationシリーズのNASをお使いになっているお客さまにも、ぜひともお使いいただきたいと思います。

TeraStationのウイルスチェック機能は、コスト的にもメリットが多い既存のTeraStationのファームをアップデートして、ライセンスパックを購入すれば、既存のTeraStationをウイルスチェック機能対応にすることができる

――ウイルスチェック機能はどのように動作するのですか?

バッファロー松﨑氏
 今回採用したトレンドマイクロのウイルスチェック機能では、リアルタイムにファイルをスキャンしています。このため、NASにファイルがコピーされた時に、リアルタイムでファイルをスキャンして、ウイルスに冒されていないかチェックします。

 もし、ファイルがウイルスに感染していれば、あらかじめ指定したフォルダにファイルを移動して、隔離します。このフォルダを管理者しかアクセスできないようにしておけば、ユーザーが感染ファイルにアクセスして、ウイルスが社内のPCにまん延することはありません。

 もちろん、ウイルスに感染したファイルが見つかった時は、TeraStationの本体前面にある液晶パネルに、ウイルス検出のアラートを表示します。さらに、アラートをメールで指定されたメールアドレスに送信するように設定しておけば、TeraStationが離れた場所にあっても、状況をキチンと把握することができます。

 ウイルススキャンに関しては、ファイルにアクセスした時(保存/更新/閲覧)に自動スキャンする方法、日付や曜日や時間を指定してフルスキャンを行う方法、手動検索などが用意されています。

 

パターンファイルやウイルススキャンエンジンのアップデートにも対応

――ウイルス対策ソフトは、日々進化するウイルスに対して対抗するために、パターンファイルなどのアップデートが日々必要になると思いますが、この部分はどうなっていますか?

トレンドマイクロ 伊藤康雄氏

トレンドマイクロ伊藤氏
 もちろん、対応しています。ただ、アップデート機能を利用するためには、ウイルスチェック機能を利用するTeraStationをインターネットアクセスができる環境に設置する必要があります。

 インターネットにアクセスできれば、自動的にパターンファイルをアップデートして、日々進化するウイルスにも対応できます。もちろん、アップデートを行う時間を指定することもできるので、業務時間外にアップデートのタイミングをずらすこともできます。

 また、ウイルスチェック機能のエンジン自体も年々進化しています。ウイルスチェック機能のエンジン自体の更新は、バッファローがTeraStationのファームウェアをアップデートするタイミングに合わせていきたいですね。

 ウイルスチェック機能のエンジンをアップデートすることで、パターンファイルだけでは、対応できないという状況にはならないと思います。今後、安心して利用していただけるのではないでしょうか。

――TeraStationのウイルスチェック機能は、使用を開始してから(アクティベーション後)、5年間までしか利用できないようになっていますが、これはどうしてですか?

バッファロー松﨑氏
 現在、バッファローでは、ウイルスチェック機能の5年間ライセンス、1年間ライセンスがバンドルしたTeraStation本体を販売しています。さらに、既存のTeraStationユーザーのために、ウイルスチェック機能の1年間、3年間、5年間のライセンスを販売しています。

 TeraStationのウイルスチェック機能がどのようなモノかを試してみるなら、1年間のライセンスを購入していただいて、使えると判断していただければ、1年間+3年間の合計4年間の延長ライセンスを購入していただければ、5年間利用できます。

 TeraStationのウイルスチェック機能のライセンスを5年間としているのは、企業でのIT機器の導入を考えれば、5年間というのが一つの目安になっていると思います。リースの期間なども5年間が多いので、これに合わせたということです。

 5年経過後も継続して利用可能ですが、環境が変わっている可能性があります。バッファローとしてのサポート範囲は現在5年と考えております。


対応するTeraStationのファームウェアをアップデートすれば、ウイルスチェック機能に対応する。後は、ライセンスを購入すればOKウイルスチェック機能の管理画面
ここで、ウイルスチェック機能のシリアル番号を入れればすぐに利用できるウイルスやスパイウェアに関するログを確認することもできる

――NASでウイルス対策ソフトを動かすと、パフォーマンス的に問題が出るのでは、という心配をされることもありますが、その点はいかがですか?

バッファロー 後藤悟氏

バッファロー後藤氏
 現在使用しているTeraStationのハードウェア プラットフォームは、以前と比べ、非常にパワフルなCPUと大容量のメモリを搭載しているので、ウイルスチェック機能を導入してもNASとしてのパフォーマンスは低下していません。

 また、ウイルスチェック機能を採用する時に、TeraStationシリーズのファームウェアをチューニングして、以前の製品よりも性能を向上させています。


単なるファイル倉庫としてだけでなく、TeraStationのいろいろな機能を利用してほしい

――TeraStationシリーズには、さまざまな機能が入っていますが、NASとしてはいろいろな機能が入りすぎているというイメージがあるのですが。

バッファロー松﨑氏
 確かに、単なるファイルサーバーとしてだけでなく、Webサーバーやデータベースサーバーまで入っています。

 日本のお客さまは、今までは、NASにWebサーバーやデータベースサーバーはいらないとお考えになっていましたが、iPhoneなどのスマートフォンやiPadなどのタブレット端末が発売されるようになって、外部からサービスにアクセスするといった用途が増えてきています。

 こうした状況も考えて、現在、バッファローではWebAccess iというiPhone/iPad向けのアプリケーションを提供しています。このアプリケーションを使えば、NASに保存されているプレゼンテーションや文書などのデータをiPhone/iPadからアクセスすることができます。今後は、NASもPCだけでなく、さまざまなデバイスからアクセスされるようになるでしょう。

 また、TeraStationシリーズは、MacのTime Machine機能に対応しているため、Macのデータをバックアップすることができます。これを使えば、Macにトラブルが起きた時でも、TeraStationにバックアップしたデータからリストアすることが可能です。Time Machine機能のメリットは、バックアップが自動的に行われることと、リストアが簡単に行えることです。

 もう1つ、使っていただきたい機能としては、TeraSearchというTeraStationで動く検索機能があります。テキストの検索機能ですが、ブラウザから簡単に、TeraStationに保存されているファイルを探し出すことができます。これなら、膨大な数のファイルから、必要な文書を探し出すことも簡単に行えるのです。

 できれば、こういった機能を使っていただければ、TeraStation自体を便利に使うことができると思います。

――ありがとうございました。


TeraSearchの検索画面。ブラウザで、TeraStationのIPアドレス+ポート3000番(例:http://192.168.0.1:3000)にアクセスし、ログイン後に、検索画面が表示される検索結果画面。できれば、Windows OSの検索システムと連携してくれると使いやすいと思う
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